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ゴビ砂漠250kmマラソンへの挑戦③

◼︎STAGE1 なんとかゴールしました

初日はゴールまでの距離が36.2km。
今回練習はほとんどできなかったから少し緊張していたし、はじめてだから要領も悪くて「今は何をしたらいい時間ですか?」って聞きまくっていました(笑)

距離的には大丈夫。自分に諦めるという選択肢がないことも分かってる。
きっと日を重ねるごとに体は慣れて強くなっていくから、あとは今ある痛みとどう付き合っていくかだけ。
足に触れながら「ゴールまでよろしくね」と心の中で言いました。

3、2、1、START!!!

太鼓の音と大きな歓声で一斉にスタート。

少し緊張して呼吸が浅くなっているのを感じながら、進みました。

TEAM A☆H☆Oは14人中10人がリピーターです。
さすがリピーターは違うなと思ったのが、すごいリラックスして喋りながらスタスタ歩いてくんですよね。
私にそんな余裕は全くなく「とにかく慣れよう、とにかく慣れよう」と淡々と歩くことにしました。

しんどくなると、よくマーシーが声をかけてくれました。
「ゆみちゃんハッピー!」
「どうしたの?痛いの?僕も痛いよ!」
「こーんなすごい景色なんだからさぁ、楽しまないともったいないよ」
といつもテンション高く全力笑顔です。
マーシーに声をかけてもらうと不思議と悪い状態を断ち切れる感じがして、とても助けられました。

あきちゃんとは度々気づきのシェアをし合って、どんどん心が軽くなっていきました。

緩やかな坂道を登っている時、よっしーが私の過去のことを質問してくれたのでうつ病時代の話をしながら進みました。
すると不思議と息が上がってきて、体が重くなったように感じたんです。

最初は坂道のせいだと思っていたんだけど、違うなと気づきました。
うつ病だった時のこと、うまくいかなかったこと、そんな所にばかり意識を向けていたらパワーが出るわけがないですよね。
過去にあったこと、まだ来ていない未来のことは横に置いて、いまこの瞬間自分の体を一歩前に進めることだけに集中しようと決めました。

私の中で気づきや癒しが起こる度に余計なものが削ぎ落とされていきました。

CP2〜CP3は約500m上って500m下るというこの日一番難しいコース。

本当に急な坂道で、なんとか一歩ずつ登っていたら頂上手前くらいでやっと体が慣れ、呼吸が落ち着いてきました。

このあと急で長い下り坂があったんですが、幸四郎さんがとにかく凄かった。
幸四郎さんは目が悪くて、視野が5%しかありません。視力もここ数年でどんどん悪くなっているそう。
なのにものすごいスピードで駆け下りて行くんですよ。絶対見えてるでしょ!って思うんだけどやっぱり見えていないらしいです(笑)
きっと視力以外の感覚がとんでもなく発達してるんだろうな。

ゴール手前の数キロで沼地が出てきました。
足場が悪くて一歩ずつ歩幅や体重のかかり方が変わるから膝に負担がかかります。
最後にこれはキツいなぁと思いながらなんとかゴールできました。

らんぼう、さかなさん、カルロスが迎えてくれて、らんぼうが「がんばったね」って微笑んでくれて一気にホッとしたのを覚えています。

靴を脱いだら小さい水ぶくれが3つもできていて驚きました。水ぶくれは初めての経験です。
前日にさかなさんが処理の仕方を教えてくれていたので、ドキドキしながら針を刺して水を抜きました。

体に痛みがあっても、時間に余裕を持ってゴールできたからみんなでゆっくりご飯が食べられて楽しく過ごせました。


◼︎STAGE2 ツラすぎてまさかの大号泣

2日目は45.1kmのコース。
前日よりも9km長い…とか考えるのは早々にやめることにしました。
どうせならポジティブなことに意識を向けた方がいいですもんね!

