生きてきたからにはこの世界っていうもんを知りたい人
むかしむかし、ある静かな村に、楽勇(らくゆう)という若者が住んでいました。楽勇は、「楽しむことには勇気がいる」といつも言っていました。
村人たちは最初、楽勇の言葉を理解できませんでした。「楽しむのに、何の勇気がいるというのだ」と首をかしげていたのです。
その村では、みんなが控えめに、慎重に生きることを良しとしていました。笑い声を上げることも、思い切り遊ぶことも、はしゃぐことも、何となく恥ずかしいこととされていたのです。
ある日、村に大きな災いが訪れました。長い雨で作物が育たず、人々は暗い気持ちで過ごしていました。
そんなとき、楽勇が立ち上がりました。「みなさん、今こそ楽しむ勇気を持ちましょう」
楽勇は、雨の中で踊り始めました。村人たちは最初、呆れた目で見ていました。
しかし、楽勇は続けました。「雨に濡れるのを恐れずに踊る勇気、人の目を気にせず歌う勇気、悲しいときこそ笑顔になる勇気、これらすべてが大切なんです」
少しずつ、子どもたちが楽勇の周りに集まってきました。子どもたちも雨の中で踊り始め、水たまりで遊び始めました。
大人たちも、徐々に加わっていきました。誰かが「こんな時期に...」と言いかけると、楽勇は答えました。「だからこそ、楽しむ勇気が必要なんです」
やがて、村全体が笑顔で満ちあふれました。人々は気づいたのです。楽しむためには、本当に勇気がいるのだと。
周りの目を気にせず自分を表現する勇気。
失敗を恐れずに新しいことに挑戦する勇気。
辛いときでも希望を持つ勇気。
そして何より、心から楽しむことを許す勇気。
不思議なことに、村人たちが楽しむ勇気を持ち始めると、村の空気が変わっていきました。人々は協力し合うようになり、困難も乗り越えられるようになっていったのです。
後に楽勇はこう語りました。「楽しむことは、時として戦いなのです。自分の中の恐れや、周りの目、そして状況と戦う。でも、その勇気を持てば、人生はもっと豊かになるのです」
そして「楽しむ心に福来たる」ということわざが、この村から広まっていったとさ。
めでたし、めでたし。
と思う2024年10月25日21時10分に書く無名人インタビュー923回目のまえがきでした!!!!!
【まえがき:qbc・栗林康弘(作家・無名人インタビュー主宰)】
今回ご参加いただいたのは こばやん さんです!
年齢:30代後半
性別:男
職業:数学を伝える人
Facebool:https://www.facebook.com/yohei.kobayashi.100
現在:推し活をしてるんですよ。その推しがたまたま僕の場合は数学やったっていう話。
ゆいぴ:
こばやんさんは今、何をされている方でしょうか?
こばやん:
数学の専門塾をやっております。小中高大、大人も含めて数学を教えるという仕事をしております。一番下で教えてる子は小4で、一番上は今でいうと70歳かな。僕自身数学が好きで、元々大学卒業したあと数学の先生になったんですけども、10年ほど学校の先生やって、もっと生徒に集中したりとか数学のこともしっかりやりたいっていうので独立して、今は数学の専門塾を自分でやっているという感じでございます。
ゆいぴ:
こばやんさんが創業した数学専門塾ということですか?
こばやん:
そうですそうです。もう全然ちっちゃい、ほんまの個人塾なんですけどね。
ゆいぴ:
実際に自分で塾を開いてみて、今どんな感じですか?
こばやん:
いやもうね、もっと早うやっときゃよかったって。
ゆいぴ:
ふうん。
こばやん:
やっぱ教師がしんどいんですよ。基本教師の仕事量って半端ないなと振り返ると思うので。教師当時の10分の1ぐらいの力で今同じぐらいの収入が入ってるので、何だろうなこれは、ってなります。コスパというか得られるもんとの対価が全然割に合ってなかったなと今更ながら思いますね。
ゆいぴ:
先ほど一番下が小4で一番上が70代とおっしゃってましたけど、そこに違いってあるんですか?
こばやん:
子供はやっぱり学校の成績を気にするので、学校の成績を上げるような勉強をするんですけども。大人の方はもう成績関係ないので、70歳の方は学校行ってないし。だから目的が違うというか、70歳の方は本当に学ぶということを楽しんでいただくために数学をしてもらう。子供たちにも、この問題をひたすら解け、そして宿題をどっさり出して、みたいなやつは面白くないので。大人向けでやったエッセンスをちょこちょこ混ぜながらその人の興味関心のある数学を教えることで、数学とはこういうもんなんだとか、ちょっと面白味みたいなのを感じると結果成績が伸びるんですよ。興味関心を引き出すという意味で言うと同じであるし、ただ目標としてるところがちょっと違うかなとは思います。
ゆいぴ:
そしたら子供を教えるときと大人を教えるときのカリキュラムというか、中身的なものは違ってくる?
