【どこよりも詳しい】東京六大学野球連盟所属の2023年ドラフト候補~投手編~
こんにちは、シュバルベですᕙ( ˙-˙ )ᕗ
今回のnoteでは、明日から開幕する東京六大学野球連盟所属の今年のドラフト候補を紹介していこうと思います。まずは投手編。野手はなかなか書き終わらないので秋の開幕前に上げようかと思います笑。
1.過去の事例からNPB指名を勝ち取る指標を考える
昨年、東京六大学野球連盟からダイレクトにNPB入りを果たした投手は2人。
立教大学の荘司康誠投手(楽天1位)と橋本達弥投手(DeNA5位)です。
ともに3年生から台頭した選手で勝ち星には恵まれなかった(2人とも通算2勝ずつ)ですが、荘司投手は高いポテンシャル込みで1位評価、橋本投手は即戦力のリリーフとしてそれぞれ指名を勝ち取りました。
直近5年間で東京六大学野球連盟からNPB指名を受けた投手は18名います。特に2020ドラフトでは単年で8名が指名され、そのうちの4名がドラフト1位指名(早川隆久、入江大生、鈴木昭汰、木澤尚文の4投手)されるというエポックメイキングなシーズンもありました。
18名の成績はこちら。
かつては「ハンカチ王子」こと斎藤佑樹投手や、現広島の野村祐輔投手のような30勝以上を挙げる投手もいましたが、近年は勝ち星の数はNPB指名において重要視されていません。
試合数・イニング数に関しても山下輝投手は18試合しか投げていませんがドラフト1位で指名されていますし、特に大学4年シーズンで一気に台頭して成績を伸ばす投手も多いためそこまで重きを置かれていません。
防御率も元々打低なこともあり自然と2点台の間に多くの投手が収まっていますが、野手の守備や運にも多く左右されるためそこまで重視されていないでしょう。
明らかに傾向が見えるのは、奪三振率(K%)と奪三振率ー与四球率(K-BB%)です。
18選手中、16選手が20K%を超えており、残る2選手も19K%台。三振を取る能力に秀でた投手は当然ですがプロからの需要の高い項目となっています。
K-BB%に関しては15選手が10%以上。
当然の帰結でもあるのですが、簡単に言うと「三振が多く取れる投手であることが最重要。さらに与四球が少なければなお良い。」というのがプロからの評価目線でしょう。
こちらを念頭に今年ドラフトイヤーを迎える投手10名を紹介していきたいと思います。
2.2023年のドラフト候補
本題となる、今年のドラフト候補を紹介していきましょう。
俎上に乗ってきそうな投手の成績を抜粋してみたのがこちら。
現時点では20K%を超えているのは3投手、K-BB%が2桁台なのは2投手です。
以下、さらに詳細を書いていく投手が6名。明治大学から蒔田投手、村田投手、石原投手。早稲田大学から加藤投手。立教大学から池田投手、法政大学から尾﨑投手です。
▸”柳二世”蒔田稔投手(明治大学)
明治大学は2022年春秋連覇を達成しましたが、春季リーグの投手の立役者はこの蒔田稔投手(九州学院④)でしょう。
通算19試合99イニング3完投。6勝4敗と2つ貯金を作り防御率は2.82。奪三振率は21.3K%でプロ入りの基準となる20K%を超えており、与四球率との差分もK-BB%が12.4%と2桁台をマークしています。
初登板は2年生の秋季リーグ。当初はリリーフでの登板でしたが、2021年10月26日の”血の明法戦”で初先発すると7回無失点(勝敗つかず)。
3年春は開幕投手を任され東大相手に6回1失点12奪三振の快投を見せると、春季リーグだけで9試合61.2イニングを投げ4勝。防御率1.90でベストナインにも選ばれました。
6月の大学野球日本選手権で打球直撃し負傷降板してしまうと、秋季リーグは調子を取り戻せず(6試合3先発で2勝2敗、防御率4.61)、主戦投手も同級生の村田賢一投手に譲る形となってしまいました。
明治大学の先輩である柳裕也投手(中日ドラゴンズ)に似たフォームで、ワインドアップ×ヒールアップからゆったりと始動し、一気に並進で加速をつけて力強いボールを投げ込みます。
スタッツ的には現時点で十分プロ入りの可能性が高く、ラストシーズンでは健康に1年間先発として投げ抜くことが求められます。
▸”明大のマダックス”村田賢一投手(明治大学)
22年秋の明治大学優勝、そして神宮大会制覇の立役者となったのが村田賢一投手(春日部共栄④)です。
1年生の秋季リーグにリーグ戦初登板を果たすと、2年生の秋からリリーバーとして安定した投球を披露。昨年は春・秋とも主に先発投手として1年間投げ抜きました。
通算9勝は現役トップ、3年間で貯金を8個作る「勝てるピッチャー」で、その原動力となっているのは高い制球力です。
与四球率5.6BB%は直近5年間でプロ入りした投手の誰よりも低く、ツーシーム/カットボールの小さく動く変化球や、独特な軌道を描くシンカー系統のボールで多くのゴロを築きます。
