【POLA&unbot対談】2022年中国大型商戦「ダブルイレブン」を4つのポイントで振り返る
中国最大の商戦、「ダブルイレブン(W11、独身の日、双11)」は中国事業者にとっても年間最大の山場。2022年はどういった動きが起こり、どんなことが学べたのでしょうか。
中国市場での戦略立案から運用、物流倉庫、ECサイト運用、マーケティング施策など中国でのマーケティングを支援するunbotが11月25日に主催したセミナーでは、中国に駐在する「POLA」佐藤秀彦・電商部 経理をお招きし、今年のダブルイレブンの振り返りとともに、中国EC事業で注目すべき4つのポイントを解き明かしました。
◆登壇者
(右)佐藤秀彦・株式会社ポーラ 電商部 経理
2011年、ポーラ入社。日本国内のショップ経営をサポートするトータルビューティー事業部を経て2017年10月から中国駐在。天猫国際、天猫、京東、京東国際、抖音、抖音越境など複数プラットフォームで旗艦店の立ち上げ、企画、運用、戦略などEC事業全般をご担当。
(左)福積亮・株式会社unbot グローバル営業統括
2016年unbot入社。グローバル営業統括に加え、業務提携関連も管轄。Ant Financial Japan、Alibaba、Tencent、JD Global、抖音、TikTok Japanなど中国大手プラットフォームとの業務提携を担当。2020年10月にはLazadaグローバルパートナー締結を担当。
◆2022年ダブルイレブンを振り返り、新四天王とは?
福積亮・株式会社unbot グローバル営業統括(以下、福積):今年はプラットフォームからGMV(流通取引総額)が公開されませんでしたが、今年の傾向をどう見ていますか?
佐藤秀彦・株式会社ポーラ 電商部 経理(以下、佐藤):色々な調査会社のデータを見ていると天猫(Tmall)は横ばい、京東(JD.com)や抖音、快手、拼多多(Pinduoduo)は成長しているのではないでしょうか。。
福積:実際に今年のダブルイレブンに取り組んでいかがでしたか?
佐藤:当社は天猫、京東、抖音でダブルイレブンに参加しましたが、一部ECプラットフォームはプロモーション期間が短くなり、単純な前年比較が難しかったです。また物流まわりでは商品の確保が非常に難しいと思います。倉庫も混み合うため、9月までには入庫をしなければいけません。日本で製造している企業の場合は日本との調整や商品予測、商品登録などの日程を考慮しておかないと、プラットフォームのセールスケジュールに乗れないと思います。
福積:多くの企業が来年の「女王節(3月8日の国際女性デー期間)」の準備はもう進んで、「618商戦(6月)」や「ダブルイレブン商戦」の話まで進んでいますよね。今年のダブルイレブンの振り返りでは、特に特徴的だったポイントを4つ挙げました。
福積:新四天王の中でも、アウトドア市場はもうすぐ5兆円マーケットが見えていて、参入企業も増えていますね。バーチャルショッピングは、淘宝で「淘宝人生」と検索すると体験できるので皆さんもやってみてください。
◆ライブコマースは「どう位置付けるか」次第
福積:またライブコマースでは李佳琦(Austin Li)がタオバオライブに復帰し、初日の配信9時間で200億元を稼いだという噂もありました。その噂通りだと、ダブルイレブン期間のライブコマースの18%ほどを李佳琦だけで売っている計算ですね。佐藤さんは、ライブコマースの取り組みに関してはどう捉えていますか?
佐藤:ライブコマースはどう位置付けるか…目的、役割が重要だと思います。もし販売のチャンスと考えるのであれば利益確保のために値引き、特典交渉は必須で、キャンセル・返品率にも注視する必要があります。PRと考えるのであれば採算度外視で視聴数やアクティブ数を見たらいいと思います。
なので、一概に芸能人のライブだから、自店舗のライブだから良い悪いということではなく、何のために実施するのかという目的が重要です。弊社でも李佳琦さんに依頼したことがありますが、基本は自店舗でのライブ販売を重視しています。
福積:日本の方からすると、中国のライブコマースはイメージがつきにくいかもしれないですね。
佐藤:確かに日本側と話していると、ライブコマースは30分〜1時間の配信というイメージであることが多いです。しかし実際はもっと長く、当社商戦期(セール)では弊社8〜12時間、日常的にも4〜6時間配信することが多いです。
福積:信じられないですけれど、深夜はAIのバーチャルヒューマンが配信して、24時間やっている企業もありますよね。長時間のライブ配信は(販売チャネルという意味で)面を取るという点だけでなく、アルゴリズムの意味でも重要です。どの地域の人にどの商品をどれくらい販売できるか、また優良クリエイティブとは何かをアルゴリズムに学習させていく必要があります。
佐藤:アリババのアルゴリズムもかなりライブコマースに寄っているので、まだライブコマースの勢いは続くのではないでしょうか。
◆ダブルイレブン、ライバーの「その後」の戦略設計
福積:今年のダブルイレブンを受けて、今後どうしていくべきかというお話を佐藤さんとさせていただき、いくつもある中で3つに絞らせていただきました。一つ目がライバーGMVを瞬間最大風速で終わらせないこと。李佳琦だと、数分で2〜3万個とか販売してしまいますが、企業様が見過ごしがちなのがその後のことだと思います。