こばやん:
そうですね、大人はなんなら問題ほぼ解かない。この数式が出てきた歴史とか、吊り橋は数式で表すとこんな感じでみたいなのとか、解く数学というよりも見る数学というか。僕は絵が下手なんですけども、見るのは好きなんですよ。漫画とか美術館とか。でも学校って絵を描けって言われるんすよね。しかもそれに勝手に点数をつけられるんですよね。ほんでそれが将来の役に立つからとか、将来これができないとダメだぞって言われるんすけど、僕は絵が下手なのでそれはものすごい苦痛なんすよ。でも見るのは好きみたいなところがあるので、数学もそんな感じやなーと。僕はたまたま数学解くのが得意で見るのも両方好きやったんですけども、人によっては数学が苦手だったけど見るのは悪くないなみたいな人が案外いるんですよ。でも解くことしかさせられてこなかった。なので、70歳になってもそういう感じで、あれ何やった?みたいな。あれは数学の一部であって、それが数学の全てじゃないので。そんな感じの数学をしてます。
ゆいぴ:
なるほど。私もおそらく数学を解かされてきた人間だと思うので「数学を見る」っていう言葉にあまりピンときてないんですけど、そこってもっと詳しく説明できますか?
こばやん:
例えば、可愛いキャラクターとかいるじゃないですか。ピカチュウとか、キティちゃんとか、ドラえもんでもいいし、ちいかわでもいいし。あれって大体、横幅と縦幅の比が決まってるんですよ。大体ですよ、大体。
ゆいぴ:
はいはい。
こばやん:
彼ら、よく思い浮かべてみると何となく同じようなフォルムしてません?縦と横の比だけ考えてみると大体ね、1:1.414っていう白銀比って言われる比なんですけど。そういう比で表すと似た数字になってくるんですね。比較するとわかりやすいんですけど、これをちょっとずらすと1:1.6ぐらい、1:1.618っていう黄金比っていう比があるんですけども、それにすると可愛いというよりちょっとかっこよくなるんですよ。日本だと白銀比が好まれるんですけども、西洋とかアメリカとかヨーロッパとかに行くと黄金比の方が好まれるっていうので。日本の建築物なんかもそうなんですけど、建築物に使われる比は日本だと白銀比。銀閣寺とか五重塔とか、あとスカイツリーも一応白銀比が使われてるんですけども。西洋のパルテノン神殿とか有名ですけど、それには黄金比が使われていて。使われる比、好まれる比みたいなのが違ってきたりするんですよね。これはもう算数の話なので、比なので、小学校3年生から4年生ぐらいで習う話なんですけども。身の回りの中でそういう算数の話っていうのも実はあるという。ちなみに、ゆいぴさんは今パソコン使ってますかね?
ゆいぴ:
はい、そうです。
こばやん:
たぶんそのモニターは、縦と横の比が大体1:1.618です。
ゆいぴ:
えー、そうなんですね。
こばやん:
テレビとかモニターは大体1:1.618で。5:8ぐらいなんですけども。
ゆいぴ:
へえ、勉強になりました。すみません、個人的に気になったことを聞いてしまって。
こばやん:
いえいえ。
ゆいぴ:
ちなみに数学を教えているときってどんな気持ちですか?
こばやん:
これはね、たぶんオタクがオタクの話をしてる感じです。あるじゃないすか、好きなアニメとか推しとかね、みんな何かしら好きなものってあると思うんすけど。推し活をしてるんですよ。その推しがたまたま僕の場合は数学やったっていう話。ひたすら推しの話を。だから授業も、これおもろいやろ、これ解けるのがおもろいやろ、みたいな。ようできてるやろ?みたいな話をするのが好きなので。だからもう推し活がそのまま仕事になってる感じ。
ゆいぴ:
なるほど、面白いすね。
こばやん:
ほんまこういう世の中でよかったというか、数学に金払ってもらえる世の中じゃなかったらもう大変なんで。でも何だかんだね、ある程度のレベルにいくと人って面白いと感じるようになってるんだろうなとは思うんですけども。日本に住んでて数学っていう言葉を知らない人はいないと思うので。どんな人でもやっぱり1回はどっかで触れてると思うので、数というものに。だから要するに共通言語になるわけですよ。その人のレベルというかね、足し算ができるのか、たまに九九できない人とかもいるので、それはそれで九九以前の話というか。九九までの話で何とか面白く話ができるようにとか、もっと専門的な人にはもっと専門的な話をしたりとか。数学というジャンルでいっぱい話ができるようにっていうのは、そういう努力はもちろん必要なんですけども。でもいいっすよね、やっぱこういう話を聞いてもらえて面白いって言ってもらえて。僕はもうひたすら好きなことの話をしてるだけなの。
ゆいぴ:
感情的には何が当てはまるんですかね?数学の話をしてるときっていうのは。
こばやん:
感情的にかー。何になるんかな?なんか交流みたいな感じ。
ゆいぴ:
交流?
