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スペイン黄金時代の圧巻の世界遺産、エル・エスコリアル修道院
マドリード市から50キロのところに位置するサン・ロレンソ・デ・エル・エスコリアル(San Lorenzo de El Escorial)にある サン・ロレンソ・デ・エル・エスコリアル修道院王室御用邸(Monasterio y Real Sitio de San Lorenzo de El Escorial)。1984年にユネスコの世界遺産に登録されています。
マドリードの王宮に行こうかどこに行こうか迷っていて、調べてみるとこのエルエスコリアル修道院が良さそうだったので行ってみることにしました。王宮は他の国でも色々行っているので何かもっと面白そうなところが良いと思い決めた小旅行。これが感動の嵐でした。
エル・エスコリアル修道院までの道のり
マドリードからエル・エスコリアルまではバスが一番便利ということ。ただ、バスが発着するMoncloaまで行くのが分かりにくそう。電車を調べるとどうやらアトーチャ駅からほぼ毎時直通電車がでているらしい。ネットのガイドには書いていなかったのですが、国鉄RENFEの順路検索で出てくるので間違いないと思い、アトーチャ駅から近郊電車CercaniasのC2ラインで行くことにしました。グーグルマップでも出てこないルートで、最近できたルートなのかもしれません。
所要時間1時間強。マドリードを出ると辺りは何もなくどこまでも森が続きます。
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駅を出てすぐ緑豊かなエリアで、Casita del Príncipe公園の広い敷地が現れますが、朝早かったためまだ閉まっていました。仕方ないので公園の横の坂道を修道院に向けて登っていきます。
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緑が気持ち良く徒歩20分弱で到着です。
その大きさにびっくり!
歩いていると突如現れる修道院の裏側。
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エル・エスコリアル修道院は、1563年から1584にかけてフィリペ2世によって建設された修道院で、世界最大のルネッサンス様式の建物。 スペイン王室の所有で、修道院としてだけでなく、聖堂、王宮、霊廟、図書館、博物館、大学、病院などとしても使われています。
正面には山がそびえ、修道院を囲む広場の回りには修道院と同じ石で作られた建物がぐるっと囲み統一感があります。
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角から見るとその規模の大きさに圧倒されます。イタリアで活躍し、バチカンのサン・ピエトロ寺院の建築に携わったというスペイン人建築家、Juan Bautista de Toledoの設計だそう。
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聖堂がある正面入口。開館時間まで1時間ほどぐるっと回ったり写真を撮ったり、ほぼ誰もおらず一人占めできました。
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修道院の内部へ
開館時間時点で待っていたのはわずか数人だったのでほぼ貸し切り状態で見学することができました。いつもながら、それほどリサーチをしたわけではないので、実際何があるかよくわからず見学スタート。自由見学で順路に沿って歩いていきます。
この修道院を建設したフェリペ2世はスペインがポルトガル、イタリアの一部、オランダ、フィリピン、アメリカ大陸の植民地などを広く支配していたときに君臨した「日の沈まない国」と呼ばれていたスペイン黄金時代の王。敬虔なカトリックであったフェリペ2世は、アメリカ大陸の植民地で採掘した銀などを財源にこの巨大プロジェクトに力を注いだそうです。
豪華絢爛な王室図書館
まず最初は王室図書館。イタリア人画家、ペッレグリーノ・ティバルディが1586年から1592年にかけて描いたというフレスコ画が圧巻です。
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40万もの書物が保存されているとのこと。16世紀からの本がずらりと並びどれも歴史がありそうな装丁。
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最初から圧倒されました。
フレスコであふれる回廊
回廊にはフレスコ画の数々。中庭は噴水などがあるらしいのですが、工事中か全てふさがれていて見ることができませんでした。
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イタリア人画家、ルカ・ジョルダーノが17世紀に手掛けたフレスコ画だそうで、特に階段の吹き抜けの天井に描かれたフレスコ画が見事。吸い込まれそうです。
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エル・グレコの幻の絵画がある僧侶の会議室
修道院の僧侶の会議が行われていたという部屋。様々な絵画が掲げられています。
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天井のフレスコ画も素晴らしいです。
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こちらも。
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エル・グレコによる「聖マウリティウスの殉教」がありました。フェリペ2世が本来聖堂の祭壇に掲げられる目的でエル・グレコに依頼したもの。ところが作品を見たフェリペ2世は祭壇画として相応しくないとして聖堂に飾られることはなかったそう。
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エル・グレコはこの絵を描いて宮廷画家を目指していたとのことですが、王に気に入られず夢は叶いませんでした。
厳かな王室の霊廟
部屋を移動すると急に薄暗くなり、突如として現れた王子や王女、王となった子を持っていない王妃の霊廟。
