絹川正吉『教養と大学スタッフ』を読む
大学スタッフの教養について説いた書かと思って手に取ったが、第1章は学生向けの教養論、第2章以降は教養論は前面に出てこない大学スタッフ論で、教養と大学スタッフは注意深く別々に論じられている。
強いて言うなら、第3章「SDの新局面」において、職員はいかなる「大学観」「大学のセンス」に基づいているかが問われると主張するくだりがこれに近い。
それは篠田道夫らに代表される大学職員論、例えばルーティンワークには非専任職員をもって充て、専任職員は企画型の業務に専念させる、というような近年の大学職員論のメインストリームを批判的に検討する中で展開される考えで、絹川は「大学危機の時代における職員としてのプロ能力(専門的資質)の向上…これはいうまでもありません」としながらも、「重点の置き所が商業化する大学観を前提にしている」としてこれを戒めている。
「私見では大学の戦略目的は、学生サービスでなければなりません。サービスがルーティンであります」、だから、商業化した大学観から導き出される経営の合理化は本来的な大学の営みを疎外することにならないか、と言うのだ。
この指摘はありふれているようで、その射程は実に広い。