こばやん:
深いところの心と心の交流みたいな感じやから…。何になるんでしょうね。繋がりとかそういう感覚。感情で言うと安心感とかに近いとは思うんですけども。繋がってるという感覚かもしれないです。
ゆいぴ:
それは自分と生徒さんだったりとの繋がりっていうことですかね?
こばやん:
うんうん。さっきの話も結局、あれがなんで楽しいのかって言われたときに説明はできないんですよ。僕は面白いと思うんですけども、結構この話は面白いと言ってくれる人が多くて。理由はないけど、同じことを面白いと思ってもらえてるということはやっぱり、何て言うんすかね、ちょっと同じような感覚というか。ちょっと嬉しい感覚になります。
ゆいぴ:
なるほど。数学専門塾以外で普段やってることとか好きなこととかって何かあるんですか?
こばやん:
最近いろいろやってる。なんかパワーストーンが面白そうだから、パワーストーンのいろんな店行って買ってちょっと販売してみたりとか。最近生まれて初めてボーカルをやったんですよ。知り合いが音楽の専門家みたいな人で「歌に興味ある?」みたいな。1人でカラオケ行ったりするんで好きなんですけどって言ったら、グループ組みなよって言われて。初めはいやいやそんな無理っすよ、みたいな。そんなに上手でもないしって。でも好きなんでしょ?って言われて、歌うのは好きですって言ったら、もうそれで十分よ、みたいなことを言われて。好きならいいかと思ってバンド組んで、歌ってきました。あれはめちゃめちゃ楽しかった。
ゆいぴ:
あ、楽しかったんですね。何系ですか?音楽のジャンル的には。
こばやん:
ジャンルはねイエモン、THE YELLOW MONKEYっていう。わかりますかね?
ゆいぴ:
わかります、わかります。
こばやん:
イエモンの曲が好きでその中の「バラ色の日々」っていう曲を歌いました。
ゆいぴ:
へえ。誘われたときと歌い終わった後の気持ちの変化みたいなのってありました?
こばやん:
いやー、やってよかったなあ、ですよね。こんなステージの上っていう世界があるんだなって思ったんですよね。僕はずっと音楽も好きやったんで聴く側はやってたけども、ステージの下なんですよそれは。ステージの上に一歩上がると、もう社会というか世界が違うんですよね。ステージの上は自分を出す場所なので。あそこは縮こまると逆にかっこ悪いんですよ。
ゆいぴ:
うんうん。
こばやん:
でもステージの外ってみんなに合わせるというか、出すぎると逆に浮くじゃないですか。ステージの上に立ったときには、もうむちゃくちゃでもいいんですよ。いきなり飛び跳ねてもいいわけですよ。もうとにかくやりたいようにやるみたいなのをおもくそやっていい場なんだなと。しなかったんすけどね、そんな勇気はなかったんすけども(笑) でもしたかったらしていいんだみたいな、心の底からバッと自分を出す場所みたいな感じに僕には思えたので。こんなことが許されるというか、世界があるんだなと思ったんですよね。
ゆいぴ:
そのことが普段の生活とか、お仕事の数学塾の先生だとかに影響ってありました?
