共通言語の醸成で伝言ゲームを制す カルチャーブック制作の意図
こんにちは!BtoBマーケティングの「一歩目からグロースまで」をハンズオンで支援するunname(アンネーム)の採用広報 橋尾です。
unnameは2023年12月にカルチャーブックv1を公開しました。
企業理念、事業方針、行動指針など、企業を形成するあらゆる想いを磨いておさめた23ページ。よくある会社の文化・風土を対外的に伝えるものかと思いきや、1ページ目から入るとカルチャーブックについての説明に数ページを割いていたり、「カルチャーとは耕すもの」という詳細の導入解説まで。
そもそもunnameは2023年3月現在、正社員は5名の組織。コミュニケーションが円滑に行われやすいこの規模で、カルチャーブックを創るのは少々珍しいのでは。
どんな制作過程や意図があったのか、代表の宮脇さんと制作プロジェクトを牽引したデザイナーの弘松さんにインタビューしました。unnameらしい骨太な価値観であふれた内容です。
カルチャーとは耕すもの
ーまずは宮脇さんに、カルチャーブック制作の目的と意図から伺っていこうと思います。どうしてカルチャーブックという形式だったのでしょうか?
宮脇:まず、unnameのカルチャーブックは発信したい価値観や概念のアウトプットの1つだと思っています。全てを詰め込み、網羅的に作るというよりは、会った方がいいものを積み上げていこうという発想でスタートしています。
記載した経営理念や行動指針、支援ポリシーなどは、それぞれ独立した概念として既にunnameの中にあったので、カルチャーブックの中にも”まとめてみた”という感じです。伝える形式のひとつであって、カルチャーブックの形に強くこだわったわけではありませんでした。
ー なるほど。1ページ目から「カルチャーとは」と、言葉の定義から入っているのが特徴的だと感じます。「文化のことを指す」とは言っていないのですね。
宮脇:unnameとしては「カルチャー」という言葉を、よくある「カルチャー=文化・風土」のニュアンスで使っていません。この訳し方は一般的ではあると思うのですが、では文化とはなんだろう?となった時にうまく説明もできないのでは、と思っています。
「カルチャー」は元々、耕すという意味の単語「カルティベイト」から派生してきて深くつながっている説があるんですよね。なので、unnameではカルチャーを「耕すもの、耕しがいがあり、耕すべきもの」が一番近いのかな、と感じて言葉を扱っています。耕す対象には事業方針、価値観、ポリシー、雰囲気、色々なものが含まれます。
ーまずカルチャーの定義が違うのですね。それでニュアンスのすり合わせから入っている、と。
宮脇:そしてカルチャーブックの役割は、普段から大事と思ったこと、実態を書き留めるものとしました。
ー「伝記のようなもの」とありますね。だからでしょうか。日頃のunnameの姿がそのまま表れている印象です。地に足がついた内容ですよね。
宮脇:そうですね、夢を語るものではなく今のunnameの実態や実装可能なことが書かれています。メンバーの思考や行動、学びが土台です。
また、細かいニュアンスを理解するために、日本語表現にこだわって書いていますね。英語でかっこよく書いても結局日本語で説明しないと細かいニュアンスは伝わらないと思っています。
ー日常的であり、等身大な内容なんですね。では、あえてカルチャーブックという形式でアウトプットしたのはなぜなのでしょうか?