この投球スタイルから1イニング当たりの球数を少なく抑えることができ、22年9月5日の早大戦では9回93球完封勝利。100球以内での9イニング完投で”マダックス”(※MLB通算355勝の大投手で『精密機械』の異名を誇ったグレッグ・マダックス投手からもじった野球用語)を果たしました。
村田投手自身「マダックス投手が大好きなので目指していました。9回100球以内で終わらせるのはひとつの目標にしていた」とも話しています。
一方、奪三振率13.1K%はプロ入りをゴールとするならば物足りないスタッツで、確かに投球スタイルとしてもストレートのアベレージは140km/h台前半。球速についてはこのオフでのボリュームアップを課題としているとのこと。
22年秋の神宮大会では2試合に先発し、11月20日関西大学戦で9回1失点完投勝利、決勝戦となった11月24日國學院大学戦で9回無失点完封勝利。大舞台に強く、優れたフィールディングで自らピンチの芽を摘むなど実戦的な投手という点はプロからも重宝されるでしょう。
ラストシーズンに関してはやはり平均球速を140km/h台中盤に乗せることがプロ入りには求められます。最速152km/h、アベレージ144km/hぐらいまでビルドアップできた上で現状と同じくらいの制球力をキープできればドラフト1位というところまで視野に入るでしょう。
▸”和製モイネロ”石原勇輝投手(明治大学)
強力な左のリリーバーとして背番号1を背負いチームを支えたのが石原勇輝投手(広陵④)です。
村田投手同様、1年生の秋にリーグ戦初登板を経験。3年間17登板25イニングはすべてリリーフ登板で、実績はまだ少ないですが3年秋に覚醒を果たします。
ストレートはアベレージで140km/h台後半をマーク。大きな縦割れのカーブはゾーンの中でも外でも勝負できるボールで、緩急差も大きなマネーピッチとなっています。
奪三振率は26.2K%と非常に高く、過去にNPB入りした投手と比べても上位に位置しています。与四球率は10%を超えていますが、高い奪三振率が牽引することで差分は10%を大きく上回っています。
制球面も改善が見られ、3年春まで13イニング9四球だったのが、3年秋は12イニング3四球。身体が出来るとともにフォームが安定し、マウンドでしっかりと立つことができるようになったなと感じました。
投球スタイルの完成形としては現ソフトバンクのリバン・モイネロ投手が浮かび、中継ぎとして高い馬力を発揮していければ良いなと思います。広陵時代の同級生である河野佳投手が22年に広島カープからドラフト指名されたことも刺激になっているのではないでしょうか。
投球フォームとしてはダイナミックで、腕を一度上げてからセットポジションに入るルーティンを採用し、身体を大きく使ってややスリーク気味のアームアングルでボールを投げ込みます。
▸”東浜二世”加藤孝太郎投手(早稲田大学)
長くプロの世界で活躍し、近年では早川隆久投手(2020年楽天1位)や徳山壮磨投手(2021年DeNA2位)をドラフト上位でプロに送り出してきた早稲田大学の現エースが加藤孝太郎投手(下妻一④)です。
2年生の春季リーグで初登板を踏むと、3年生で飛躍を果たし2季続けて防御率1点台。昨秋は38.1イニングを投げ防御率1.41で最優秀防御率のタイトルを手にしました。
ストレートの平均球速は140km/h台前半ながら変化球も含めて丁寧にコースを投げ分けるピッチングスタイルに磨きがかかり、さらに課題だったスタミナ面も克服したことで22年秋の5登板中4登板で7イニング以上を投げ切っています。
フォームとしてはエクステンションが大きく、ホームプレート寄りに上体を倒すようなフォームゆえ、神宮球場のマウンドのような他の球場に比べてマウンドが低く感じるような球場ではよりボールが有効に作用している印象を受けます。また、腕が他の選手に比べて長いという印象を受け、幅広のステップ×生まれ持った長いアームは現ソフトバンクの東浜巨投手を彷彿とさせます。
クイックモーションや牽制、さらにフィールディングは現役生の中でトップクラスに上手く、盗塁数でリーグトップの東京大学のランナーでもスタートが切れない投手で、バントの処理などはNPBの投手に混ぜても上位に入ると言って良いでしょう。
早稲田スポーツ新聞会のインタビューでは、自身のピッチングについて頭脳派らしいコメントを残しています。。
スタッツとしてはK%-BB%の差分は9.9%と2ケタ台に近いものの、やはり奪三振率16.9K%が他のNPB入りした投手と比べると見劣りしてしまいます。同じインタビュー内でプロ入りについて聞かれており、加藤投手は次のように答えています。
明治大学の村田投手と同じ課題感で、やはりボールの強さ、球速というところにこのオフでは注力してくることが想定されます。