こばやん:
むちゃくちゃありますね。結局好みの問題だと思うんすけど、僕はああいう自分を出すという行為がめちゃくちゃ好きなんやなと感じ取ったわけですよ。今までは聞くことを重視してたというか、もちろん大事なんすよ生徒の話を聞くとか、こう聞くということにすごい重きを置いてたんですけど。少なくとも自分の今の人生の中では出すというか、こっちの方がなんかおもろいというか。体がわくわくするなと思ったから、今までよりも出す方、話す方をそこから多めにするようになりました。
なんなら職業的にも、職業って言っていいのかわかんないすけど、TED出たいんですよ。TEDっていうプレゼンテーション番組みたいなのがあるんですけど。あそこで数学を語りたいなと思って。夢に近いね。目標か、目標が1個ちょっとできて。あそこなんかまさに縮こまってるところじゃなくて、相手のことも考えるけどもとにかく出す場所なので。結構双方向を意識してたんですけども、もうちょっと自分出した方がええんちゃうかなっていうんで変わりました。
ゆいぴ:
それはやっぱりボーカルを経験したことによって生まれた目標なんですかね?
こばやん:
そうですね、まさに。
過去:こんな人生でよかったのか、このまま死んでいいのか、他人の目を気にして自分のやりたいことも出さずに人生終わっていいんかって思った瞬間に「それは嫌だ。」って明確に自分の中から出てきて。
ゆいぴ:
こばやんさんは子供の頃、どんな子供でしたか?
こばやん:
小学校の頃は休み時間になると、雲梯って言ってサルがやるような遊具。あれが大好きやって。とにかく外に出てたイメージがめっちゃありますね。学校終わったら即走って、ただいまー行ってまーす、って玄関にカバンを全部放り投げて友達ん家まで走ってって遊ぶみたいな活発な感じやったんちゃうかなと思います。中学ぐらいからちょっと大人しくなったというか、人見知りなんかな。なんか縮こまっていった感覚があって。別になんやろな、部活もやってたし勉強も頑張ってたし、いわゆる超優等生ではあったんですけども。活発さはちょっとなくなっていったのかな。よくできた子やったんですよ、世間から見ると。運動でも学校で一番になるぐらい、長距離ですけどね、長距離で体育祭とかで1位になるようなタイプだし。勉強もできる、そんな性格も悪くない。いわゆる良い子、優等生やったとは思うんですけども。社会的に見たら悪くはなかったけど俯瞰してもう1回思い返してみると、あんまり幅がないというか、そういう感じはちょっとしますね。でも生き生きしてたかな、中学んとき。
ゆいぴ:
小学校の時は活発で、とおっしゃってましたけど勉強はどうだったんですか?
こばやん:
勉強もほぼトップでしたね。元々の地頭というか、向いてたと思います。特に塾とかも行ってなかったし、勉強したら普通に100点とか取れてたんで。うん、そうだな、よう考えるとそうか。結構勉強ができたよな、やっぱ昔から。
ゆいぴ:
ふうん。中学校に上がって縮こまってたっていうのは、自分の中で思い当たる理由あるんですか?
こばやん:
今話しててちょっとそうかなと思ったのが、周りが、特に女子が僕のことをくん付けで呼びだしたんですよね。そこまでは男女あんまり関係なく話してたのが、なんか急に「こばやんくん」って。気持ち悪い気持ち悪い、何があった?みたいな。壁というか、こっちは何々さんとかって呼ばなあかんの?みたいな。全部呼び捨てで呼んでたのが、くん付けさん付けになってびっくりした記憶があります。
ゆいぴ:
なるほど、それが縮こまった理由。
こばやん:
そうっすね。特に女子はむっちゃ意識するように、逆にそれで。ちょっとやっぱり距離がね、今まではウェーイとかって言ってたのが、あれ、そういう感じじゃない?みたいな。だから小学校の頃、低学年のときはほんまにそういうのは何もなしで考えてたのが、女子というものを意識しだしたっていうのはありましたね。男子はまだそのときはそんなないかな、ちょっとあったかなと思うけど。でも小学校の延長ぐらいの感じかな。誰とでも喋ってたんちゃうかなと思いますね。
ゆいぴ:
ちなみに部活は何をされてましたか?
こばやん:
部活は陸上、中学は陸上をやってました。長距離得意やったんで。元々はラグビーやっとって、もう幼稚園からずっとラグビー、小学校もラグビー。ラグビースクールっていうね、そういうのがあるんですけども。中学んときも陸上部入りながら別の中学でラグビー、土日だけ試合とか。高校大学とそのまま続きます。一応部活としては中学は陸上でしたね。
ゆいぴ:
ラグビーをなんで始めたかって覚えてますか?
こばやん:
もうね、親父がそういうラグビーの、ラグビースクールを作った人なんですよ。その地域のラグビースクールっていうのを作った人なので、僕に選択肢はなかったです。入る入らないとかっていうやり取りをした記憶は全くない。もういたみたいな。でも嫌じゃなかったんでしょうね。ラグビーを本当にもうやめたい、嫌だと思ったことは大学までやったけども1回もなかったです。
ゆいぴ:
そうなんですね。中学を卒業した後は高校に進学されたんですか?