この日も山越えがありました。

前日は頭痛や吐き気があったのですが、どうやら電解質不足が原因だったみたいなので多めに摂ることを意識しました。
でも歩くことに夢中になるとどうしても忘れてしまって、何度も熱中症気味になっては水に溶かす用のタブレットを直接口に含んでなんとか体調を保つので必死。
まだペースが全く掴めなくて、気持ちが悪いし、膝も痛くて「綺麗な景色だね〜」と声をかけてもらっても景色を楽しむ余裕はほとんどなかったです。

目が悪い幸四郎さんはコース上のピンク色のフラッグが見えません。

だから歩くときは誰かの背中や足元を見ながら歩くらしいです。CP2を過ぎたあたりで幸四郎さんが私の後ろを歩くタイミングがあったんだけど、これがもう本当に恐かった!集中力と圧みたいなのが後ろからめちゃめちゃ伝わってきて、ビビリの私はちょっとでもスピードを落としたら踏み潰されるんじゃないかと内心ドキドキでした(笑)

そんな時あきちゃんが声をかけてくれて
「ゆみちゃん、いますっごい無理して頑張ってたやろ」
「誰かを引っ張るのって結構エネルギー使うねんで」と笑われました(笑)

あきちゃんは色んなことに気づいてくれて、いつも必要な言葉をかけてくれます。
痛いって言ってしまうと他の人のエネルギーを下げてしまう気がして言わないでいたら「痛いって言ってええねんで」とかサラッと言ってくれる。

あきちゃんのおかげで無意識に自分に鞭打つことをやめられたし、痛いときには遠慮せず「痛い」と言えるようになりました。あきちゃんありがとう。
気づいたらレース前に痛めていた左膝や股関節の痛みが魔法のように消えていました。人の意識と体って不思議ですよね。

この日のCP3からゴールまでの11kmがとにかく長かった…!

ゆっぴと二人で歩いていて、キャンプ地に見えるのに近づいたらゲルでした、みたいなのが4回もあって「まだなの?」って何度も心が折れかけました。
行動食も足りなくて、ゴールが真横にくるまで気づけないほど体力がギリギリ。

距離が長くて、足裏は痛いし、ツラくて、ゆっぴの淡々としたテンションとペースで進めたおかげでなんとかゴールできた日でした。

ゆっぴは砂漠マラソンへの出場が3回目です。ペルー、ニュージーランド、そして今回のモンゴル。

「なんで3回も挑戦してるんですか?」と何度か質問してるんですが、
「なんでだろうね〜、しんどいんだけど終わるとまた行きたくなっちゃってるんだよね〜」といつも言っていました。

しんどいけど終わるとまた行きたくなる、その気持ちがレース後に私も理解できるようになるんだけど、この時はまだ全く理解できませんでした。

早くご飯を食べないとエネルギー切れになりそうだったので急いで準備したいんだけど、足がもう上手く動いてくれなくてフラフラ。
そうこうしているうちに、鼻血が出てしまいました。(砂漠は乾燥するからあるあるらしい)
ティッシュで押さえて様子見したけど止まらなくてメディカルテントへ行くことにしました。

ドクターに「手でこう押さえるんだよ」って言われたけど下手だったみたいで、まさかの鼻に洗濯バサミ。
そのまましばらく放置されている間に完全にエネルギー切れになって、動けないし、辛いし、情けなくて涙がボロボロ出てきました。

ドクターが来て「もう血が止まったから帰っていいよ」と。(大丈夫?とかは一切なし。ここのドクターは良い意味でとてもドライ。笑)

帰ろうとなんとか立ち上がるけど、フラフラで上手く歩けない。涙も止まらない。テントまでの道のりで一人で大泣きしてたらあっこちゃんが来てくれました。

あっこちゃんに支えられながらテントに戻っていると「だいじょうぶだよー」「がんばってー」という声が聞こえてきました。大泣きしてて顔を向けることもできなかったんだけど、必死に頷きました。その声はおそらく台湾の選手たちで、私のワッペンの国旗を見て日本語で声をかけてくれたんだと思う。情けない姿を晒してしまった恥ずかしさと、あたたかい声をかけてくれる優しさにまた涙が出ました。
この時ちゃんと顔を見ておけば後からでもありがとうが言えたのになと少し後悔しました。

