十二月前半集/短歌二十九首
早まるなそこにわたしはいないしさ竜宮なんてものもないから
/拙作『タブラ・ラサには戻れない』によせて
永遠を求めたところで叶わぬとおのれの性を知ってのことです
ひと月の過ぎたるを矢のはやさだと喩うは多事も怠惰も同じ
手を組んで祈りを愛と呼ぶひとも とかくこの世はみないき難し
読み物を愛して時を徒らに過ぐひと曰く、時とは字だと
ひと文字に五つをつめて「恣」 あなたに咲んだ夢のあとさき
あとにすぐ続く心で「恣」 ワンクッションを置いているのか
アホアホと漫画のように鳴くカラス初めて聴いた二十歳の初冬
腹音をカミナリ様と呼びなぜか臍を隠した幼子の朝
いい靴の条件を傷前提で履いてはひとつ積み上げる生
読み物を愛しうつつの実よりも文字の海中えらぶその性
人間を「ひと」と呼ばずに「人間」というひとはただそこに立ってる
星をみるようにあなたをみています逃さぬように目を見開いて
「護るよ」と昔誓った弟と同じ名をもつキミに出逢った
「護るよ」と約束をした弟と同じ名をもつキミに出逢った
/拙作『真夜中のパ・ド・ドゥ』寒凪椎楽
気が付くといつも冷たい指先はおなじになれないようでさみしい
選択を面倒がって一足を履き倒すからそこが見えるの
流灯の物悲しさはたましいと見てか行く末考えてか
神さまは人の心のなかにいる みえないものは大抵そうです
神さまはきっとあのひとそこのひと わたし以外はみなひとでなし
あなたからふわりと過ぎる炭の香は清潔感ともしや言えたり
なきあとののこる目尻とその頬のやわさいとしさ ことばにならぬ
雨降りを知って知らずか入れたままいつかの傘にすくわれる帰路
/雨降りを知って知らずか入れたままいつかの傘にすくわれる夜
いつもより一本早いだけなのに世界が変わって見えた境い目
/『通学電車』
手遊びでやっていたこと褒められて嬉しいけれど気まずくもあり
なにくれと「可憐」について考えてひとの堕落へたどり着く今日
素馨から「可憐」へ飛んで『堕落論』 あわれむべきの意を考える
やることはたくさんあってやばいのになぜかトップに余事が立ってる
見上げると壁に小さなバッタ色 そっと隣へ逃げ出した秋
突然のバッタにそっと見なかったふりしてぼくが逃げ出しました
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