こばやん:
うん、そうですね。
ゆいぴ:
高校はどうでした?どんな生活でした?
こばやん:
高校はちょっとね、主に勉強と部活で塗りつぶされている感じなんですけども、人とどう喋っていいのかわかんない時期がありまして。なんでみんな休み時間とか昼休みとかそんなに喋ることあんの?って思ってました。毎日じゃないすか。毎日なんで授業の合間とかにそんな喋る話題とか、そんなものがあるんだろうなと思って。だから喋ってくれる人のところに行って聞くというか。そういう喋ってくれる友達を結構作りましたね。でもほんまにそれまではしてなかったけど、図書室に行って1人で本読む、みたいな。本を読みたいわけではなく、話題がないからあんまり輪の中に入っていけず、ちょっと逃げるように図書室に行った記憶があります。これは中学までは全然なかったので、ちょっと人間関係に不安というか。たぶん今でも結構苦手だと思います。例えば毎日10分休憩があって、授業が終わりました、10分休憩だからああだこうだって喋るのは苦手な感じがします。
ゆいぴ:
それはなんで苦手なんですか?
こばやん:
ん-、何を喋っていいかわかんない。
ゆいぴ:
そこが苦手意識なんですね。
こばやん:
何となく。話題が定まればいいんですけども、何となく喋れって言われても何もないみたいな。何を喋っていいかわかんない。数学の話しろって言われたらできますよ。パッと何もないってなったときに何喋ろうかな?って。毎日会ってたらなると思う。だからそれは学校に勤めてる時にちょっと困ってたやつですね。
ゆいぴ:
なるほど。高校の後は大学に進学されたんですか?
こばやん:
そうですね。一浪はしたんですけども、いわゆる良い大学、旧帝大に行ったので。本当そこまではレールに乗ったというか、社会の良いと言われるレールに乗ってるラインに行きました。そっからちょっと鬱になって。そっからね、鬱なのかよくわかんないけど体が動かなくなる現象みたいなのが起こって。いろいろあるんすけど10年続きます、それが。
ゆいぴ:
最初に発症したのが大学時代ということですか?
こばやん:
そうですね、20歳、19歳の終わりぐらいですね。そのぐらいんときに家で寝転がってたら急に右手が動かなくなるみたいな現象が起こって、脳の病気かと思って焦って救急車で運ばれたんすけども。一応大丈夫やったんですね。2、3時間経つと元に戻る。厄介なのが次の日もまたなるみたいなね。っていう自分の体が急に動かなくなる現象が起こって。当時ラグビーもやってるぐらい元気ではあったけども、不意に走り終わったと思ったら体動かんてなって痙攣して、救急車に運ばれる。てんかん発作みたいなのが急に出てきた。
その治し方がまあわからんくて。いろんな病院に行ったし、もう10以上の病院は行ったし。阪大病院って言ってね、良い大学病院で1ヶ月半ぐらい入院して体のあらゆるところを調べてもらったけども何もない。でも症状は消えないっていう感じで。じゃあ僕はどうしたらいいんだ、みたいな。最終的にそれはもう精神的なものです、みたいなこと言われて帰ったんですけども。いや精神的なもんって言われてもなっていう。当時は全く思い当たる節がなかったので、防ぎ方がわかんなかったですね。精神的なものもたぶんあったけど、単純に身体的なものもきっとあったんだろうなと今では思うんですけどね。
ゆいぴ:
明確な理由というか原因みたいなのは、未だにわからない?
こばやん:
わかんないです。本当に珍しかったらしく。病院で入院してるときも、ちょっと学会で発表させてくれみたいな。症状をビデオで撮られて、今固まってます、これはできますか?あれはできますか?とかって聞かれて。っていう感じだったんで。たぶん珍しいんでしょうね。病名が結局つかなかった。
ゆいぴ:
そうなんですね。結局わからなかったんだ。
こばやん:
そう。そんなん言われてもね、困ってるんやけど。症状をなくしてくれという話で。薬飲んで治ったらいいんですけども、薬飲んでも全然治らないから。だから学校に勤めてからもあったんですよ、急に動かなくなるみたいなのが。学校に勤めながら救急車を呼んでもらって、2回ほど学校に救急車入ってきて。こばやん先生が運ばれてる!って生徒に言われながら運ばれていくみたいな。悩みも多かったんですけど、なんかそういう20代。
ゆいぴ:
先生として勤められていたのはどの学校ですか?
