一次資料
上の手の集落では下の手のハタモトの娘の悲恋話なのだけれど、下の手では、上の手集落の名主の娘と対岸の庄屋の倅、ということになっている。
教育委員会の採話は一方のみで、併記されてはいない。
一次資料の価値は絶対だけれども、憚りもあれば異説もあるものだと思った。
「フキの下に妖精がいてさ。なんの因果か渡りのガンと旅するのよ。飛来地はいまはもっと上流。河川敷グランドの駐車場が広いからね。オレは餌付けはいいとは思わないけれど、子どもが喜ぶからさ。とまれアイヌのイマジネーションを育んだのも、この低湿地って訳だ」
基本的にお互いの話をマトモには聞いていないので、あやふやなハナシをあやふやに記憶して、ヒヤリング調査でもあれば編さんの過程を経たのち、それはそれで価値ある一次資料になるのだろう。
サトイモの畑に、白の茶ブチが可愛い香箱を作っていた。