宮脇:一番の目的は社内の共通認識・共通言語を増やすことでした。
ビジネスを成功させるためには伝言ゲームを制する必要があると考えています。
経営者から発したメッセージが、新入社員に曲解されずに正確に浸透している会社は成功する、というものです。
会社の意思決定・方針がねじ曲がって伝わってしまったり、一部にしか届かないと、目的に沿った業務が遂行ざれずパフォーマンスが悪くなったり、最悪の場合はまったく見当違いな仕事をしてしまう。
この伝言ゲームを制するためには、会社が大事にしている価値観、考え方や判断基準を揃えることが重要だと考えています。それが揃っていないと、個人が自分の価値観で解釈し、自分の判断基準で意思決定してしまうんですよね。そうなると、少人数の組織であっても認識のズレは頻発してしまいます。
ベースになる価値観が揃えば揃うほど、このズレは減って、伝言ゲームがうまく進む状態になっていきます。
ーそれぞれのメンバーが、同じ基準で物事を捉えることができるようになりますよね。
宮脇:僕は、組織内のコミュニケーションは、実は少ない方が良いと思っています。(コミュニケーションを無理して減らせとも思っていません)
コミュニケーションはあくまで伝達のための手段であって、それが増えれば事業が伸びるわけではありません。むしろ丁寧にやればやるほど時間がかかってしまいます。コミュニケーションが少なくても意思疎通が行われ、仕事が円滑に進むのであれば、その方が効率がいいですよね。
もちろん、カルチャーブックひとつでコミュニケーションが円滑に行われるとは思わないのですが、そういう考えからできたツールのひとつです。
ー組織で一緒に見られる物差しがあるという状態ですね。
宮脇:同時に、カルチャーブックは社内向けに作ったものではありますが、社外向けにもかなり使えると思っていました。主に採用のシーンですね。
行動指針や大事にする価値観をひとつずつ言葉にして載せることで、何を大事にしている会社なのか理解してもらいやすくなります。なので、このカルチャーブックを見て違和感のある人はおそらくunnameには合わないと思います。また、「入れば分かる、雰囲気を見てもらう」で済ませず、スタンスをしっかり言葉にして伝えようと思いました。
unnameの正社員メンバーは今5人で、「はじめの10人」を集めているところです。ひとりひとりの採用が重要かつ難易度が高いフェーズで、価値観がマッチするかは互いに慎重になるポイントです。互いに見極めをする場面でカルチャーブックを起点に良い会話が生まれることも期待したりしています。
大事なことだから早くやる方がいい、少人数だからこそ今一旦作った
ーでは、なぜメンバーが5名の「今」、制作に取り掛かったのでしょうか?
宮脇:メンバーが5人くらいのタイミングだからこそ作った側面もあります。確かに短期的に見たら、5人しかいない状態でカルチャーブックにしてまで丁寧に伝えるのってコスパが悪いように見えますよね。
けど、メンバーが20人になった時に、今いる5人の脳みそが80%くらい自分にリンクしていて、ある程度人に伝えられるようになっていたら伝言ゲームがうまくいくし、コミュニケーションコストが減って楽になります。
カルチャーブックは定期的に改定することが前提のものなので、土台を先に作っておいた方が人が増えたタイミングでもやりやすいですしね。
何より、大事なことだから早くやった方がいいなと思って。こういう緊急度低、重要度高のタスクは、使命感がないと一生着手できないので、無理矢理期限を決めて一旦作りきりました。改定前提のアウトプットなので、完成に対する心理的ハードルを下げることはできました。
メンバーとの日常の会話から、言語化のヒントをもらっている
ーでは次に、制作について宮脇さんに加えて、デザイナーの弘松さんにも聞かせてください。メンバー全員で制作に関わったという点も特徴的ですよね。
宮脇:これもメンバーが5人の時だからこそできることですね。まず、制作の進行プロジェクトは入社してすぐのデザイナーが主導で進行していました。
弘松:制作は全部で2か月ほどのプロジェクトでした。
はじめに宮脇さんがつくった全体像のラフがあって、それに僕が伝わりやすさを考慮して意見しながら補足や編集をいれました。それはデザイナーとして、かつ外から入ったばかりという立場も加味した形です。足りない説明はオーダーするなど、互いの目線を補えるよう役割分担しました。
宮脇:社外の人でも見て分かるレベル感を目指していたので、あえて編集を入社したての弘松さんに主導してもらいました。
弘松:僕は入社したばかりでもありましたし、事業コンセプトの箇所なんかは特に、かなり突っ込んで質問させてもらいました。表現の切り口を変更したり、文言を刷新したり。
ー他のメンバーはどのように制作に参加していたのでしょうか?
