【演劇】【小劇場演劇製作改革 草の根PROJECTの検証結果発信_1.5期_No.4】小劇場界にはバックに制作会社・マネジメント会社が少ない事を再自覚し、逆に強みとする
(1) 小劇場界には商業演劇界のような大きな制作会社がないことの再認識を
◇小劇場界は、意識的にも無意識的にも、多くの面で商業演劇界から影響を受けている事は間違いないと思われます。憧れという側面ももちろんあると思います。それにより、小劇場界にプラス面での好作用が働いている事も間違いありません。
しかし一方で、商業演劇界と小劇場演劇界には明確と言っていいレベルでの相違点もあります。そのため、活動において商業演劇と類似の行動をとると、小劇場界の規模からすると業界が疲弊してしまうものも中にはあると当プロジェクトは考えます。
◇それは例えば、劇団・ユニットの離合集散に際立って表れてくると思われます。演劇界あまねく、劇団やユニットの活動休止や解散は起こりうるものですが、その結果が業界全体へ与える影響度は随分と違います。次のセクション以降で掘り下げていきます。
(2) 劇団・ユニットの解散 or 休止の際の、業界全体への影響度の違い
◇商業演劇界では、劇団・ユニット(以後、適宜座組と総称)の所属メンバー、少なくとも座組のリーダーは、座組の活動を制作会社・マネジメント会社からの主に経済面のバックアップの下展開している事が多いと思われます。そのためもし座組が解散 or 活動休止に至った場合でも、活動において上記会社からのバックアップは基本的には変わりなく受けられるものと思われます。(つまり、大枠として制作会社等からの支援が先にある中での活動)
◇一方で、小劇場界で座組の解散 or 休止があった場合のインパクトはかなり異なります。そもそも小劇場界では、個人や座組をバックで支える制作・マネジメント会社を多くの場合持たない中での活動となります。つまりこの時点で既に、制作会社等からの支援体制は有していない事が多数です。ふまえて座組の解散 or 休止が起こると、上記商業演劇界のように解散・休止後も制作会社等からの支援体制が保持されるという事はなく、それまでの活動はリセット、一から新たな座組での活動を模索する必要があります。これは例えると、「失業保険のない失業」に近い状況かと思われます。 (◎次のセクションで図示します)
(3) 【図解】劇団・ユニットの解散 or 休止の際の、影響度の違い
(4) 自らの活動に対し、自らマネジメントする意識が(今以上に)必要では
◇前セクションまでに記載のとおり、活動のバックアップとして制作会社・マネジメント会社がある/なしでは、業界全体の維持・成長にとって少なからぬ違いがあることを認識・もしくは再認識いただけたかと思っております。
◇では、演劇活動する中で小劇場界全体の成長もおそろかにしない、業界を減退させない活動とはいかにあるべきでしょうか。それは、すでに実践中の方々もおられるかと思いますが、商業演劇のような大きい制作会社・マネジメント会社がなくとも、自らで自らをプロデュース/マネジメントする意識・姿勢が必要であると当プロジェクトは考えます。
◇一見、大きな制作会社・マネジメント会社がなく座組や役者自らでプロデュース/マネジメントするとなると、何やら零細企業がぎりぎりで経営しているかのようなイメージを持たれるかもしれません。しかし実は、この状況を大きな強みとすることができ、小劇場界には成功事例が複数あります。次ページにて代表例を2つほど表形式でご紹介・ご説明します。
(5) 小劇場演劇の創作結果・手法が演劇界全体にインパクトを与えた事例
(6) 小劇場は商業演劇に進むための「前段階」ではない (独自性を活かせる)
◇前セクションでごく抜粋的に、小劇場界の脚本・演出などの創作結果が商業演劇に取り入れられる等、小劇場系作品が演劇界全体に与えるインパクトについて紹介しました。ずばり言及しますが、小劇場は、商業演劇に進むための「前段階」や「登竜門」ではなく、独自の価値をしかと持った演劇界の一角であることは間違いないと思っています。
◇上記のような小劇場界だけがもちうる独自性、価値を再認識・再発見することは、いつおこなっても有用有益だと考えます。再認識・再発見することで、小劇場界という立地から小劇場演劇を創る事の強みが浮かびあってくるものと信じています。
◇少し具体的なお話を最後に付記しますと、そうは言っても小劇場界は制作会社・マネジメント会社の存在の薄さが否めず、その点が小劇場演劇活動のいわば「経営」を苦しいものにしがちです。それゆえ、業界全体をカバーする、小劇場界独自の制作団体的存在が必要ではと思料しています。これについては、別の発信でまとめる予定です。