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九州ちくごの作り手特集

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5月25日-27日に開催する、九州ちくごものづくり文化祭の「深掘り系ワークショップ&レクチャー」に登場する、個性豊かな12の作り手を紹介します。
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#伝統工芸

石鹸って、そういえば、なんだっけ?/ 九州ちくごの作り手⑥まるは油脂化学

「汚れを落としたい」という欲は誰しもあるもの。手でも、体でも、お皿でも、服でも、キレイにしたいなと思ったら、簡単に「洗う」ことができる時代になりました。 水だけでは落ちない汚れを、どうやって落とすのか?古代の人たちも一生懸命考えていました。そんな中、自然の物質から得られる洗浄剤として、何千年も前の古代に偶然発見されたのが「石鹸(せっけん)」です。 肉を焼いたときに滴り落ちる「動物の油」が、薪を焼いたあとの「木灰」と混ざって固まった物質が、洗浄剤の効果があるということが発見

作り手と出会うべきなのか / 九州ちくごの作り手たち①木工作家 國武秀一

こんにちは、うなぎの寝床の渡邊と申します。しれっと初noteはじめます。私たち「うなぎの寝床」は九州ちくごのものづくりや人などの地域資源を、情報と流通を通して広める、地域文化商社として活動しています。 近年、大量生産・大量消費の中で知る機会が失われていった、ものづくりの背景に興味を持つ人たちが増えてきています。どこで、誰が、どんな風に作っているのか?どうしてその土地で生まれたのか? かくいう私も作り手の皆さんと出会い、素材や工程のこと伺い、これまでの人生のことを伺い、どん

産地のトレーサビリティを考える / 九州ちくごの作り手②角田製茶

みなさんは、スーパーで野菜やお肉を買うとき、どこの産地のものか気にするタイプですか?私は近所のスーパーで、生産者さんの名前が入って売られている「地元の野菜」コーナーが結構好きで、いろんな想像をします。 生真面目そうだなとか大雑把そうだなとか、商売っ気ありそうだなとか、何歳くらいの人なのかなとか、全く的外れかもしれませんが、考えるのは楽しいです。そして向こう側にも人間がいる、という感覚が得られるのは、安心できるような気持ちにもなります。 もちろん実際には、偽装しているかして

家業に見つけた「やりがいのある仕事」/ 九州ちくごの作り手⑨筑前津屋崎人形巧房

いわゆる「職人」という仕事に対してのイメージというのは、この数十年の間でも大きく変化してきているのではないでしょうか。 取材先の様々なジャンルの職人さんからよく聞くのは「子供には継がせるつもりはなかった」とか「子供の頃は継ぎたいと思ったことはなかった」という言葉。どんどん日本が経済的に豊かになり、発展していく過程で、昔ながらの職人というのは後進的なものに見えていったのでしょう。 私は小学生の頃に、学校の社会科見学で箱根の寄木細工職人さんのお話を聞いたことを覚えています。ロ

木と向き合う人たちが持つ、不思議な時間軸 / 九州ちくごの作り手⑤木工 関内潔

うなぎの寝床で働き始めてから、ありがたいことに様々な分野の作り手の現場で、学ばせてもらう機会を得てきました。染織物、木工、土、竹、ガラス、食品・・・素材も工程も本当に多種多様です。 その中で面白いなーと感じるのは、素材や物の特性と、作り手の人柄や佇まいに、なにかしらの共通点を感じてしまうこと。すごく直感的で説明がしづらいのですが「あぁ土っぽい人だ」とか「木っぽい人だ」とか「織物っぽい人だ」とか「人形っぽい人だ」とかそんな感じです。説明になってないですね笑。 でも実際、たと

かつての日用品としての工芸 / 九州ちくごの作り手たち③【桶】松延工芸

いま「伝統工芸」と呼ばれている、日本全国の様々なものづくり。「伝統」と名前がつくのは「現代」との比較としてであり、「工芸」といわれるのも大量生産の工業製品との対比があるからです。かつてはただの「もの」だったのではないでしょうか。 そんな「もの」が生まれ、工芸として代々続いていったのは、なぜでしょうか。需要があったからです。しかも「伝統工芸」としてではなく、日常の中で必要とされていたからではないでしょうか。 もちろん工芸の中にもいろいろな種類があり、一般庶民が使う日用品と、