テントに戻るとあまりのボロボロさに大爆笑され、だいぶ気持ちが軽くなりました。

このときのジーニョが爆笑している声は一生忘れられない気がします(笑)
どんなに辛いこともすぐ笑い話にしてくれて、深刻にならないのがTEAM A☆H☆Oの良いところの1つだと思う。

この日はもうテントから動けなくて、あっこちゃんがご飯を用意してくれました。
うつ伏せになりながらなんとか食べ終え、足をマッサージすることもできず就寝。

ゲルに泊まったんだけど、そんなのどうでもいいくらい大変な日だったなぁ。


◼︎STAGE3 ロッククライミングでタイムアウト

朝起きると、顔も足もパンパンに浮腫んでいました。
泣いちゃったしマッサージもできなかったから仕方ないとはいえ、パンパンに浮腫んだ顔で外を歩くのかと思うとテンションがめちゃめちゃ下がりました(笑)
足は靴に入らないくらい浮腫んでて、ちょっと怖かったです。

3日目は39.6kmで、山を2つ越えてからの砂地というコース。
しかもこの2つの山越えは今回の大会で一番難しいコースです。

スタートすぐからものすごい岩場で渋滞に。

私は荷物の重さで後ろに倒れそうなのが怖くてうまく進めずにいるとジーニョが後ろから何度も私のお尻を押し上げてくれました(笑)
恐怖があると体がこわばって進めなくなるんですよね…。
ジーニョのおかげで心もほぐれ、なんとか進めるようになってきました。
でも、ずっとずっと続く坂道に体力がどんどん奪われていきます。

そんなとき「ストック取ろうか?」と1人の台湾人選手が声をかけてくれました。
岩場でストックを使うとぶつかったりして危ないからみんなしまってたんです。
ストックの存在を忘れていたから本当に助かりました。

 

その後も難しい岩場で引っ張り上げてくれたり、山頂で写真を撮ろうか?と言ってくれたり、何度も親切にしてもらいました。
私は英語をほとんど話せないから、とにかく「ありがとう」を何度も伝えました。

岩場を下っているとさかなさんが来て「あと1時間15分で6kmちょっと進まないとCP1に間に合わないよ!」と教えてくれて、急に危機感が。
平坦なコースならいけるペース。でもここからまた山をもう一つ越えないといけない。そこからは上り以外のところを走れる限り走りました。
さかなさんの声掛けがなかったらあんなに全力で走れなかったと思う。

2つ目の山を下っても中々CP1が見えてこない。タイムアウトの時間が迫ってる。そしてとうとうタイムアウトになってしまいました。
でも諦める気持ちは全く出てこなくて、とにかく進もう、CP1に着いたら次のCP2までに絶対時間巻くからって言って絶対に行かせてもらおう、くらいに思っていました。
なんとか15分遅れでCPに到着すると、先についたチームメンバーが制限時間が1時間のびたことを教えてくれました。
よかった…!まだ進めるんだ…!

ここからは砂のコース。

私はCP1に着くまでに体力をいっぱい使ってしまって、あまりスピードが出せませんでした。足の浮腫も取れず靴が窮屈で痛い。しかも気持ち悪くて電解質が飲めない。
仕方なくお水を飲んでみるとすごく美味しく感じて、しばらくお水だけを飲んだら少し元気になりました。電解質の摂りすぎだったのかもしれません。加減が難しい…。

あやちゃん、マーシー、よっしーと一緒に歩いてたんだけど、マーシーがめちゃめちゃ休憩をこまめにとるんですよ。

「こんなすごい景色もう一生見られないよ?ほら!よく見て?綺麗でしょ?」
「こーんなに休憩してもさ、時間内にゴールできちゃうんだよ」
ちゃんとしなきゃ病の私は「そうだよね」と思いつつ「こんなに休憩していいの?」とちょっとソワソワするわけです(笑)

何度も道端で休憩して、お水をかけ合ったり、一つでも不快感を取るためにレース中なのに歯磨きしたり、マッサージしてもらったり、ただただ景色を眺めたりしているうちに少し元気が出てきました。