また、早慶戦や昨夏の六大学オールスターや晩秋のオール早慶戦など、多くの観衆の耳目が集まる場面で本来の制球力を発揮できないケースが見られるので、あと1年でより緊迫した試合を経験し、特に早慶戦で力を出し切れるようになれると更に一段上の投手になっていくでしょう。
▸”新座の黒田博樹”池田陽佑投手(立教大学)
昨年のドラフトでは2球団競合となった荘司康誠投手(楽天1位)を輩出した立教大学で、今年の主戦投手になるのが池田陽佑投手(智辯和歌山④)です。
智辯和歌山高校時代にはU18代表に選出されたように早くから名前の知れた投手で、昨年11月の日本代表候補合宿にも選出され同世代の投手と研鑽に励んでいます。
初登板は1年生の春季リーグで、2年生の春~秋にかけてはなんと13先発。現役生の中で最多となる30登板117イニングを消化しています。2年時の無理も祟って22年春季リーグの出場試合で腰を痛め2登板に留まりましたが、秋に戻ってくると1完封を含む7登板5先発で防御率2.23。
なにより投げているボールの質が2年時よりもレベルアップしており、ストレートは試合の後半になっても140km/h台中盤を記録。183cm/92kgという堂々たる体躯を誇り、代表候補合宿では150km/hを計測するなど現実的な伸びしろを感じさせます。
カットボール・ツーシームの両サイドに落ち曲がるボールを得意としていることもありスタッツ的には奪三振率が13.3K%と低く、与四球率6.9BB%が優秀なもののその差分は6.3%。
プロ入りという観点ではやはり強いファストボールで三振をもっと取れるようになることが求められます。好投を見せた22年秋季リーグでも44イニングで27奪三振に留まっており、このオフの間にどこまでジャンプアップ出来ているか楽しみです。
溝口監督も今年は「池田にエースとして引っ張ってもらいたい。1カード1勝で最低5勝」(2023年1月16日付サンスポ)と期待をかけており、その運用には若干の不安も禁じ得ないのですが、高校時代から世代を牽引してきた投手として迎えるラストイヤーは力を出し切って欲しいですね。
▸”法大の高橋奎二”尾﨑完太投手(法政大学)
法政大学の左のエースとして高い奪三振能力を誇るのが尾﨑完太投手(滋賀学園④)です。
1年生の春季リーグからリーグ戦を経験しており、当時は足を高く上げるダイナミックなピッチングフォームで入団したころの高橋奎二投手(ヤクルトスワローズ)を彷彿とさせました。現在はゆったりとした二段モーションから始動し、綺麗な「くの字ステップ」が特徴的な投手となっています。
スタッツとしては奪三振率23.9K%とNPB入りした投手とそん色のない高い奪三振能力を有している一方、与四球率15.1BB%と制球面でやや難を抱えています。22年秋は8先発を果たしましたが、38イニングで37三振を奪うも23四死球を出しており課題の克服には至っていません。
しかし、尾﨑投手の奪三振能力は非常に魅力的で、本人も「自分の魅力というのは、三振を取れるところだと思ってるので、奪三振が多いところを見てもらいたいです。」(2022年6月9日付スポーツ法政)と語るように、自らストロングポイントとして認識をしています。
ストレートは常時140km/h台前半で、主要な変化球には縦割れの大きなカーブとチェンジアップがあり、緩急と落差で空振りを多く築いていきます。短いイニングでは出力を上げて140km/h台後半を叩くことは既に出来ているので、先発として長いイニングを見据えた中でも一段ボリュームアップすることが今年の課題になってくるでしょう。
始動が大きな分、フォームの再現性を高められるかという点も今年の課題になってきますが、身体の柔らかさなど随所に天井の高さを感じさせ、11月の日本代表候補合宿にも選出されました。
NPB志向は高く、次のように話しています。
かつて大きく足を上げるフォームで話題を攫った高橋奎二投手も腰の負担などを鑑みて今のフォームに修正し、体幹を強化することで常時140km/h後半のストレートで圧倒し三振を奪っていくピッチングを武器にWBC日本代表に選ばれるまでになりました。
尾﨑投手も今のフォームは高橋投手のそれとは異なりますが、武器にするものは近しいものがあると思っています。
3.さいごに
さて、今回6名の投手を抜粋して紹介しました。明治大学から3人と偏ってはいますが、これまでのスタッツ的にやはり目立っていますよね。
ラストイヤーで一気にアピールする選手もきっと出てくると思うので、秋が始まる頃には顔ぶれが変わっている可能性も勿論あります。一冬越して、もともとポテンシャルの高かった投手がどこまで天井を伸ばしているか非常に楽しみですね。
全員が健康でシーズン怪我無く完走すればきっと次のステージがあるはず。頑張ってください!