heldioリスナーに届けるしおのはなし#14 令和6年6月23日 味噌汁は体に良いのか?

 一昨日、20日(木)にテレビ朝日「林修の今知りたいでしょ!」という番組で味噌が取り上げられるというので観てみると、「味噌汁は高血圧に良い」とか、「味噌汁はガンに効く」とか大盤振る舞い。そして、そこにはいつもの面々が…。
 わが家では20年ほど前から手前味噌を作っている。つい最近までは3月と10月、年2回作っていたが、今では家族数も戦力も減り、年に1回、10月だけになった。九州は基本的に麦味噌。わが家のレシピは、麦麹10キロ、大豆4キロ、うみしお1.6キロ。前日、大鍋に大豆を水を浸し、翌朝、かまどで炊く。大豆が煮えたら、手動ミキサーで砕き、うみしおとゆで汁の一部、麦麹を入れてこねる。こねたら団子状にして樽に押しつけていく。全部を樽に入れると表面にうみしおを振り(カビ対策)、落としぶた、重石を乗せて仕込みの完了。半年ほどしたら食べられる。
 味噌はなんといっても日本の発酵食文化の要。塩屋であれば味噌くらいは自給できねば…という義務感にプラス、市販の味噌を使っていたら、結果的によそ様の塩を多く摂るということになりかねない…。というわけでせっせと作ってる。もちろん、味噌は日本人の食文化の要、日本人の健康にとっても間違いなくいい!とは思っている。しかし、それが科学的に証明できるかどうかは正直分からない。いや、厳密には科学では証明できないと思っている。(東洋的な考え方では納得できるが)
 さて、番組の内容に戻ろう。登場されたのは広島大学名誉教授・渡邊敦光さんと元共立女子大学教授・上原誉士夫さん。どちらも味噌の権威である。渡邊教授の著書数冊には目を通しているし、上原教授はいろんなメディアでお見かけしている。
 番組内でお二人はいつものように味噌がいかに優れた食材であるかを力説されていたが、その根拠とされている統計データは例によって??である。どこが?なのか、全てについて述べる時間はないので、こうした健康についての情報でよく登場するスプリアス効果を取り上げてみよう。
 さて、適正な方法(サンプル数など)によって調査が行われ、その結果、味噌汁を毎日摂る人の方が摂らない人よりも健康であった(特定疾病の罹患率、寿命など)との有意な結果を得られたとする。その場合、味噌汁を摂ることは健康にいい!と考えてよいだろうか?
 答えはノーである。なぜか?考えて欲しい。味噌汁を毎日摂るような人はどんな人だろう?暴飲暴食や昼夜逆転の生活をしている人がいるだろうか?むしろ逆で、規則正しい生活を送り、食や健康にも関心を持っている人が多いだろう。何を言いたいか?そうした生活態度が健康に寄与している可能性があり、味噌汁を摂るのもその現れ一つに過ぎないと考えられるからだ。(味噌が健康に寄与していることを証明するためにはそうした要因を排除して調査を行わなければならない。)
 彼らのような安易な主張の裏には、どうせ味噌汁は体にいいのだから、それを裏付けるデータは不十分でもいい、という傲慢な態度があるようだ。事実、渡邊教授は自身の著書の中で、調査データを使って味噌の良さを主張する一方で、「データに信憑性がなくても味噌は間違いなく体にいいのだから問題ない。」と述べておられる。実は、こうした目先重視の考え方が味噌をはじめとした日本の食文化を崩壊させているのだが…。

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