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「失くしたのは鍵ではない」


僕です


たくさんの人たちと出会い別れ
僕らは大人になっていくようです

そしてまたいくつかの別れを
僕らは唐突に握りしめたまま
はじめて時間を意識しました

果敢ないと思うのは別れのことをさすわけじゃなく
別れまでの時間に向けての想いだと思うのです

すべからく僕らは
無駄なお喋りなどで間を繋ぎ
そのハカナイを引き延ばしたものです


それでも最近は 忙しさにかまけて
空を見たり 泣いたり 風に吹かれたりしなくなりました

どうしても言葉にしなければいけないものが多すぎて
否応無く素朴な気持ちはどんどん遠ざかる気がします

何もかもパッと投げ去ってしまえる勇気も
それを正当化したような弱さも
今はもう儚くも消えてしまったのかもしれません


あの頃大切だと思い込んでいたなにかは今でも何処かに
そのままの色合いで壁を塗りつぶしたままの箱のような部屋のまま
その箱の鍵だけが今ではもう何処にも見つからずに

僕らはいつからかもうあの部屋へは戻ることもありません


形だけを受け容れるように 新しい世界ではせわしなく生きています
そんな顔がいつのまにか出来上がっていく自分に気がついていますが

本当は今日も こうしてずっと天井や遠く景色や
窓の形に映る光の姿や揺れるカーテンを眺めたまま
まるで干上がった心を 睡眠でやり過ごしました

世間というのは実に小五月蝿いもので
責任や常識や教育や親切などの言葉や顔で
僕らをまるで大人に仕立て上げていくことが好きなようです

同じように笑い 同じように捉え 同じように憤慨もする
そんな姿があれば この世界では信用されるようなので

いつからか僕らも まるで色の無い世界と同じように
形を模したお喋りに夢中になるふりを覚えました


だけどどなたかは存じ上げませんが たぶん
あなたならおわかりになると思ったので話しますが

信頼というもの程 沈黙を大事にするもので ぼくは
もう 嘘も偽物もぜんぶダイッキライになってしまったんだよ

鍵を知りませんか
あなたのような方なら
きっとまだお持ちなのではないかと思うのですが


ご存知ありませんか

僕を知りませんか


20040417 / 20170619  5:37




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