食堂のおばちゃん
食堂のおばちゃん
山口恵以子・ハルキ文庫
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行きつけの店、っていいですよね。
わたくし、お酒を嗜む方なのと、あまり節約に熱心ではない気ままな独身貴族ということもございまして、飲み屋ではいくつか行きつけがあるんですが、食事する先の行きつけって無いんですよね。
そもそも同じところで食べるのに飽きちゃうてのもありますが、自炊も出来るしで…身支度して外に出るぐらいなら家であるもの食べよう、て…
ただ、このコロナでのリモート生活の昨今で、
「ああ…ちゃんとした「定食」スタイルを一日一食は食べたいところだ…そして品数が多い食事を自分では作りたくない…」
というわがままなことはよく考えます。
ということで、
「あー…この店、近くにあればなあ…」
な「食堂」が舞台の本作品。お互い旦那を早くに亡くした嫁と姑が、夫らの遺産とも言うべき食堂を二人仲良く続けてる、という状況の中で、お馴染みさんにトラブルが出たり、姑さんの年齢面で心配事が出たり…などなどの日常模様を、おいしそうなメニューと一緒に綴った優しくおいしそうな作品です。
先日の「かごんま交遊録」で、「料理要素が惜しい」と書かせていただきましたが、
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https://note.com/unisindo/n/n2f74b3bd3dbc
その点で言いますとこちらの作品の方が料理の書き方は圧倒的に好みです。
著者さんは「元・食堂のおばちゃん」だそうでして、なるほど、段取りや材料の過不足によるメニューの切り替えなどよくあることなのかな?と思わせるような丁寧な献立・丁寧な支度描写なのと、単純にメニューが日常の食事の参考になるしおいしそうです。揚げ物は自分でしないけれども!
「ここの食堂は通いたい」
と思わせる必要もあるし、著者さんには最適な題材だったのかもしれないですね。
この作品、結構続いてるシリーズものなのですね。知らずに買って読んでました。合間見て続きも読んでみようっと。一話ごとしっかり完結してますが、続きをもっと読んでいたいような魅力にあふれています。
正直言うと内容だったり展開だったりは地味なのかと思うんですけれど、身近感があるせいか、親身になれるハラハラ要素がちょいちょいと挟まるのですよね。読んでいくうちにわたしもすっかり常連さん気分が高まって、
「おばちゃんになにかあったら駆けつけるよ!遠慮なく連絡ちょうだい!」
みたいな気持ちになります。
こちらの作品も姑さんがメインにいるせいもあって、どうしても話題から外せない「老い」の問題も絡んできます。
先日「老親の家を片づける」
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https://note.com/unisindo/n/nf22b14a3840d
で、「地域の老い」についても少し書きましたが、こちらの作品にもちらほらとそんな陰りが見えますね。現代日本を舞台にすると避けられない話題になるのかしら…
この作品の姑さん、82歳という高齢なのですよね。まだまだ元気だし体が動くうちは、て気持ちもわかるんですけれど、80代…80代かーーーーー、てハラハラはどうしても湧いて出ちゃいます。わたしなんて40代の前半でもう何もしたくない毎日なのに…がんばり屋さんはなんでこんな頑張り屋さんなんだ…不思議で仕方ない……
巻末にはレシピもいくつか載ってます。メインあり副菜ありとなかなか種類がある上、ワンポイントアドバイスも入っていて丁寧仕様。
当然本文は飯テロなので、お腹が空いている時に読むと
「あああーーっ!食べたい!」
となりますので、あまり夜中向けではないです。
展開だったりはベタですが、時代劇とか人情噺ものなどお好きな人には最適。
シリーズ読んだらまた感想書いちゃいそうです。楽しみにしておこうっと。