「あ、行けるわ」そう思って「私ちょっと先に行きますー!」とこの日最後の5kmを一人で歩きました。

疲れてはいるんだけど不思議と景色に感動できる余裕が出てきて、こんな所を歩けるなんて幸せだなぁと思いながら気持ちよくゴール。

TEAM A☆H☆Oの中でいつも一番最後にゴールしていたのがいくちゃんだったんです。
この日はCP1でほとんどのメンバーがタイムアウト(制限時間が1時間延長されたからセーフ)だったんだけど、いくちゃんは1時間延長された制限時間にも間に合わなかったとういう情報しかわかっていませんでした。

こうちゃんとマルちゃんがゴールして、残るチームメンバーはいくちゃんだけ。

キャンプ地にいないってことはまだ歩いてるってことだと思う、と待っているといくちゃんの姿が。

なんと制限時間の15分前にゴールしました。

CPではお水だけ補給して、休憩せずにずっと歩き続けてきたそう。
いくちゃんの諦めない精神は大会中ずっとすごかったです。
ペースが遅いからいつもタイムギリギリで、チームメンバーも近くにいなくて、そんな中休憩をほぼ取らずに淡々と歩き続けるってすごい精神力ですよね。

次の日はオーバーナイトレースで80km歩くしまだ何があるかわからないんだけど、いくちゃんをみんなでゴールに迎え入れたとき「絶対全員でゴールできる」そんな予感がしました。

さかなさんは「全身が濡れたらリタイヤする」と本気でスタート前から言っていたので、レース中に大雨が降らないことをみんなが祈ってた(笑)


◼︎STAGE4 歩くことがこんなにも楽しいことなんて知らなかった

4日目は翌日にかけて夜通し79.2km進むロングステージ。
水ぶくれは8個くらいできていたんだけど、全部大きくなる前に処理できていて問題なさそう。体も慣れてきたのか浮腫もなし。荷物も減ってきて一番調子が良い日でした。

この日は砂丘からのスタート。

そして CP1直前に川渡りがありました。

どんなときもハッピーなこうちゃん。さすがです(笑)

水に浸かると水ぶくれの悪化が心配だけど進むしかありません。
ここからはほぼずっと一人の時間でした。

どこまでも続いて見える空と平原

馬、やぎ、羊や牛の群れ


ピンクのフラッグを頼りにただただ歩き続ける。


なんで挑戦したいと思ったのかはまだわからない。でも本当に楽しくて、幸せで、なんて贅沢な時間なんだろうと思いました。

この日は山がいくつもあって、急な山をいくつか登ったら右膝が痛むようになりました。

痛くて痛くて下るのがツラい。他にも足が痛そうな選手が何人か近くにいて「大丈夫?」「あなたも痛いの?」と声を掛け合いながら進んでいました。でもしばらくすると抜きつ抜かれつ同じくらいのペースで歩いていた選手にどんどん抜かれ、いよいよ山頂で完全に一人になってしまったんです。

こんなに見晴らしのいい山頂なのに、後ろを振り返っても誰の姿も見えない。

なんだか急に寂しくなったとき、マーシーが「こんなにすごい景色楽しまないともったいないよ?」と言っていたのを思い出しました。
今がそのときだ!と思い切って休むことにしました。

座って、綺麗な景色を眺めながら食べて、飲んで、歯も磨いて、スッキリ。
そしたらね、本当に不思議なんだけど坂道を駆け降りれるくらい右膝の痛みが消えてしまったんです。
急に元気になって、坂道を駆け降りたら一気に4人くらい抜けたから私ってなんて単純な人間なんだろうと思いました(笑)

CP5に着いて休憩しているとよっしーとカルロスが来ました。

同じチームだけどあまりちゃんと話したことがなくて、CP6までの道のりでペースが一緒だったよっしーと少し話したんだけど、ずーっとくだらない話ばかり。
楽しくてあっという間にCP6に到着。

ご飯を食べ、少しでも仮眠を取りたかったんだけど全く眠れませんでした。
夜中12時〜残り24kmの道のりをよっしー、カルロス、私の3人で歩くことになりました(夜道は真っ暗だから基本的には1人で行かないみたい)。

この後の夜中の道のりがあんなに大変な時間になるなんて思ってもみなかった。

最初は楽しく話していたんだけど、徐々に良くない雰囲気に。
雨に降られ、思うように進めなくて、私は体調が優れず、雰囲気は最悪で、3人ともそれぞれなんとかしようとするんだけど空回り、全く噛み合わなくて更に悪化していきました。

