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11月7日の手紙 キュレーターの殺人 ネタバレ有り

ワシントン・ポーシリーズの第三弾「キュレーター」をAudibleで聴き終えた感想です。

ワシントン・ポーシリーズは、英国の警察ミステリです。
ロンドンではなく、英国の地方都市を舞台に、元カンブリア州の警察官にして、国家犯罪対策庁(NCA)の重大犯罪分析課(SCAS)のワシントン・ポーが、情報処理の天才だがコミュニケーションには少し難ありのティリー、元部下で現在は上司となるフリン警部らとともに殺人事件を解き明かしていきます。
第1作「ストーンサークルの殺人」ですっかり引き込まれ、

あっという間に第2作「ブラックサマーの殺人」を読了(聴了?)、

とうとう第3作「キュレーターの殺人」まで来てしまいました。

第4作はすでに出版されているのですが、まだAudible化はされていないようで、気になるので、紙の本を購入して積んであります。

ワシントン・ポーシリーズはこの表紙の絵もセンスがとてもあって好きです。デザイン性が高く美しいです。
「キュレーターの殺人」の表紙は、茶色の背景に、左手が画面いっぱい大きく置かれています。よく見ると、指輪をはめた薬指のみが黒ずんでいて、手の甲から少し離れているのがわかります。指が物語のキーになるのがわかります。
英国の表紙をそのまま使っているのでしょうか。

また、Audibleでの読み手の方は今回も藤井剛さんです。聞きやすく演技もお上手です。

今回はいつも以上にネタバレをしているので、ミステリのネタバレが嫌な方はここでブラウザバックを推奨します。

ここからはネタバレします!
今回は愛ゆえの辛口です。

ポーとティリーの近況

ポーとティリーの最初の登場場面では、2人が、なんとベビーシャワーに参加します!ポートベビーシャワーという取り合わせは意外すぎて、かえって、二次創作されていそうです。
ポー、ずいぶん、丸くなりましたね…。
そして、ティリーはなんと昇進、というか部下をまとめています。情報処理チームを率いることになったということでしょうか。健気なティリーは大好きなフリンを真似しつつ、精一杯取り組んでいる様子です。成長したねぇ、ティリーとすっかり親戚のおばさん気分です。ちなみに、チームのメンバーは、親しみを込めて「もぐらたち」と呼ばれてるとのことですが、ポーはそこにはキレないし、なんなら彼自身もそのチームをそう呼んだりします。それはからかいにあたらないのか?などと野暮なことを考えてしまいました。
2人が「ストーンサークルの殺人」で出会ってから、お互い影響を与え合って変化してきたことがよくわかります。

フリン警部の体調


詳細は伏せますが、フリン警部の体調があまりに心配です。
我が国ではあのような状態の人に、ああいう仕事のさせ方、シフトの組み方はしないと思います。
しかし、本人が希望しているから仕方ないのでしょうか。
ファンとしては、身体を大事にしてほしいと思いながら読み進めていました。
後半は「ほら!言わんこっちゃない!」が違う形で現実となり、かなり動揺しました。

全ての〇〇〇、関係者が怪しく見える


ワシントン・ポーシリーズの特徴として比較的近しいひとが事件と関係している場合が多いということを学習してしまったので、出てくる人、出てくる人、怪しいなぁと思ってしまいました。
特に、スポーツカイトのお兄さんとか、新たに出てくる警察官とか割といい人なので、かえって心配になりました。
しかもこの推理はまんざら外れてもいないという…。

キュレーターのツッコミどころ多すぎ問題


今回はキュレーターという、オンラインから精神的に不安定な人や若者を操る黒幕がいることがわかり、それが誰かというのが大きな筋ではあるのですが、キュレーターの造形については、いくらファンだとしても突っ込みたいところが多すぎました。
・キュレーター、犯罪依頼に素直に答えすぎでは?
・お金もらえるからって、そんなに手間と創意を凝らすものか?
・キュレーターの元の仕事を考えると痛みに弱すぎる。
・キュレーターは後半の場面で、もっと反撃が可能だったのではないか?足は使えたのではないか?
依頼者の気持ちの方がすんなり想像できるのです。あの憎しみやこだわりがあり得ないとは思いません。あれくらいの憎しみが湧くことは十分ありうると思います。あの関係性、あの出来事を考えると。
だからこそ、キュレーターの行動論理が軽くて甘く感じられてしまいます。
最後の駆け引きもキュレーターがつまらなさすぎる人間でやや興醒めしました。君はどこまでも、商売人なんですね。

本当の連続殺人犯(シリアルキラー)はワシントン・ポー世界にはいない


これまでのところ、本当の連続殺人犯(シリアルキラー)はワシントン・ポー世界にはいないということが判明しました。まあ、キュレーターの思考はシリアルキラー的な部分もあるのですが、先にも書いたように、キュレーターの動機は商売人的なものなのです。
欲望に突き動かされてという犯行ではありません。
ワシントン・ポー世界ではどの殺人もわりとはっきり動機があるようです。享楽的な殺人犯は 今のところいないのです。
これはワシントン・ポーシリーズとして、書きにくいからかも…と思ってしまいます。わりと熱血で直情型のワシントン・ポーとし連続殺人犯(シリアルキラー)の相性は良くなさそうです。

ポーの推理のきっかけとなった描写がない


今回、1番納得がいかなかった場面はここです。ポーがあるところから、違和感を持ち、キュレーターの正体に気づくわけですが、その描写が、小説内になかったように思います。
関連するあたりを何度も聞き直したのですが、ポーが後でハッとすることになる、具体的描写が見当たらないのです。
あったのかもしれないですが、見つけられませんでした。
もし、書かれていないことに、主人公が気づいたのだとすると、かなり冷めてしまいます。
「ポーと同じ視点を共有していたつもりだったけれども、何もわかっていなかったという体験をしたいわけで、書いてなかったことに気づかれても意味がわからないよ、クレイヴン!」と作者に語りかけてしまうくらいがっかりしました。あと、第1作では、「小説やドラマでは肩からぶつかって扉を開けるけどそんなことできるわけない」って書いていたのに、最後の場面で肩からぶつかって扉を開けており、その点にも気になりました…。

名前で遊んでいないか、クレイヴン


メロディというファーストネームは、英国人からすると、非常にアメリカ的な名前なのでしょうか。
その他のキャラクターの名前についても、有名人の名前をもじったようなものが結構ある気がします。
謝辞で、友人の名前を使ったという文章もあったような…。
今回も、謝辞は面白かったので、ぜひ最後まで読むことをお勧めします。

全体的な感想

今回、設定は非常に面白いのですが、気になる部分がありすぎました。
島の設定とか風景とか、島までゆく場面なんかはすごく面白いですし、ティリーとの掛け合いも楽しいです。
しかし、もうちょっと、もう少し、丁寧に描写して欲しかったかなぁと言う部分があるのです。
ファンのわがままかもしれません。
第4作に期待!です。

(あと最後のシーンを、どう解釈して良いのやら…とも思います。
どう繋げていくのでしょう。)

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千歳緑/code
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