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大胸筋のすすめ


 大胸筋(Pectoralis Major)は、胸部の最表層にある強大な筋である。
 胸板を形成する強力な筋で、速筋線維の比率が、57~68%と言われている。
 腕を横から前に振る肩関節水平内転の主力筋であり、上腕を内向きに捻る内旋の働きもある。

1.大胸筋の付着と機能

2.走行

 各線維は起始部から外側に向かって収束し、交差して大結節稜(5~7㎝の幅)に停止する。  
 起始部が最も高位の鎖骨部線維が停止部では最も低位になり、起始部が最も低位の腹部線維が停止部では最も高位になる。
 この交差は、上腕を挙上するにつれて解けていき、徐々に3つの線維が平行になっていき、停止部の上下関係も起始部と同様に最も高位が鎖骨部線維となり、最も低位が腹部線維となる。

3.機能

 日常生活動作では、大きな者を胸の前で抱える動作などに働く。
 うつ伏せ状態から手をついて起き上がる動作など、腕を押し出す動きにも使われる。
 スポーツ動作では、野球のバッティングやピッチング、テニスのスイング。
 砲丸投げ・やり投げの投擲、体操の吊り輪などにも使われる。

4.運動作用

 大胸筋は、肩関節を水平内転・内転・屈曲・内旋作用がある。

⑴鎖骨部
  鎖骨部は上腕骨を屈曲し、上肢を固定すれば胸郭を引き上げる。
  鎖骨部線維は、3線維の中でも下前方に付着している。
  右肩関節下垂位における鎖骨部線維の走行は、起始部から見て8時の
 方向(約60°)にあたる。

⑵胸肋部
  肋部線維の停止は、上下方向・前後方向ともに真ん中に付着している。 
  右肩関節下垂位における肋部線維の走行は、右上腕骨を前面から見て起
 始部を時計の中心に見立てると、起始の最も上方にあたる胸骨柄が20時半
 の方向(75°)、真ん中付近の胸骨体が9時の方向(90°)、最も下方にあたる第6 
 肋軟骨が10時の方向(120°)になる。

  肩甲下筋の筋力トレーニングを行う際、胸肋部線維による代償運動が
 起きやすいので、対側の手で触診し、大胸筋に収縮が起きていないのを
 時折確認する。第5肋骨は腹直筋と胸部の筋膜の接着ポイントになるた 
 め、重点的に行う。

(3)腹部
  起始である腹直筋鞘は、腹直筋を包む腱膜組織由来の筋鞘という鞘で
 ある。腹直筋鞘には腹直筋の前にある前葉と後ろにある後葉の2種類が
 ある。
  前葉は、外腹斜筋腱膜と内腹斜筋腱膜の前部が融合してできていて、
 後葉は、内腹斜筋腱膜の後部と腹横筋腱膜が融合したものである。
  停止は、最上方かつ後方に停止し、右肩関節下垂位における線維走行
 は、起始部から見て11時の方向(150°)にあたる。

5.吸気機能

 深呼吸の採、大胸筋は胸肋部線維が胸骨を挙上し、胸腔内容量を増加させて、強制吸息筋としての作用がある。また、肩関節屈曲で作用効率が高まるため、深呼吸時に肩関節を180°付近まで屈曲させるのは、この機能を利用して、息を大きく吸い込むためである。

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