語感を磨く砥石(安房直子「言葉と私」)
最近、安房直子の作品を読んでいる、と先日の記事にも書いた。
彼女の文章は、一見シンプルなあしらいの扉の内側に広い空間を持つ。それは、眠る前に飲む、色も香りも綺麗な果実酒のようでもあり、やはり眠る前に想像する、遠い港町の夜明けを旋回する鷗たちの影のようでもあり……。
もしくは、誰も住まない山間の家の箪笥のなかで、月に呼応して密やかに瞬く真珠の耳飾りの光沢のように、昼間の神経をなだめ、夜の広がりへと目と耳を導いてくれる。
全7巻の『安房直子コレクション』(偕成社)は、1