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他に誰もビジターがいなかったのでちょっと怖かったです。立派な守衛の彫刻がロイヤルファミリーを守っています。
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見事な棺に本物の剣が飾られています。
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兄弟だったり、親戚の棺が並んでいる部屋がいくつもありました。
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この霊廟は聖堂の真下にあるそうですが、半地下なので自然の光が入ってきます。
この先は撮影禁止の歴代王の霊廟で、階段を降り円形の部屋に入るとフェリペ2世の父、カルロス1世から現国王の3代目前の王までほとんどの王と王となった子を持つ王妃の棺が安置されています。
黒っぽい大理石とブロンズの装飾が輝きとにかく重厚でその光景が今でも目に焼き付いています。そもそも王の霊廟があることすら知らなかったので、16世紀からのほぼすべての国王がここに安置されていると考えると、凄いところに来てしまった!と思わずにはいられず、感動の嵐でした。写真はネットで見つかりますが、これは是非実際に見てほしいのであえて掲載しません。
中世の雰囲気のハプスブルグ朝宮殿
霊廟の後は、1700年まで続いたハプスブルグ朝の王家が住んでいた宮殿です。フェリペ2世はここに1586から住んでいたそうで、華美な装飾はなく落ち着いた雰囲気。
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素晴らしい絵画の数々。ラファエロなどの著名な画家の絵が普通に飾られています。
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ベッドルームはもそれほど大きくなく比較的慎ましいです。
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そして、オランダ人画家、ヒエロニムス・ボッシュの絵画がありました。
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マドリードのプラド美術館にある彼の大作「快楽の園」と似たテーマのよう。
「快楽の園」はもともとはフィリペ2世のコレクションで1939年まではこの修道院にあったそうなので、以前は一緒に飾られていたのかもしれません。
永遠と続く戦いの間
ハプスブルグ朝宮殿にある戦いの間と呼ばれる長い廊下。イタリア、ジェノヴァの画家たちが1590年くらいに描いたフレスコ画が一面!
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15世紀から16世紀にかけての戦争のいくつかの場面が描かれているそうです。
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55mもある長い廊下にびっしり描かれています。
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煌びやかなブルボン朝宮殿
1700年にハプスブルグ朝からフランスがルーツのブルボン朝へと王朝が変わっても、王たちは毎年秋にこの修道院を訪れたそうです。カルロス3世がブルボン朝に相応しい宮殿に改装をし、フランスの雰囲気に生まれ変わりました。
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タペストリーが壁という壁を覆いつくし豪華絢爛です。
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家具は主に18世紀から19世紀のものだそう。
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ハプスブルグ朝宮殿と全く違う雰囲気で、同じ修道院内の敷地にあるとは信じがたいです。
厳かな建築と華やかなフレスコ画が交りあった聖堂
最後は正面入口前の中庭を挟んで位置する聖堂。
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外から見るよりも天井が高く見えます。
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イタリア人画家、ルカ・カンビアーゾのフレスコ。
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イタリア人画家、ペッレグリーノ・ティバルディとフェデリコ・ツッカリが描いた祭壇の絵。
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ドームはバチカンのサンピエトロ寺院を模したそう。
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華やかな天井のフレスコ画と祭壇以外は重厚で厳かな雰囲気でした。
緑が気持ち良い中庭
修道院内部を見学したあとは、庭園を訪れます。こちらは拝観料なしに誰でも入れます。
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庭園は修道院の二面を囲っています。
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綺麗に手入れがされていて気持ちが良いです。
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山と牛が放牧されている平地に囲まれとてものどか。
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遠くにマドリードのビル群も見えます。
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少し離れた通りから写真を撮ると良くネット上の写真で見る景色です。
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建物は外観も内部もイタリア・ルネサンスの集大成でとにかくそのスケールに圧倒され、しばらく興奮状態でした。いろいろ訪れたスペインの世界遺産の中でもかなりおすすめです。
次回はサン・ロレンソ・デ・エル・エスコリアルの町を歩きます。