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おばあちゃんと食べたハンバーガー
おばあちゃんはあとふた月で90歳。
何が欲しいか聞いてもなんにも欲しいものはないし、行きたいところもない。もうなーんもどうでもええと言う。
以前ちらっと一度ハンバーガーを食べてみたいと言っていたので、車で一緒に買い物に行った帰りにドライブスルーでプレーンなハンバーガーを買った。テレビで見るような大きいのは顎が外れたらいけんから一番小さいやつで、と。おばあちゃんはお店のだけじゃなくて、ハンバーグを挟んだパンという意味でのハンバーガーを一度も食べたことがなかったらしい。人生初バーガー。美味しいとも言わないけど、まあまあ食べれる、と。どんなもんかわかったけん冥土の土産じゃあと言っている。
わたしはチーズバーガーを買ってもらった。一緒に食べて楽しかった。ナゲットもおばあちゃんは一つ食べた。ハンバーガーは一つはよう食べきらんかもしれんと言っていたが、気づいたら全部食べていた。
小学生の夏休み、おばあちゃんの家に泊まりに行くのを心待ちにしていた。おばあちゃんは自転車の後ろにわたしを乗せて近所のスーパーに連れて行ってくれた。そのスーパーはおばあちゃんの家から300mほどしかない。今おばあちゃんは、その距離を歩くのもたいぎ(面倒)と言っている。行くときは手押し車を押して、休みながら行くらしい。
おばあちゃんの身長は140㎝もないし、体重は40㎏もない。かつて、おばあちゃんの背中に手をぎゅっとまわして、おばあちゃんが漕ぐ自転車の後ろに乗っていたわたし。おばあちゃんは覚えてないと言うので夢みたいだけど、わたしは乗った。
子どもだったわたしが大人になっても、ずっと一番子どもでいられるのがおばあちゃんの前だった。今度はおばあちゃんが子どもみたいになっていく。変化に動揺するし、怖い、悲しいと思うこともある。でも今日みたいに一緒に過ごして、何か一緒にして、沢山の時間を1秒でも長く一緒に過ごす。