本気でもうダメだと思ったし、耐えきれず雨と暗闇に紛れて1人でこっそり泣いたし、何度もバラバラになりかけて、最終的に3人ともが見られたくない姿や弱みを晒す羽目になりました。
でもそのおかげでやっと、お互いがお互いを思いやることができるようになったように思います。
その頃には空が明るくなってきて「本当に最悪の空気だったけど、この3人で歩けてよかったね」と笑い合ってゴールできました。

カルロスは口数が少なくて、表情があまり変わらないからいつもよくわからないなと思っていたけど、話してみると「そんな風に考えてたんだ!」と思うことがたくさんあって知れてよかった。

よっしーは私にはない価値観をたくさん持っていて、話すたびになんで?どうしてそうなるの?と思ったりしたけど、人は違うからこそ面白いんだと改めて気づかされました。

人はみんな違うし、相手が誰であっても100%理解し合えることは絶対にないんだろうと思います。
でも知ろうとしたり、違うことを認め合ったり、共通点を見つけることはできる。
誰にだって弱みや、知られたくないこと、見せたくない姿があります。
でも時にはそれを晒さないといけない状況があったりしますよね。
だからそのときはもう諦めよう!そして受け入れよう!
最悪は最高への前触れです!!

できることならこの日のよっしーとカルロスの記憶を消してしまいたい!と思うくらい一生モノの思い出になりました(笑)


◼︎DAY5 休息日

STAGE4が4〜5日目のオーバーナイトステージなので、24時間くらい休息が取れます。

この日は雨がずっと降ったり止んだりしていて、今日が休息日で良かったと心から思いました。

あやちゃんは誰よりも献身的な人です。
誰かを喜ばせたいという気持ちが強過ぎて、うっかり荷物が17kgを超えちゃったりする。

あやちゃんのザックの中は1人では食べきれないほどの食料や、困ったとき用の必需品ではないアイテム、海外の選手にプレゼントするための折り紙など誰かのための物がたくさん入っています。

自分が持ってきた食料が喉を通らないとき、あやちゃんがくれる何かなら食べられたりする。
寒くて寒くてたまらない時、あやちゃんがくれるカイロが温めてくれる。
ゲルの隙間から入ってくる虫をあやちゃんが持っている大量の虫除けで追い払えたりする。
あやちゃんが食べきれなかったお菓子で休息日のテントの中でお菓子パーティーができたりする。
ペン持ってる?接着剤ってあるかな?ティッシュ余ってない?
何かを分け合うことはルール上ダメなんだけど、私たちは何度もあやちゃんに助けられています。

雨が降って外に出られない時間中あやちゃんはずっと折り紙で鶴を折っていました。
これは海外の選手にプレゼントして喜んでもらうためです。
折った鶴をプレゼントしてまわっているあやちゃんはとても幸せそう。
そんな姿を見ていると私も幸せな気持ちになるし、ルールを守ることは大切だけど、自分の喜びを選択するってもっと大切なことなんだろうなと思わされました。

この日、テントの中であっこちゃんの体をマッサージしました。
あっこちゃんは女子チームを立ち上げてくれて、挑戦するきっかけをくれた人。

クラウドファンディングの時はめちゃめちゃ応援してくれました。
あっこちゃんはとても不思議で、優しさを感じさせない優しさを持っています。
クールに、当たり前のように誰かに手を差し伸べて、いつの間にかいなくなってるみたいな人です。

体を触るとその人の生き方みたいなものが伝わってくるんだけど、常に余白やゆとりがあって、人生の流れがめちゃめちゃ良いんだろうなって感じました。
これまでのたくさんのありがとうを込めてマッサージさせてもらいました。

