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読むこと、書くこと。【日々のメモ 2024】

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その日ふと思ったことや好きなもの。 読んだ本の数行などを写す「メモ帳」として。 いつも持ち歩いているノートのかわりに。 ひとつの微風くらいの気軽さで記録。
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記事一覧

氷砂糖の夜

 以前「シーグラス」という詩を書いたことがある(「hiver」収録)。そこに「氷砂糖」という…

寝る前のひと粒(立原道造「眠りの誘ひ」)

 天気予報では明日東京も雪になるかもしれない、とのこと。  雪という文字から、立原道造は…

ほしいものをひとつ。(若菜晃子『途上の旅』)

 このところ、文字を打ちながらひと気のない湖畔にいた。  焚火に手をかざしているときのよ…

ひとりの部屋のあかりのもとで

 昨年は一年を通して、このnoteにもそれなりの数の記事を書いた(詩誌のお知らせや詩も含める…

数日後には散る薔薇と

 少し静かに過ごしたくて。年を跨いで、詩を書いていた。  昨年秋に発行した「アンリエット…

「彼女は言葉」という言葉のなかで

 賑やかな夜のあと。  アルノ―・デプレシャンの映画を観ていた。  フランス語を学び始めた…

語感を磨く砥石(安房直子「言葉と私」)

 最近、安房直子の作品を読んでいる、と先日の記事にも書いた。  彼女の文章は、一見シンプルなあしらいの扉の内側に広い空間を持つ。それは、眠る前に飲む、色も香りも綺麗な果実酒のようでもあり、やはり眠る前に想像する、遠い港町の夜明けを旋回する鷗たちの影のようでもあり……。  もしくは、誰も住まない山間の家の箪笥のなかで、月に呼応して密やかに瞬く真珠の耳飾りの光沢のように、昼間の神経をなだめ、夜の広がりへと目と耳を導いてくれる。  全7巻の『安房直子コレクション』(偕成社)は、1

読まれる前に、ここにあるもの

 先日、詩をお読みいただくことについて記事を書いた。  大勢の人に読まれたい、好かれたい…

初めて、読まれた時のように

 過ぎた季節を思いながら、寒さへと向かう車内でこれを書いている。  (昨日、noteに載せた…

冬の「出発点」から

 昨日、詩をお読みくださった方からお手紙をいただいた(とても嬉しく拝読しました。ありがと…

白い花のあかりだけ(安房直子「秘密の発電所」)

 数日前から机のうえには、白のみのトルコギキョウ、スプレーマム、かすみ草を飾っている。ど…

わたしの詩の書き方 「はつ、ゆき」(詩集『ひかりの途上で』より)

 以前、「詩の教室」で自分の詩の書き方についてお話したことがありました。  そのときは「…

三十年後に眺めた灯台。ある人の詩について書くこと

 人と人との、人と作品との出会いは偶然という名の「必然」によるものが多いと思う。ふとした…

ほんの短い詩と詩。「雪みち」から「はるのはじめ」のひとひらへ。

 今年の秋に発行した詩誌「アンリエット」。  ここにどんな詩が並ぶのかは具体的には言えないのだけれど……。  一つの鍵となる気配のなかに複数の時間や風の流れを入れてみよう……と意識して手を動かした詩篇がいくつかある。  第四詩集『微熱期』とは少し違う、言葉の置き方と重力と、息遣いで。  そういう微調整は、たとえば料理をするときや絵を描くときの感覚に近いのかもしれない。食材の切り方や調味料の量を微調整し、煮込む時間も変えてみる。もしくは、パレットのうえで溶かす絵の具の数と水の