こばやん:
高校ですね。公立の高校ですね。
ゆいぴ:
そういう身体的な問題もありつつ高校に勤められてたときっていうのはどうでした?
こばやん:
なんかこう踏み込んでいかんとあかんですよ、教師ってやっぱり。僕が行ったところが定時制、夜間の高校やったんで、ほっとくと辞めていっちゃうんですよね。不登校の子であったりとか、いわゆるヤンキーみたいな、そういう子らが基本的には来る学校だったんで。学校来んかったら電話してとか、どうすんねんみたいな話、高卒資格はとっとかなあかんのちゃう、みたいな話をするとか。自分としては人とぶつかるみたいなのを避けて通ってきたんですけども。だからそういうのあんまりしたくなかったから高校を選んだんですけど、結果めっちゃせなあかんっていうところに。
面白かったんすけどね、それはそれで。自分から人に関わりにいくっていうのはなかなか人生の中でしてこなかったから。面白かったけど苦労しましたね。いろんなやつがおって、ぶつかってみると、薄っぺらい校則がこうだからとかそういう意味でぶつかるともうぶつかりっぱなしというか、何も起こらないんですけど。心の底からぶつかると伝わるんだな、っていうのはそこで知りました。
ゆいぴ:
ふうん。
こばやん:
校則を守らないことを怒るんじゃなくて、校則守らんかったらお前の学校生活が面白くなくなるやろみたいな。周りから浮いて1人だけ校則守らずにヘラヘラとワーッてやっとったら、何あいつ?ってなって孤立していくんすよ。だからそうなるのは嫌だから守れみたいな話をすると、うーんって言いながらもちょっと伝わったりとか。向こうもね、自由にしたいみたいなのもあるから、結構本気でぶつからんと伝わらなかったところはあるんすけど。深いところでやっぱ人は繋がれるんだなという感覚はちょっとありました。
ゆいぴ:
そこから自分で塾を開くまでの流れというか、きっかけって何だったんですか?
こばやん:
29歳の時に、鬱も発症してたんすよそんときは。体が倒れてストレスもいろいろ溜まってて、苦手なことめっちゃやりまくっとったんで。この人生はなんか嫌だみたいな感じになったんですよね。他人に合わせるとかなんか苦労ばっかしちゃったんで、これはあかんってなって。ほんまに1回死ぬかもって思った経験があるんですけども、それは過呼吸になってもう息できひんみたいな。苦しい苦しいってなって死の実感というかそういうものに触れた瞬間に、こんな人生でよかったのか、このまま死んでいいのか、他人の目を気にして自分のやりたいことも出さずに人生終わっていいんかって思った瞬間に「それは嫌だ。」って明確に自分の中から出てきて。変えようって心の底から思ったんですよね。コーチングっていう、生き方を知ってる人って言ったらいいかな、そういう助けてくれる人とそこから出会うようになって。要するに自分らしく生きている人たちとどんどん関わるようになったんですよね。
ゆいぴ:
うんうん。
こばやん:
ほんなら、自分としてもこんな生き方があるんだって。そこまではあんまりわかってなくて。それこそ20代の頃は自分が独立してやるなんて全く考えられない。そんな自信もなかったし、そんなものが自分の中にあるとも思ってなかったし。けどそういう自分らしく生きてる人たちを見たときに自分にもあるかもと思うようになって、半分がむしゃらに飛び出してみたら「あった!」って。気づいてなかっただけで、こんなにもいろんなものが自分の中にあったんだなっていうのに最近日々気づいてますね。これはさっき言ったボーカルの話に繋がると思うんですけど。
僕の中でちょっと幸せの定義が変わったんですよ。そこまでは上手く生きるというか、大学も良いところに行く、良いことをするのが自分にとって幸せなんじゃないかと思っていたんですけども、それが違うなと。要するに良いことをするんじゃなくて、合うことをするという話なんですけども。自分がどう感じるかっていうのが大事であって。だから良い大学に入ることが良いんじゃなくて、自分がいいなと思う大学に入ることが良いのであって。自分が感じてて、これがいいなと思うことをしてたら、幸せだなと思うようになったんですよ。それはものすごい些細なことでよくて、例えば今日神社に行きたいなと思ったときに今日神社に行くとか。ケーキが食べたいなと思ったときにケーキを食べるとか。旅行したいなと思ったときに旅行するとか。したいって思ったことを、それをそのまま叶えてあげるだけで幸せなんだなということを思うようになって。そこはちゃんとするとかそういうのとは、また別のものなんだなと思ったんですよね。
未来:ハッピーに生きていきたいですよね。
ゆいぴ:
未来についてもお伺いしたいんですけど。
こばやん:
うんうん。
ゆいぴ:
この先の近い未来から遠い未来まで、最後にこばやんさんが死んでしまうっていうところまで考えて、未来に対してどういうイメージを持っていますか?