お菓子を食べたり、怪我のケアをしたり、たくさんお喋りしたり、全部楽しかったなぁ。
もうすぐ終わっちゃうんだなって思うとちょっとだけ寂しい気持ちに。

この日見た夕日は、私の人生の中で一番美しいと思える景色でした。

焚き火にあたりながら夜12時過ぎまでチームメンバーと話していたんだけど、そのおかげで思考が巡って、寒さもあり全く眠れませんでした…。


◼︎STAGE5 私、今日はゆっくり歩きます

6日目は41.4kmのコース。翌日は約10kmでゴールなので、実質最終日みたいなものです。
朝起きるとやっぱり寝不足で、夜の気温が低かったから体が冷え切っていました。
ご飯を食べても体温が上がらなくてとにかく寒い。
こんなにも不調なのにこの日は川渡りからのスタート。

5回川渡りがあるって聞いてたけど、8回は渡った気がします。

歩き始めると驚くほどスピードが出ない。呼吸が浅い。右膝が痛い。
いつも私より後ろにいたチームメンバーにどんどん抜かされていきました。
なので開始100mで決めました。「今日はゆっくり歩こう」
ここ数日で体力と筋力はついてるし、諦めることは100%ないから歩ききる自信はある。
チームメンバーの後ろ姿がどんどん小さくなっていきました。

後ろの方にいるってこんな気持ちなんだなぁ。とにかく自分のことだけに集中しよう。

しばらく歩いていると、ロングステージのときに同じくらいのペースで歩いていた台湾人選手が声をかけてくれました。
「膝大丈夫?」「名前は?」「昨日寝れなかったんだ」「夜寒かったよね」「レースが終わったら何したい?」拙い英語でなんとか会話するんだけど、私の英語力が低すぎて会話はすぐに終了。
その人は膝がとても痛そうで、痛み止めを結構飲んでるみたいでした。

海外の選手と会話することなんて想定していなかったから英語の勉強を全くしてなかったなぁと少し後悔。
せっかくだからなんでこのレースに参加しようと思ったの?とか聞いてみたかったな。

1〜3日目はまだ体が慣れていなくて、タイムを気にしながら必死に歩いていました。
だから肉体的にも精神的にも余裕がなくて、せっかくの美しい景色も全然楽しむことができなかった。
ロングステージのときはめちゃめちゃスピード出していたし、走らなくていいのに走ってた。だって楽しかったから(笑)
この日は「ちょうど膝と体調が悪いし、明日には終わっちゃうんだからゆっくりこの道のりを楽しもう」みたいな気持ち。
我ながら本当に自由で気分屋だなぁと思いつつ、こういう感覚や感情の変化に気づいて寄り添える自分でよかったと思いました。

CP2〜CP3はまぁまぁ急な上り坂のある森と山。

昨日までは木が生えていない見渡す限りの平原で、これぞモンゴル!みたいな地形ばかりだったのですが、ここは木もあれば花もたくさん咲いている。

風が吹いてて、涼しくて、穏やかで、とても気持ちのいい道でした。

相変わらず膝は痛むし体調も悪いから何度も立ち止まってしまうんだけど、美しい景色のおかげでずっと幸せな気持ちでいられました。

こうちゃん、まるちゃんとはスピードが違ったからレース中あまり会うことがなかったんだけど、この日は何度も会えて嬉しかったなぁ。

山頂のCP3で「ここまで来たら絶対にゴールできる!」と確信して少し涙ぐみながら喜んでいたまるちゃんの顔はとてもキラキラしていました。
60歳をすぎて初挑戦ってすごいですよね。最初から最後までまるちゃんをサポートし続けていたこうちゃんもすごく素敵だった。

山頂から下っていくとき、こうちゃんとまるちゃんの後ろ姿を見たくてわざとゆっくり歩きました。
美しい景色と、二人が並んで歩く穏やかな後ろ姿になんとも言えない気持ちになって少し泣きそうになりました。
写真を撮りたかったんだけど、スマホが使えなくてそれだけが心残りに。あの光景は私だけの宝物です。

この日声をかけてくれた台湾人選手とはほとんどずっと同じくらいのスピードで進んでいました。

というかたぶん少し合わせてくれていたんだと思う。
言葉を交わすことはなくても、しんどい時に誰かが近くにいてくれる安心感にずっと支えられていました。
「Thank you for walking with me」としか言えなかったんだけど、ちゃんとありがとうが伝わっていたらいいな。

やっとゴールが見えてきて、ゴールの前にはとても長くて深そうな川がありました。
夕方16時過ぎ、今濡れたら絶対明日までに服が乾かないよ…と少しテンションが下がり、せめて股下くらいの深さであってくれ!と願いましたが、そんな思いは届かずしっかり水に浸かったよね(笑)

この日もチーム全員がゴールできて、あとは翌日のたった10km。
14人全員完走が確定しました!!すごい!!!

