12月12日の手紙 音にたゆたう
拝啓
音楽をよく聴く方というわけでもありませんが、
年末進行で忙しい頭には音楽が必要です。
いつも聴く、AudibleやPodcastでは少しばかり、騒がしすぎ、難しすぎます。
ごちゃごちゃになった頭、疲れ切った思考に更なる思考を呼び起こすものは必要がありません。
体がスイングする、自然とステップを踏みたくなるような音楽、もしくは気づいたら鼻歌を歌っているような音楽がちょうど良い時があります。
最近、よく聴くのは次の2枚のアルバムと1枚のシングルです。
・MUJI BGM/BGM25 Ireland
無印良品のアルバムです。国ごとに分けられていて、個人的に最も無印良品っぽさを感じるアイルランド音楽のコンピレーションアルバムを選びました。
無印良品の店舗に行ったことがある人なら、必ず「聞いたことある!」「無印良品っぽいような…」となるはずの曲ばかりが入っています。
寒い時期に億劫な家事をする際のお供です。
フィドルのあたたかな音色がリズミカルに奏でられるのに乗せられて、ひとまず、立ち上がってみようという気持ちになります。しかも聞いているうちに、頭の中には無印良品の店舗のシンプルで整然とした様子が浮かび、「このままではいけない!丁寧な生活!」という気持ちになってきます。すると、「皿の一枚も洗ってみようか」という考えが頭に浮かぶのです。
アイルランド音楽の良いところは、そのテンポです。
じっとしていられないような、踊り出したくなるようなテンポが
疲れているとかえって心地よく、何かをやってみようという気持ちにさせてくれます。
特に、2曲めの、polkasは、聴いているとわくわくしてきます。
この無印良品のアルバム、様々な国をテーマにして作られているので、気になる国のコンピレーションアルバムを試してみるのも良さそうです。
次は、BGM24フィンランドかBGM7スコットランドを選ぶか、まだBGM4というアイルランドのアルバムがあるのでそちらにするかなどと考えています。
それに、何と、クリスマスソングのコンピレーションアルバムもあります!!これもいいですね。
べたべたとしたぬるい温度にひどい湿気の今、聞くと冷たく清浄な、クリスマスらしい気分になれそうです。
・カプースチン:8つの演奏会用エチュード
こちらは、ウクライナ出身のロシアの作曲家カプースチンのアルバムです。
X(Twitter)で有名なピアニストが
カプースチンの曲を弾いている動画を見かけて、気になって購入しました。
カプースチンは、写真を見ると、眼鏡をかけて、髭を生やした気難しそうな人物に見えるのですが、その作品はとてもキラキラしていて美しく、かつ現代的です。
ジャズとクラッシックを融合した音楽と評されているようなのですが、とにかくかっこいいです。
聞いている人間の頭上にスワロフスキーのように輝く、一音一降り注ぐような音楽といえば良いでしょうか。
非常にピアノが上手い作曲家だそうで、弾くには相当の技量がいるのだとか。
その中でも、入門的とされるのがこの8つの演奏会用エチュードということで、購入しました。
これが大当たり!
ピアノのことがよくわからない人間でもとにかく聞いていて、楽しいアルバムです。
カプースチンは寡黙な人だったそうですが、その心はいつも自由で楽しく、美しいことが大好きだったのだろうと思わせる曲ばかりです。
どの曲も素敵で退屈することがありません。
こちらのアルバムも全曲、テンポはやや早めです。テンポが早い曲の方が好きなのかもしれません。
こちらはもっぱら、note記事を書く時の作業BGMにしています。
筆、いや、スマホを操作する指が、鍵盤を走る指のように、どんどん軽やかに素早くなっていくような錯覚を覚えます。
聴きながら、スマホを操作すれば操作するほど
自分のまわりに、輝く切片が舞うような気持ちになります。
それは雪ではなくて、光をまとった、色とりどりの宝石のかけら、もしくは金平糖のかけらです。淡い黄色の光の中、美しい色が舞うのを見ています。もしかすると、生まれたてのころ、赤ん坊が、世界を見るとこんなふうに全てがキラキラしているのかもしれないと思うのです。
全ては断片で、輝くばかりというような、美しい世界。
もしかしたら、今だって、この世界はそんなふうに美しいのかもしれません。
それをもう一度この手に掴むために、記事を書いているのかもしれない、とも思います。
そしてもう一つ。
カプースチンはすでに亡くなっているのですが、もし生きておられたら、今のウクライナ情勢をどう思っただろうと考えることがあります。
カプースチンはどんな曲を書いたでしょうか。
カプースチンなら、ただ悲しく暗い曲ではなく、壮絶に美しい曲を書いたのではないかと思ってしまいます。
・崎山蒼志 燈
「呪術廻戦 懐玉・玉折」のエンディングテーマ曲。
アニメのエンディングテーマとして初めて耳にしたのですが、このかたの声の柔らかさ、息の柔らかさに圧倒されました。
衣擦れ、それも絹の着物がしなうような声だと思います。
ただ柔らかいわけではなく、果てしなく強くも感じます。決して折れずしなる枝のように、いちどたわむことができる、声。
その声がつぶやくように祈るように歌う、歌詞の言葉選びの丁寧さにも、はっとさせられます。
一曲まるまるサビと言ってもいいような、楽曲です。
そして、曲の構成もとても気に入っています。
ギターから、ストリングスの音が増え、繰り返される音の波に揺蕩いながら、
ポロンポロンとこぼれるピアノの音を辿り、
時折、歪んだギターの音がかき鳴らされる、複雑でドラマチックな構成、そして突然くる、しんとした曲の終わり。
昔から仕事をやりすぎると、
頭が爆発したような、
世界と丸ごと繋がってしまうようなモードになる時があるのですが、
そういう時、この曲を聴きながら、
口ずさみ、体が動くのに任せて、ゆれたり、手を動かしたり、止まったりすると
身体が閉じてちょうどいい感じになります。
自分の体に戻ってくることができるのです。
もっとわかりやすく説明すると
仕事の過覚醒モードを日常モード、
1人の人間モードに戻すことができる曲ということですね。
仕事における過覚醒モードについてもいつかうまく書きたいものです。
あのモードをまだ言葉で説明できません。
今日のところはここまでにして、音楽を聞こうと思います。
では、また。
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