こばやん:
少なくとも今の方針は「感覚を大事にする」なので、たくさん知らない感覚を、今も眠ってる感覚みたいなもんを大事にしていきたいなと思っております。自分のいいなと思う感覚の方にどんどん進んでいきたいので。具体的に言うと、例えば世界で数学を教えるとか、最近目標に入れてるのは武道館で数学の授業をするっていうのを言ってるんですけども。インド行ったりとかアメリカ行ったりとか、そういうとこで数学をすると言いながら、数学を通してそこの人たちとコミュニケーションをするのが一番の目的なんですけども。自分を出すことで、周りの人がまず自分が幸せになって、それが周りの人を幸せにするような何かがあればそれはむっちゃいいなっていうふうに思ってますね。
まだちょっと結婚もせず子供もいないので、結婚相手探して子供も産んで、仕事と家庭とその両輪が今まだまだ成長段階なのでそこを今しっかりして。世界一周もしたいし、オーロラ見に行きたいとか、世界の自然に触れてみたいとか。やることを全部やれるかどうかはちょっと置いといて、あれやりたいなこれやりたいなってのを、今日1日やりたいあれができた、やりたいこれができたって言って。ほんでどっかで終わりは来るので、自分の中でこれは絶対やりたいなみたいなものをこなして、最後は終わりたいっすね。
ゆいぴ:
武道館で数学の授業っていうのは、なんで場所は武道館なんですか?
こばやん:
何となく。
ゆいぴ:
何となく?
こばやん:
僕は自分がアーティストやと思ってるので。アーティストが目指すのはとりあえず武道館じゃないかなっていう。だから歌を歌ってる感覚なんですよ。ワーッて盛り上がったら…。あったんですよ、そういう経験が。数学の授業をして最後みんながスタンディングオベーションで拍手があるみたいな経験をしたので。数学でも授業でもこういう興奮というか、起こせるんだって思ったから。その学校にいた時も、それは数学じゃなかったけど、自分の主張をしたときにワーッと拍手の嵐みたいなのが降ってくる経験があったので。あ、これをやったらいいんだろう、みたいな。難しいですけどね。なかなかそんなこと毎回起こせないし。
ゆいぴ:
なるほど、アーティストとして武道館を目指したいってことか。
こばやん:
そうそうそう。教師をやってたのが、アーティストに生き方がちょっと変わってきた感じですね。
ゆいぴ:
壮大なことでもいいし小さいことでもいいんですけど、これチャレンジしたいなとか、ちょっとこれやってみたいなとか、そういうのってあります?
こばやん:
チャレンジしてみたいことかー。最近はもう本当にTED出たいがあれなんで、TEDの申し込みしようかなと思ってるぐらい。けど何だろうな、インド行きたいな。でもあんまり思ってないのかな。いやもう日々変わる、旬があるなと思って。今の願いがずっとあるわけじゃない。1年後にはもう別にいいやってなってる可能性もあるんですよ。だから世界一周とも言ったけどあんまり響いてないので。過去の願いだなって感じ。したいときがあったけども、もうせずにちょっとその願いの旬が終わっちゃった感じですね。だからそもそもずっと同じっていうのも、自分にはあんまりしっくりきてないです。そのときにやりたいことをやるっていう。
ゆいぴ:
うん、何となくその感覚はわかります。
こばやん:
そう言いながらやりたいことやってると同じ方向進んでるんすけどね、大きな意味で言うと。だからそこで何が起こるのかなっていうのを楽しみにしてるっていうのは。ちょっと抽象的ですけど。
ゆいぴ:
感覚を大事にしたいっていう話は先ほどしてましたけども、自分自身がどういう姿でありたい、どういう気持ちで生きていきたい、みたいなのってありますか?
