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この国で抑留される(詩)

熊本が災害に襲われた時
決壊しそうになる感情を押し殺してカメラに向かい語りかけていた
同胞のいのちをおもう気持ち
あれは嘘だったのか

自らのいのちを守るために行動をしてください
なりもふりも構わず叫び続けていた
あれは嘘だったのか

戦場のメリークリスマス(曲) はてしない物語
広く流布することになった作品の創造主
それらのものとともに
減価する貨幣が 交換価値と蓄財機能が同居すること
その地上の不幸をかなぐり払う可能性について論じていた
少なくとも同胞に認識の材料のほどを分け隔てなく供し
善なる衝動 荒れ野をかけ連なる山々をかけ海峡を泳ぎわたり
国土に在する専門分野に於ける その集合知を得る為 
その職種の心意気 魂をもって聞き書きとめ
想いを巡らし予測され考えうる
未だいたるに及ばぬ危惧をも並列的に知らしめ
何物にも囚われぬ純粋思考の領域へと分け入り
時に民にひかりを投げかけ みちびき たたかっていた
もはやあなたは夢かうつつかまぼろしなのか

子宮という器官を生来ありながらにしてそなえ
宇宙へと通づる生命の次元の門 その人々
数百万年いくせにも渡りあったいのちの連鎖のその危機を
短命の種族になってゆくかもしれぬ その空想を
人類史上におき はじめて
ある種の現実味と共にできる状況がある その日常のはざま
与謝野晶子が 石牟礼道子があげた雄たけびを
なぜに声高に叫ばぬのか

石原吉郎が抑留中に体験もし眼にしていた
疲れ果て ろくな食物も与えられぬ人々
よろめき隊列をはみ出すなり規律に反したとして
いのちの危険が即座に及ぶその朝夕の行進
その隊列の端をいつも自ら進み選択していた男
隣に在し並び歩く同胞の 故国で待つ家族のために
そりいっそうの危機のなかで生きようとしたもの
そしてそんな 同胞をこそ親しみをもって示唆し庇護しようとする
女々しいおとこは ほとんどいなくなったのだから


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