大学授業一歩前(第85講)
はじめに
今回は政治学を中心に学術書を出版してらっしゃる風行社様に記事を寄稿して頂きました。お忙しい中ありがとうございました。是非、ご一読下さいませ。
概要
Q:自社の概要を教えて頂きたいです。
A:小社は政治学を中心とした社会科学専門書を主に刊行しています。1990(平成2)年に現・代表が一人で始めました。約10年後に一人加わって、その後現在まで二人だけで細々と続けています。多くの販売部数を期待できる学部教科書はごく僅かで、ほとんどは販売部数の大変少ない本であるため、経営的には常に火の車ですが、経費を抑えてなんとか続けてきました。
オススメの一冊(他の出版社様の中から)
Q:オススメの一冊(学部一年生、二年生向け)を他の出版社様の本のなかから一冊ご紹介頂きたいです。
A:杉田敦(2001)『デモクラシーの論じ方ー論争の政治』(ちくま新書)
デモクラシーが重要であることについては皆が一致できますが、具体的な問題に関わってそれをどう解釈するかについては意見が分かれます。本書では「制度」「代表」「討論」「憲法」などをめぐって、考え方の異なるAとBとが縦横に議論を展開する対話編です。政治は「頭を柔らかくして」考えなくてはならないことを教えてくれる本です。
オススメの一冊(風行社様の中の一冊から)
Q:オススメの一冊(学部一年生、二年生向け)を自社の中から一冊ご紹介して頂きたいです。
A:早川誠著(2014)『代表制という思想』(選書〈風のビブリオ〉1)。
「国の規模が大きくなったので、やむなく代表制がとられている。」「代表制は直接民主主義の次善策」という《直接民主主義の神話》を根底から問い直し、敢えて「代表制の意義は……民意を反映しないことによって民主主義を活性化することにある」と説き、読者の先入観を覆し、「大人の民主主義論」へと導く書。
メッセージ
Q:最後に大学生へメッセージをお願いします。
A:「分からないもの」を安直に「分かったことにしてしまう」ことなく、「分からないまま」抱えていく粘り腰を持ち続けてもらえたら嬉しいです。また「自分の頭で考えること」と「自分を相対化すること」を両立させて欲しいとも思います。
おわりに
今回は政治学を中心に学術書を出版してらっしゃる風行社様に記事を寄稿して頂きました。お忙しい中ありがとうございました。私が今読んでいるのも風行社様の本で、田中将人(2017)『ロールズの政治哲学 差異の神義論=正義論』風行社です。ロールズの政治哲学の中でも後期の『政治的リベラリズム』以降の思想に焦点を当てている一冊です。博論を書籍化したものなのでかなり難しいです(笑)。次回もお楽しみに!!