【単語リクエスト③】色×ラマ
家に帰るやいなや、お帰りの挨拶もそこそこに、旦那がものすごい勢いで私の元に駆け寄ってきた。そして、にこにこしながらおもむろに自分のシャツをめくりあげた。
何事、と驚く私をよそ目に、彼は一層にこにこしながらお腹を指さした。
つられてお腹を見ると、毛糸で編まれたおちゃめなラマがびっくりしたようにこちらを見ている。
「見て!ラマのはらまき!らまの、は、ら、ま、き!」
旦那お得意のダジャレが飛び出した。普段だったら、寒い!と一蹴するところだが、してやったりというような彼の顔が面白くてついつい吹き出してしまった。
あまりに笑いすぎて涙が出てきた。笑いながら気がついた。
あぁ、なんて優しい人だ。
仕事で、上司のミスを理不尽に責められ、悔し泣きして帰って来たことなんかこれっぽっちも言ってないのに。駅のトイレで、腫れた目を化粧で誤魔化してきたのに。
涙が止まらなくなった私を、お疲れ様、と抱きしめてくれた彼の腕の中で泣いた。思う存分泣いた。
___その夜、私は旦那のお腹の上でくつろぐラマを撫でながら寝た。ありがとう、キミのおかげで今日は、灰色じゃなく、色のついたカラフルな夢を見られるに違いない。
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