真夜中の冷蔵庫
夜
その家の人間たちが
寝静まった頃
くらーい暗い
冷蔵庫の中では
おしゃべりが 始まります
わたし、辛子 カラシ。
もう少しで使い切るところ
なんだけど
もう 長い間
無いことに なってる
えー、 どうして?
新しいカラシが登場したからよ
あー、新しいのね。
とんかつやシュウマイ、餃子にも使うから
カラシ無いと困るー。
わたしは、マヨネーズ。マヨ。
このうちの人は、マヨ好きで、
何にでも、マヨかけするのよ。
このあいだなんて、ごはんにかけてたわよ。
だから、
マヨの買い置きがいっぱいあるのよ。
で、
それはいいんだけど、
あと少し、のわたしを逆さにしたまま
忘れるのよ。
あー、
それは、悲しいね。
なんとかして 知らせたいね。
どうすればいいかなあ。
私たちの言葉は、
人には届かないもんね。
うーん。
そうだ! いいこと考えた!
夢の中に出ていくのよ!
「おはよー」
「おはよー」
「夢見たよ」
「見た見た、カラシが、わたしを忘れないでー
って言ってた」
「見たよ。マヨが、わたしを最後まで食べてー
って泣いてた」
「びっくりしたねー」
「ほんとだよ」
「よし、きょうは、カラシマヨで、サラダやサンドウィッチも つくろうよ」
「やったー」
「よかったー」
カラシとマヨは、にこっとしました。