宮脇:すべての部分に全員が関わっているわけではないのですが、企業理念は以前から事業部長の中本と2人で磨いていました。行動指針や支援ポリシーは特にメンバーと磨き込んだパートですね。合宿で時間を設けて、みんなでディスカッションして言葉を紡ぎ出しました。
また、社内で大事にしたい共通言語に関しては、日常の会話やSlackでの発言を元に、「これはカルチャーブックに昇華させよう」みたいな感じの会話を通して、選定していました。
ーカルチャーブックに日常遣いしやすい言葉や概念が詰まっている印象を受けているのは、メンバーの言葉が入っているからこそですね。
ーデザイナーがカルチャーブックの制作を主導しているケースはまだ少ないですよね。
弘松:デザインへの理解が進んでいる会社では意外と多いです。デザイナーの役割はビジュアルのデザインだけではなく、情報のデザインなので。そういう組織は経営会議のファシリテーターをCDOが務め、情報をデザインする役割を担っているようなケースもありますね。
僕は入社当時から経営とデザインを接続したい、という意向を持っていたので会社のコミュニケーションのハブになることができれば、経営に関われる良い入口だと思っていました。言葉をビジュアル化したり、情報の交通整理をするようなイメージですね。
ー伝言ゲームのデザイン、とも言えますね。
弘松:なので、これから振り返りの場をファシリテートするようなこともしていきたいです。
ーこれは今後定期的に振り返りを行って運用していく予定なのですね。
宮脇:はい、定期的に見直しを行う前提です。カルチャーブックの冒頭で「カルチャーとは耕すもの」と定義しているので。カルチャーブックに記されている言葉はそのまま残すのか、アップデートするのか、はたまた役目を終えて削除するのか。
また、カルチャーブック自体も「メンバーみんなで月曜日に読み返そう!」というものでもないので、合宿やロングMTGなどの機会を設けて、しっかり振り返る予定です。
弘松:「使っていく」というのがカルチャーブックのそもそものコンセプトにもありますよね。
ー公開してから今まで、どのような場面で存在意義を感じているでしょうか。
宮脇:そうですね。主に社内の業務や会話で早速影響が出ていて、すでにカルチャーブックが意味あるものだったなと感じています。
弘松:MTG中に「これは『納期コミット』だね」とあえて行動指針に紐づく言葉で話したり、Slackのスタンプでも頻出していますよね。
ーまさに共通言語となっているわけですね。
宮脇:採用のシーンでも話題に上がることが出てきました。採用のアトラクトの武器になることはもちろん想定していましたが、スクリーニングや見極めの基準になっていたりします。
また、この(カルチャーブックを制作し、公開しているという)取り組みを大事にしていること自体が良いと感じた、というコメントも採用候補者の方からいただいたりしています。内容のソフト面だけでなく、結果として、カルチャーブックというハード面も良かったと感じます。
ー次の見直しではどのような更新をするのか、なにかイメージを抱いているのでしょうか?
弘松:カルチャーブックを作成して以降の3ヶ月間でもunnameは速いスピードで様々なことが変化しました。その中でいくつか共通言語が生まれ、今のフェーズで大事にしたいカルチャーも3ヶ月前と比較して少し変わってきていると思います。
このような「変化」を振り返るタイミングでカルチャーブックに落とし込むことで、この期間で自分達は何が変わったのかを認識できる、そういった機能をもたせていきたいです。
宮脇:前述したように、行動指針やポリシーはメンバー全員で見直そうと考えています。表現したい価値観は自分の中でいくつもあるので、今のunnameに必要な形で取り入れ、アップデートする予定です。
現状のアップデートのイメージは上述の通りではありますが、そのタイミングで思いついたこと、発見されたものを、それこそ伝記のような形で自由に残していければと思います。
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