とっても晴れやかな気持ちでご飯を食べていたら、空に虹が。

大会中に誕生日を迎えた選手を祝うケーキも振る舞われました。


◼︎STAGE6 最後の10kmは全員で歩いてゴールしよう

最終日は朝5時半に川渡りからのスタート。

朝起きたら水ぶくれは完治していて、膝の痛みもない。
レース開始前の不調も全て消えていました。

病や痛みは悪者じゃなくて、必ずそこに存在する意味や理由があるんだと知りました。
私は大会前からの怪我、前日の膝の痛みや体調の悪さがあったからこそ色々なことを感じ、考え、向き合うことができました。
これは【色々なことを感じ、考え、向き合うために痛みや体調の悪さを引き起こしている自分がいる】ということなんだと思います。
体験したかったことを終えたから症状や痛みが消える。人の体って本当に面白いです。

らんぼうは本気で上位を狙って無茶して走り、今大会で一番ひどい命に関わるレベルの怪我をしていたらしく、怪我した足が濡れないよう支えてもらっていました(笑)

タイムも気にせずみんなでゴールに向かう道のりはすごく楽しかったなぁ。

そしてついにTEAM A☆H☆O 14人全員でゴール!!!

長かった。本当に長かった。
レースはたった7日間だけど、この瞬間を迎えるまで5年かかりました。

こうちゃん、私はずっとアフロをかぶるのが嫌でした。
でも今回の大会でこうちゃんが何年もかけて積み上げてきたハッピーとアフロのパワーに心から感動したんです。

アフロをかぶった人にハッピー!って声をかけられてあなたは幸せを感じますか?正直、これで幸せを感じる人はあんまりいないと思うんですよ。でもこうちゃんはアフロとハッピーで周りの人を幸せにできる世界を何年もかけて確かにつくっていました。アフロとハッピーはたくさんの人を笑顔にしていました。たくさんの人に愛されていました。
こうちゃんのすごさって伝わりにくいけど、本当に本当にすごいです。
TEAM A☆H☆Oを続けてきてくれてありがとう!

今大会で最高齢のベッキーという選手がいます。

彼女は私たちのチームのことがすごく大好きだと言ってくれて、ゴールしたあとベッキーを囲んで一緒に写真を撮りました。
あなたたちのことが大好きだ。一気にたくさんの孫ができたみたいで私はすごく幸せだって涙ぐみながら伝えてくれて、私のほっぺにキスして抱きしめてくれたんです。数日前に祖母を亡くしたばかりだった私は胸がいっぱいになりました。

様々な国から選手が集まっていて、その中には敵対している国出身の人ももちろんいたりする。
でも、一人一人がただゴールを目指して、自分自身と向き合って、励まし合って、笑い合って、称え合って、言葉を超えたところで繋がっていく。こんなに素晴らしい世界があるんだってことに本当に感動しました。

サポートしてくれるボランティアスタッフの方々も本当に素敵な人たちばかり。

いつも笑顔で迎え、送り出してくれてそれだけで「またがんばろう」ってパワーが湧いてきました。

なんて素敵な大会なんだろう。

私はこのレースをもっとたくさんの人に体験してほしくて会う人みんなにおすすめしています(笑)

今何かに悩んでいる人、自分自身がわからなくなっちゃった人、病を抱えている人、生きることがつまらないと感じている人、刺激が欲しい人、楽しいことがしたい人、このブログを読んで1%でもワクワクしちゃった人、みんな砂漠で250km走ってきなよ!って言いたい。

きっとその時のあなたに必要な経験や答えが用意されているから。

TEAM A☆H☆O、選手、運営スタッフ、応援してくれたみんな、本当に本当にありがとう!!

ゴビ砂漠250kmレース、最高だったよ!!!


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