こばやん:
ハッピーにいこう。ハッピーに生きていきたいですよね。鬱になって、人間って不幸に生きることできるんだなと思ったんすよ。ずっと幸せがないとか言うけども、ずっと不幸があるんですよねちゃんと。もうあれは本当に地獄やったんで。自分には要するに不幸になり続けられるような能力があるんだなと思ったから、その真逆を行けば自分はずっとハッピーになれるなと思ったんで。ハッピーを目指して。まあね、またそれも変わるんすよ。だから好きにやるのがそのときの幸せであることもあるけども、好きにやらないことが幸せになることもあるんですよね。これは本当にその状態とか成長段階とか年齢とか、そういうもんによってもコロコロ変わる。昔はジャンプ読んでて面白かったけど、今ジャンプ読んでもあんま面白くないなみたいな感覚なんですけども。やっぱ変わっていく中で、そのときその瞬間の僕が何をしたいのか何を求めてるのかっていうところに耳を傾けて、それを今までの自分とどれだけ違うかったとしてもちゃんと行動して、やるっていう生き方ですね。
ゆいぴ:
今は数学の先生をされてますけど、数学に魅力を感じていない自分だとしても先生になってると思います?他の教科とか、教える側の立場とかっていうところに進んでると思います?
こばやん:
人に関わることをしてただろうなとは思います。っていうのはむっちゃ病んでたときというか面白くないなと思ったときは、プログラミングみたいなのを大学では専攻してたんですね、情報学科だったんで。機械とずっと会話するっていうのが面白くなかったんですよ。だからそこは逆に言うと違うなというところだったんで。どんだけ苦労しても、やっぱり人と関わりたいみたいな気持ちを僕は持ってるので。営業職になるのか、人事になるのか、やること自体はたぶん変わってる。数学というものに出会わなければ。人には関わっていただろうなと思う。し、言い方あれなんすけどそこで結局数学と出会ってるやろなとも思いますね。僕の場合は。
ゆいぴ:
そこでっていうのは?
こばやん:
自分にとって数学って言ってるのはたぶん比喩で、数字を使わない数学みたいな感覚で数学をやってるんですよね。これはなかなか本当に言葉にしづらい。僕が一番数学を感じるのは山に行ったときで、調和とかそういうものを見たときに、その具体な表れとして数学というものが出てくるんですけども。全然伝わらんねんけど、感覚にそもそも数学の精神って言ったらいいのかな、魂に刻まれてるみたいな感じ。何を数学と呼んでるかわかんないよね。何だろうね。なんか概念みたいな感じ?いや絶対伝わらんよね(笑) 数字からどんどん離れていくんすよ、数学って突き詰めていくと。
ゆいぴ:
ふうん。
こばやん:
だから抽象概念のことを数学と呼んでいるので、さっき言った人との繋がり、繋がりというか社会システム、自然システムみたいな。世界と繋がるみたいな感じ?のところに、結局数学というものがおるんで。そこに出会いに行くみたいな感じなんすよ。
ゆいぴ:
要するに数学って一言で言うと何なんですか?
こばやん:
世界ですよね。見えない世界。目に見えてる世界はいっぱいあるじゃないすか。見えない側の世界。数学はビッグバンが起こる前からあるんで、この数学という概念がないとこの世界がそもそも生まれてないんすよ。だから物理現象なんかは数学の具体化された現象でしかないので、世界が始まる前から数学というものは存在していて、その数学を使った物理法則にしたがって世界というのは生まれてきてるから。そういう世界を作っているものみたいな。
ゆいぴ:
最後に言い残したことを聞いてるんですけど、人生を振り返ってきた上での言い残したことでもいいですし、読者へのメッセージでもいいですし、インタビューの感想でもいいんですけど、何かあればお伺いします。
こばやん:
楽しかったなっていうのはあるんですけども、最後の最後でやっぱ言語化してもらえた感じがしますね。僕は世界を知りたいんだっていう。生きてきたからにはこの世界っていうもんを知りたいんだっていうのが、自分の行動原理なんやなっていう。さっき言ったボーカルやって、こんな世界があるんだっていうのもその一つやけども。ありきたりな言葉で言えば「世界は広いなー」っていうのを、何度も何度も、今36歳ですけど、味わって生きていきたいんだなっていうのを改めて話しながら思いました。
ゆいぴ:
はい、ありがとうございます。
あとがき
誰もが常にステージの上に立っている。もちろん一人ひとりが主役でメインボーカル。だから自分のやりたいようにやっていい、うたいたいようにうたっていい。人に迷惑をかけない範囲で。周りの目とか陰口とかは、主人公を引き立たせるための演出よ。結局その人たちってたかが脇役なんで。むちゃくちゃでもいいし、いきなり飛び跳ねてもいいらしいっす。それが「生きる」というステージ。そこで輝けるのは私しかいない。オーラスまで笑顔で楽しく走り抜きたいな〜。
【インタビュー・編集・あとがき:ゆいぴ】
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