カーニバルのフィナーレ、スペインのイワシの埋葬
今年の2月14日のバレンタイン・デーはキリスト教で灰の水曜日と呼ばれる日でした。灰の水曜日から復活祭(イースター)までの40日間を受難節又は四旬節と言い、復活祭に備えてカトリックの信者が断食とざんげを行います。受難節前のお祭りであるカーニバル(謝肉祭)を締めくくる最後のイベントがこの灰の水曜日に行われます。
カーニバル開催中には様々なパレードや行事が行われます。過去に行ったカーニバルの行事はこちら。
スペインで行われるイワシの埋葬とは?
スペインでは、Entierro de la Sardina、日本語で「イワシの埋葬」と呼ばれるパレードが灰の水曜日に行われます。このパレードは1850年に頃からスペイン全土で行われているそうで、その起源は諸説あるよう。
その一つが、スペイン王カルロス三世にまつわる説。18世紀にカルロス三世が受難節の前に王に遣える者たちに大量のイワシを届けたそう。ところが到着したイワシは腐ってしまっていて、悪臭のするイワシをどうするかということで議論され、結局埋めてしまおうということになったそう。後にそれをそのままパレードにしてしまったというのが一つの説。
そしてもう一つが、19世紀にマドリードの学生グループが、カーニバルのお祭りを再現するために、精進と断食を象徴するイワシを中心にした祝いを行うことにしたことが始まりという説。
腐ったイワシの方を信じたいですが、どちらの説が真実であっても、イワシの埋葬というちょっと変わったパレード。イワシの葬式の行列を模し、最後にイワシを焼いて埋葬するそうです。これはイワシが死に、また生まれ変わるというストーリーラインがあるそう。社会の過去を葬り、新たに生まれ変わるという意味が含まれているのだとか。
イワシの埋葬を見にバルセロナ郊外へ!
イワシの埋葬が以前から気になっていたので今年はイワシの埋葬を見に行くことにしました。カーニバルはスペインの多くの町で開催され、バルセロナ市内でも行われるのですが、規模がより大きく以前メインのパレードを見に行ったシッチェス(Sitges)のイワシの埋葬を見に行くことにしました。
シッチェスではイワシの埋葬はEntierro de S.M. Carnestoltes Iといい、イワシではなく、「カーニバルの王様の埋葬」と呼ばれています。
観客も仮装して楽しむのがスペインらしい
パレード開始の30分前くらいに到着しましたが、当初空いていた通りも時間が近くなるとどんどん人が増えてきました。所々、黒い喪服を模したものを着たドラァグの人たちがいます。
最初はパレード(葬儀)の参列者だと思ったのですが、観客でした。女性陣も。
シッチェスはゲイ・リゾートとして知られている故の多くのドラァグに仮装した人々。
大抵、写真を撮ろうとすると立ち止まってくれます。
大勢の観客の中パレードの開始
パレードの時間になるとこのとおりの賑わい。
まずはカーニバルの衣装を着た人々。暗い音楽とともに悲しい顔をしています。
スーパーヒーローも悲しそう。
次々と仮装をした人々がやってきます。
そして喪服を着た人々の列。
カーニバルの王様がベッドに寝てやってきました。病気で寝込んでいるよう。
パレード参加者もドラァグ。右下の人がやけに大げさに泣いています。
山車は3台ほどとそう多くはありません。メインのパレードの使いまわしのよう。
カーニバルの王様が生まれ変わる瞬間
海岸沿いのステージにやってきました。シッチェスのシンボルの教会がキレイです。
パレード参列者がステージに上がります。
カーニバルの王様が壇上に上がり息絶えると…
生まれ変わったカーニバルの王様が出現。
イワシの張り子を燃やすところも多いようですが、こちらは花火でした。
カーニバルの王様が生まれ変わった後は、またパレード。
アジアっぽい山車。
と思ったら、神社をモチーフにした山車で、「カーニバル万歳」と書いてあります。
キリスト教のお祝いなのに神道は果たして良いのかと疑問に思いました。いろいろ漢字やカタカナで「キス」「山魚父母子」など書かれています。これも恐らくメインのパレードで使った山車なのでしょう。
これでパレードは終了です。シッチェスはゲイ・リゾートなので、恐らくほかの町と比べるとドラァグの人々がいたりと変わったイワシの埋葬なのだと思います。唯一の残念がイワシが出てこなかったこと。バルセロナ市を含め多くの町ではイワシが出てくるようです。
メインのパレードのような派手さはないものの、スペイン文化を学ぶ良い機会でした。