店舗へのトラフィック(流入)が増えればリターゲティング広告に回せたりするので、配信後にどう動き、どう刈り取るのかが一つ重要だと考えています。
二つ目がインタレストコマース(興味EC)への参入ですが、「ポーラ」さんも抖音に参入していますよね。
佐藤:元々SNSで成功しているプラットフォームにEC機能が追加されたので、視聴者数や流入の勢いがあるなと感じています。弊社の場合、少し前のデータですが、想定していたよりも天猫や京東と客層が重なっていませんでした。認知拡大、シェア拡大としては参入してよかったのかなと現時点では感じています。
福積:確かにそうですね。当社も抖音ECの支援を行っていますが、天猫の客層とは違う居住エリアだったり、ちょっとずれる印象があります。面を広げることで新客と接点を持って、購入まで引っ張れるということを感じています。
また商品戦略の構築ですね。プラットフォームごとにダブルイレブンの参加条件、キャンペーンの参加条件などがありますが、ここはイメージがつきにくい部分ですよね。
佐藤:ダブルイレブンの時期になるとECの中にセール特設ページができるのですが、これが非常にアクセス数が多いです。そこに掲載されるには、プラットフォーム側から特典の数や価格帯など条件が出されます。このプラットフォーム毎のルールに則りながら商品展開や以下にPRをし、露出していくか計画を立てる必要があります。
福積:どのキャンペーンで初回購入してもらったほうがLTVが長いのか、みたいなことも考えなければいけないですよね。当社も数年中国ECデータを毎年数百万単位で研究していますが、ようやくカテゴリーや、ブランドによっての「LTVが最大化できるゴールデンルート」が見えてきました。
佐藤:常にプラットフォームのシステムや代理店とのコミュニケーションで、プラットフォームで何が起きてるのかを把握する必要がありますね。
◆大型キャンペーン攻略の鍵は非キャンペーン期間にあり?
福積:とあるブランドの月毎の売り上げデータです。大きく突出した月がそれぞれダブルイレブン(11月)、女王節(3月)、618(6月)ですが、3つの大型キャンペーンのみで全体売り上げの45.8%に上ります。いかにキャンペーンで波を作るか、キャンペーン以外の期間で初回接点を持ち、キャンペーンで買って欲しい商品を買ってもらうかが重要になっています。
佐藤:私も商戦期以外にいかに種まきができるかが、こつこつとしたPR・広告展開ができるかが非常に重要という認識です。
福積:消費者も商戦疲れしてきて、平日にライブコマースでゆっくり理解して買いたいという人も増えてきました。売り上げだけ見たらキャンペーン期間が大きいですが、キャンペーン期間外に何をしていくかを重視しています。
佐藤:次の大型キャンペーンは女王節ですが、3月に山場を持ってくるために1月、2月に興味を喚起し、3月に購入して頂くというのが基本的な流れです。この流れを作るため、各部署、日本側との連携が大事です。
もし認知がない状態でのスタートであれば1月、2月の種まきが重要ですが、種まきは数値目標が難しいです。取り組んでいて意味あるのかと日本側も伝わりづらく、中国側も感触として掴みにくいと思います。しかし、それをいかに意思を持ってやり続けるかが大事だと思います。
◆プラットフォームだけで終わらない「中国での勝ち筋」
福積:全体的な勝ち筋として思うのは、ECサイト外部であるWeChat、Weibo、タレントKOLから認知を広げ、ECに検索して入ってきて、CRM(Customer Relationship Management)によってLTVを高めることです。
複数プラットフォームを運営していると、またがるデータで管理が難しいと思いますが、キーIDを電話番号にすればかなり正確にデータをみることができます。直接連絡を取ることができないですが、プラットフォームで購入したお客様にはプラットフォームを通じてDMを送ることができたり、WeChatのミニプログラムでは顧客の特性などに応じて1:1に近いコミュニケーションを取ることができます。
目指すゴールによって方法は異なりますが、ECプラットフォームで新客を獲得し、2回目以降の購入とロイヤリティ化はWeChatのECで実施をしていくべきです。ECプラットフォームでは、実際の販売金額と連動するインセンティブだけでなく、キャンペーン参加費用や、販促費と付き合わなければいけません。そのため、利益を指数関数的に伸ばしていくためには、ECプラットフォーム内部の環境や、販促に連動しずらい売り場…日本でいう自社ECに近い設計が必要と感じます。
すべてのブランドにとって後者が重要というわけでなく、カテゴリーやブランドのポジションによっては、今後検討するブランドが増えてくると予想しております。
佐藤:個人的には中国市場は攻略法がなく、トライアンドエラーするしかないと思っているのですが、福積さんのおっしゃったことは一つの理想的な状態だと思いました。これに企業さんによってはオフラインとの連携が入ってきてきたり、様々な要素が追加されることで、お客様によりブランドを深く理解してもらって長くお付き合いしていただけるようになるのかなと思います。
福積:この形にしていくのは簡単なことではないですが、これが実現できれば、よりよい顧客体験が作れるのではないかなと思います。
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