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可愛いに選ばれなかった呪い1

私は他の人より少しだけ身長が高い
モデルほど高いわけではない。とても絶妙に少しだけ高い。

小学生の時はとても、誇らしかった。
背の順に並んだ時に後ろにいるのは、大人に近い気がしたから
大人に早くなれる気がした。

中学生の時、誇らしかった身長が嫌だった。
背筋を伸ばすことが怖かった。周りの子が鬼ごっこやかくれんぼをしなくなったことが寂しかった。
女の子から女になっていくのが怖かった。
身長はまだ高い方だったが、誇らしさはもうなく可愛い小さい女の子たちを見て少し恥ずかしかった。


放課後、男子はどの子が可愛いか、どの子が好きか、アリかナシか
話すことが増えた。
その会話に自分の名前が出ていないかビクビクしていた。
入っていないことに安堵して少しがっかりした。

女になることを嫌がったくせに、私は女として見てもらいたかった自分がなんだか卑しく感じた。

会話の中では外見の話になっていて

「ロングヘアの方が可愛いよな」
「俺は胸が大きい方が大事だな〜」
「断然ちっちゃい子だろ、自分よりでかい奴は無理だな」

些細な会話、悪気のない、思春期の少し背伸びをした会話だったのかもしれない
だけど、私はそこから除外されてる存在なんだと理解した。

「自分よりでかい奴はナシ」 
「可愛げないし」
「女として見れない」

誇らしかった身長はいつしか自分の足枷になっていた。
自分は可愛い女にはなれないんだと、足も大きくて肩幅も広くて
服のサイズはどんどん普通から外れていく。
それでも、心のどこかで「そんなことはない」「私にはまだチャンスがある」
「まだ可愛いって思ってもらえるチャンスがあるはず…」

小さい小さい希望で自我を保つのが精一杯だった。
だけど希望は小さすぎて、私が現実を痛感するのはすぐだった。

家族と出先で見つけたギンガムチェックのワンピース
Aラインのふわっとした裾が可愛いくて、どうしても欲しくて母親にねだった。
母親は呆れながら「一度試着してみなさい、それから考えなさい」と言い私を試着室に連れて行った。

胸を躍らせながら、試着する。

最後にファスナーを上げる時、ファスナーが上がらなかった。

何度も気のせいだと思って腕を回しながら、何度も何度も上げようとしたけど
上がらなかった。母親を呼ぶことはできなかった。自分があまりにも滑稽で虚しかったから。

「あぁ…私は可愛くなれないんだ」

気づいたら試着室で声を殺しながら泣いていた。

たかがワンピース1着、でもその1着が全てだった。

泣かれたことをバレないように顔を拭いて服を着替えて試着室をでた。

「私にはちょっと合わないかもー」

そんな苦しい言い訳をしながら、お店を出て家に帰った。

私は可愛くなれない。何をしても無駄。

私は可愛いに選ばれなかった。

何度も自分で呪文のように唱えてた。

呪文は次第に私の背中を丸くし、前髪は顔を隠すように長くなった。

そんな中学時代私を変えてくれたのは、またしても洋服だった。


続きはまたどこかで。
久しぶりに思い出しながら書いたら、古い傷跡がじんじんする。
痛くないはずなのに痛みを感じるのはまだ少し「可愛い」に囚われてるのかな。

背が高いのいいねって言ってもらえることが多い、ありがたいですね。
今なら受け入れられる。

だけどね私だって好き人の胸に顔をうずめたかった、頭を撫でられたかった。

抱きしめられた時にすっぽりと収まりたかったよ。

可愛いって言われたかった。

ないものねだりだけど、私はあなたがすごく羨ましい。

うに





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