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読むこと、書くこと。【日々のメモ 2024】

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その日ふと思ったことや好きなもの。 読んだ本の数行などを写す「メモ帳」として。 いつも持ち歩いているノートのかわりに。 ひとつの微風くらいの気軽さで記録。
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記事一覧

三十年後に眺めた灯台。ある人の詩について書くこと

 人と人との、人と作品との出会いは偶然という名の「必然」によるものが多いと思う。ふとした…

ほんの短い詩と詩。「雪みち」から「はるのはじめ」のひとひらへ。

 今年の秋に発行した詩誌「アンリエット」。  ここにどんな詩が並ぶのかは具体的には言えな…

一個の林檎を照らす新しさの方へ

 何冊かの詩の入門書を開けば、戦後からいまへと注ぎこむ現代詩の流れと、各時代の詩のおおま…

深夜の静かな声(小川国夫「建物の石」)

 毎年、春先から繁忙期に入る勤務先の仕事はいったん夏には落ち着く。だから今月と来月は他の…

ここにはない雨音について(西脇順三郎「雨」)

 真夏の連休は山のふもとにある家で、本をひらいたり、料理をしたり、眠ったりし、あとはとき…

夏。さまざまな白とともに。

 夏休みの日記のようなメモとして。  秋刊行の詩誌に載せる詩を書き終えてから、それらの作…

ともにめぐる星のような距離の人、本。(真名井大介『生きとし生けるあなたに』)

 わたしの親しい人たちは、賑やかな街を照らしつづける明るい灯というよりも。たとえば冬の帰り道に、かじかむ指に息を吹きかけながらふと空を見あげたときに。こちらの帰りを待っていたかのように、一日の終わりや季節の始まりを教えてくれる小さな星に似ている。  遠い場所で。彼らが彼ららしく一日や季節をめぐり、何かを感じ、眠り、また目覚める。そう思うだけで、こちらの暗がりの一部が明るむ。そんな交わりの星たち。  誰かと親しくなる。それはどういうことだろう。それはどんな悩みでも告白し、もた

十年前の夏の休暇と、隣にいた彼女のこと。

 秋刊行予定の詩誌の原稿も書き終えたので、好きな本を読んだり、映画を観たり、気持ちだけは…

はじめての個人誌制作について。外を眺めるよりも、満ちること。

 夏休み。若い人たちと話をする機会があり、自分の10代の頃を思い出していた。それで、少しそ…

約束という儚さ。(雨月物語「菊花の約」)

 雨続きだから、というわけでもなく。自分の心のなかや、周囲が少し騒がしく感じられるとき。…

詩集から離れる花びら

 四冊の詩集を編んできて。  いくつかの媒体に書いたものの詩集には入れないまま、という作…

距離という涼しい波間(鏑木清方「胡瓜」)

 五月。若草、萌黄、柳色……と、まだ吐息のように薄い新緑の色の重なりを見あげたくて、駅か…

あなたという月の光のために(吉田健一「大阪の夜」)

 細かく区切られた時間の抽斗に「やるべきこと」のひとまずの完成形を入れておく。次から次へ…

ひとり旅にはない地図(新しい詩誌のこと)

 以前、このnoteにも書いた。今年は個人誌を作ろうかな、と。  この2年くらいの間に書いた詩に、新作を合わせて小詩集にしてもいいかも……とも考えた。  その本の完成までの経路も想像できた。  ある一つの停車駅を目指して、わたしは小さなコンパートメントにひとりで座っている。長時間の移動にもかかわらず、乗車する人もあまりなく、知り合いに会うこともない。  自分の内側の言葉の振動だけを感じる静けさのなか、窓の外を眺めれば、ひと気のない広場や小さな川や丘、家々の壁や教会の塔など、