悪には悪のパワーソングがある。時に毒をあおって生き残れ。
007シリーズと言えばメインタイトル
娯楽映画のメインタイトルや挿入歌、たいてい主人公をテーマに作られてます。
「007シリーズ」になると、「私を愛したスパイ」や「オクトパシー」など、ヒロインを題材としたものがあります。
歌詞の視点はいくつかあって、「あなたにメロメロなの」と恋に落ちるメインヒロインの心情や、
「トゥモロー・ネバー・ダイ」のように、劇中で殺されてしまう元カノの視点から、遺書のように歌う切ない歌詞のメインタイトルもあります。
一方、メインテーマで堂々と悪役を歌った曲もあるのです。
たとえば「ゴールドフィンガー」や「黄金銃を持つ男」では、ジェームズ・ボンドの視点から敵の冷徹さや手ごわさを歌詞で表現しています。
さらに、エンドタイトルや挿入歌まで目を向けると、悪役目線で自身の立場や心情を発露するような歌詞やメロディが効果的に使用され、むしろメインテーマよりもグッとくることがあったりします。
これからご紹介する2曲はいずれもねっとりとした音色がいやらしく響くホーンセクションが多用された悪のパワーソング。
「四方八方敵だらけ、騎兵隊の助けは間に合いそうもないが、しぶとく一矢報いるぜ」
なんてピンチの時こそ、毒をあおるが如く、頭の中でグルグル再生すると、悪のパワーで何かが降りてくるかもですよ。
Where Has Every Body Gone /The Pretenders
この曲は「リビング・デイライツ」の挿入歌。
闇の武器商人ブラッド・ウィティカーに雇われた、KGB上がりの暗殺者ネクロス。ボンドの上司であるMの私邸へ牛乳配達員に扮して潜入します。
その時、彼が聴いているヘッドホンからシャカシャカ漏れ聞こえるのがこの曲。
やがて、それをアレンジしたBGMに変わり、ガス漏れ事故を装いながら、牛乳ビン爆弾を派手にバラまき、手際よく護衛のシークレットサービスを片付けてゆきます。
ボンドが苦労して拉致したソ連の将軍を鮮やかに目前で奪還してしまう敵ながらアッパレなシーンですね。
「みんなどこにいったの、時間がないの、わたし孤独なのに」
無表情で敵を葬り去る暗殺者の狂気が歌詞ににじみ出ています。
Surrender / K.D. Lang
こちらは「トゥモロー・ネバー・ダイ」のエンドタイトル。
駆け出しの新聞記者から叩き上げ、ついには世界を牛耳るメディア王まで登りつめたエリオット・カーヴァーの視点で自らそしてトゥモロー紙を歌いあげます。
歌詞は新聞見出しを羅列したように、非常に読みやすいですね。さすがメディア王たるお気遣いです。
「おまえたち、ワタシが創造した世界におぼれるがいいさ」
そんな、中二病が抜けない悪の親玉ですが、歌の流れるタイミングがエンドタイトルなので、
「とりあえずワタシはジェームズ・ボンドに倒されたが、一旦燃え上がった野望の炎は消せやしないよ」
と、彼からの暗喩にも聴こえます。
「わたしのいうことは、全部ホントだよ。昨日、仕込んでおいたからね」
最後の捨てゼリフも不敵ですね。
ちなみにシェリル・クロウの本家メインテーマより曲調がふてぶてしく、この曲の方がボンド映画の世界観に合っている気がします。
声もシャーリー・バッシーに似てますし。