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「春と恋」

遥かなる朝 若葉の風
瞬きの鼓動 若草のきみ

萌黄色のシャツを着た君が
いま僕の前を風に乗って 交差点を渡って来る

逆光が時空を歪ませて
僕だけをその場所へ貼り付けてしまった様に

この時の流れに
君と僕だけしかまるで在りえない様に

何もかもが 真実だった


柔らかい日差しは 君の髪を優しく梳かし
置き去りにされた 僕の心を溶かしていった


素直な欲求は 君と共に歩きたい
時には共に泣いて 共に笑い合う事も
君の為になることを今 僕はしたいと感じた

僕にも君にも 二つの手や腕があって
言葉や肌の感触や 振り向く事も呼び止める事も
想像する事もきっと同じ様に
何不自由なく出来る事なのだろうと思った

夢を見る事も 感じる事も 伝えあう事も


それは完全であり この陽射しの中なら
君や僕は全知全能でいられるだろう

ただ時間を止める事は出来ないかもしれないけど
だから二人は 愛し合う事も出来る事なのだと思えた

すれ違う事も 目を閉じてしまう事も
手を振って去って行くことだってなにもかも可能で

それでも時間が止められないのなら
いつかは陽も暮れて 夜が色を見えなくしても
それでもきっと 忘れる事は出来ないと思った


光の粒子が集まってそよぐ君の髪
なにかがはじまる予感 影を見失う

薄桜色のほのかに香る白い君が
いま僕の横を風になって 交差点を渡って行った

僕は君をいつか 迎えに行きたいと思った


かたちのない光に導かれた僕らは
そんな淡いひかりに 恋 と名付けた

僕は君を 春 と呼ぶことにした

この季節が来るたびに 僕は君を捜してる
陽射しの中 君の香りがするんだ

まるで忘れ物をとりに行くように
君を迎えに行くだろう


20020512




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