初めてもらった絵本
5歳の誕生日に
絵本をプレゼントされました。
その絵本は
表紙を開くと光に反応して
音楽がはじまるという
仕組みでできていて
絵本のなかの物語は
その音楽とともに進むのです。
音楽が鳴る絵本なんて
持っていませんでしたから
嬉しくて何度も絵本を開きました。
その絵本をプレゼントしてくれたのは
父の年若い知人で
両親以外の大人からもらった
初めての誕生日プレゼントでした。
「すみれいろのちいさなはこ」
という
可愛いらしい題名の本で
作者は立原えりかさん。
今年の3月に
安房直子さんの本に出会い
すっかりハマって色々な本を読むうちに、
安房さんは
「海賊」という同人誌を作っていて
その同人活動に立原えりかさんも参加されていたと知りました。
立原えりかさんって
あの「すみれいろのちいさなはこ」の
立原えりかさんだよね?
と心のなかで若干パニックに。
何十年もの時を経て
好きな本と好きな本が繋がって
ああ、こんなことってあるんだ!
とほんとうに嬉しかったのです。
さらに
立原えりかさんは
立原道造が大好きで
ペンネームに同じ名字をつけたと知って
立原道造の「夢みたものは」という詩に
胸を撃ち抜かれていたわたしは
ここでも繋がっている!と
感動に心をうち震わせていました。
5歳の頃から好きだった本が
大人になってもたくさんの好きを
連れてきてくれて
そのはじまりは
「すみれいろのちいさなはこ」を
誕生日プレゼントに選んでくれた
その人のおかげなので
いつかお礼を言いたいと思っていました。
この絵本を選んでプレゼントしてくださって
ありがとうございます。
小さい頃から、今でもずっと嬉しいです、と。
先日、母から
その人がなくなられたと聞き
信じられない思いでした。
父より10歳ほど若い方でしたから。
直接その人に会ってお礼を言うことは
かなわなくなってしまったけれど
でも、
だからここに書くことにしました。
その絵本が光に反応して
音楽を奏でるのは約2万回。
もう音は鳴りません。
けれど
わたしの中には
その音楽を聞きながら
心踊る気持ちで
物語を読んだ記憶が残っています。
絵本が奏でていた音楽は
「愛の讃歌」です。