こんにちは、新しい街
1年ぶりに友達に会った。
その友達に会うのも1年ぶりだけれど、こうして約束をして、待ち合わせをして「友達に会う」こと自体が1年ぶりだということに電車に揺られながら気がついた。
わたしは元々友達が多い方ではない。
その上コロナで、みんな大体子育て中で、遊びに行ったり会うこと自体が悪のような感じに思えてしまって、誘えなかったのだと思う。
それは色々とストレスも溜まるし、自分がどんな人間なのかも分からなくなるよなぁと思った。
わたしの好きな映画に、「人生は他者だ」という台詞がある。
その通りだと思う。
他人を通してしか自分を知ることのできないこの世の仕組みは、歳をとるごとに美しく残酷だと気づく。
東京タワーを見たのも久しぶりだった。
上京してからずっとあの赤く色気のある鉄塔を毎朝、毎晩見ていた。
2012と電光掲示板を光らせた日の夜も、ひんやりとした朝の風の中でも、疲れ切った私を横目に変わることなくそっと東京を見下ろしていた。
東京タワーを見ると、わたしの東京生活の全てが詰まっているようで、胸がキュッとなる。
ぽつりぽつり、一年間で起きたことを話すと、うんうんと聞いてくれていた彼女が途中少し泣いた。
「どれだけ心配しただろうね」
それはわたしが父と母について話していた時で、しかも最近起こったバカ話で、笑ってもらうつもりで話していたのに彼女がふいに泣くから、私まで釣られて泣いてしまった。
10年ですっかり変わってしまった街を歩きながら、ガンガンと大きな音を立てて工事している高層ビルを見上げた。
また10年で、この街はもっと変わっていくのだろう。
駅の改札も工事中でよく分からない場所になっていて、方向音痴の彼女を心配して少し遠くにある反対側の改札まで送る。
もうここで大丈夫と信号の向こうにある駅の改札を指差して彼女が笑った。
「わたしやまめちゃんの笑い声も、笑った顔も、大好きだよ」
そう言って、そっとハグして青くチカチカ光る信号の向こうに駆けって行った。
大きく手をぶんぶん振りながら、なんとなくもう会えないような気になって、泣きそうになる。
わたしはこの街が好きで、大好きで、どうにしてだってこの街にいたかった。
それはこの街で出会った人のことが好きで、大好きだからだと思う。
さようならフリーダムトーキョー。
そう友達に送ると、
「あなたの心は何処にいてもフリーダムでしょ」
と返事がきて、心がふわっと軽く飛んでいった。