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行く春や百の礫を数へをり

noteをはじめて少し慣れた頃、「白杯みんなの俳句大会」を知った。
誰でも参加できる、とある。素人でも構わない、と。

ほとんど親しい人もいなかった私は、迷って迷って、本当に勇気を出して(今から思えば、何がそんなに不安だったのだろう?笑)投句した。去年の10月のことだった。

あれから約半年。
俳句幼稚園の先生方や園児のお仲間に支えられ、導かれ、気付けば100を超える句を詠んできた。
こんなに続けられるとは、正直思っていなかった。
けれども私のnoteの歴史は今のところ、ほぼ俳句の歴史でもある。

病んだ私の回復への道はまだ半ばで、今も時々崩れそうになるけれど、それでも私は間違いなく、強く、前向きになれたと思う。
もう一度はじめて、歩き出して、本当に良かった。

お世話になった皆様に心から感謝いたします。
どうぞこれからも仲良くしてやってください。

これまでの句を並べてみました。
よろしければ、ご笑覧ください。
(皆様の推敲案を取り入れ、初出より変わっている句もあります。中には推敲案をそのまま、いただいたものもあります。ありがとうございました)


  1. 秋日和赤信号の消防車

  2. 潤目焼くごめんと言い出せないままに

  3. 布団干す帰り来る日も聞かぬまま

  4. 言い訳は聞きたくもなし毛糸解く

  5. 境内の大樹は空へ千歳飴

  6. 泣いた子を囲む園児ら小春かな

  7. 使い捨てカイロや難民キャンプの子

  8. 病床の波形安らか冬日和

  9. 小雪や家出少女の赤き頬

  10. 病棟は常夜灯のみ冬銀河

  11. 女子マネのサイズSSラガーシャツ

  12. 小春日の子ども食堂カレーの日

  13. 空白の志望校欄冬北斗

  14. セルフレジ一人一把の冬菜かな

  15. 頬に風おしくら饅頭の微熱

  16. 厚着せし売り子の声やシャッター街

  17. スカートに新しき風紅葉散る

  18. 冬の雷カムパネルラはもういない

  19. 十二月八日や遠き帰り道

  20. 短日の休暇乗り越し精算機

  21. 大雪や救援物資のアラビア語

  22. 万物の色を孕みて冬夕焼

  23. 乱調の7オクターブ冬の潮

  24. 水仙や介護ベッドの目の高さ

  25. 水仙の丸き蕾や退院日

  26. 水餃子自動販売機の師走

  27. 年の市シルバーカー押す小さき背

  28. 冬帽の小言聞こえぬ顔をして

  29. 泣く子らの力いっぱい一茶の忌

  30. 来ぬ人をコーヒー二杯冬の暮れ

  31. 胸中に棲む人のあり寒椿

  32. 凍鶴や千年の赦されぬ咎

  33. 古日記世界平和の若き文字

  34. 冬凪や修羅を知りたる人の顔

  35. 禍を蹴飛ばしてゆけ年用意

  36. 恩讐の彼方今年の破顔かな

  37. 鉄塔の数多刺さりし山眠る

  38. 孤独死の凍てる部屋あとかたもなく

  39. 愚は罪か浅慮は咎か凍てる頬

  40. 聖骸布ぬかずく人ありし枯野

  41. 居るはずのなき母の声冴ゆる朝

  42. レンタルの蒲団真白き子供部屋

  43. 凍土や眼孔深き少年兵

  44. 福引や六等賞の玉赤し

  45. 寒月や見抜かれそうな嘘ひとつ

  46. 冬晴れや声爛漫と園児らは

  47. 大寒の清き息呑み父逝きぬ

  48. 春を待つ蔓延防止措置の街

  49. 寄り道し回り道して冬の暮

  50. 傷癒ゆる千枚漬けの透けるほど

  51. 節分の鬼ひと休み園長室

  52. 言ひ切つて後悔はなし冬尽きぬ

  53. 氏神の溢るる手水春立ちぬ

  54. 公園のニーチェ三行浅き春

  55. かの子忌や公園までの家出かな

  56. 春雪の未明国境なき医師団

  57. 東風よ吹けメアリーポピンズよ来たれ

  58. 初雲雀高し自転車専用道

  59. 被災地へ番いの鳥や春立ちぬ

  60. 恋終ふる片肺ちぎらるるやうに

  61. 雛祭親子揃いの片えくぼ

  62. 春灯や十八歳の教習所

  63. どこまでも春満月のついてくる

  64. 辺境の銃声絶へし雨水かな

  65. 隔てなく紛争地打つ春の雨

  66. 老嬢の背筋まっすぐ春帽子

  67. 啓蟄や信じることを何度でも

  68. たんぽぽや祖母の生まれて百余年

  69. ホスピスを探す春宿選るように

  70. 遅き日や廊下へ伸びるプラレール

  71. 百千鳥聖母子像の黙しけり

  72. 根分けして沢山の息吸ひにけり

  73. 春濤や華麗なる大円舞曲

  74. 春愁の信号を待つ刹那かな

  75. 春愁いホテルカリフォルニアの宵

  76. 芽柳や最適解の通学路

  77. 小町忌や塗りの剥げたる夫婦箸

  78. 磔刑の丘に家路に春の星

  79. 背伸びして踝までの春コート

  80. 春天へ一段飛ばしコンバース

  81. 満開の花のホスピス聖母像

  82. 石鹸玉やさしき嘘と知らぬふり

  83. 飛花落花草間彌生のドット柄

  84. 春日や仏花絶へたる五輪塔

  85. 春の日を集めて閑かマリア像

  86. 出棺の警笛長し鳥曇

  87. 石礫投げる者なき花筏

  88. 実家便の米とじゃがりこ春暮るる

  89. 飛行機の轟音遠き抱卵季

  90. 保護色の鳥の卵の小宇宙

  91. 蜃気楼大腿二頭筋重し

  92. 風光るボーカル以外募集中

  93. 蝮蛇草グレーゴル・ザムザの愁い

  94. 火曜日はお風呂に入り春の露

  95. 獺祭とカマンベールの穀雨かな

  96. 小さきは小さきなりに上り鮎

  97. 若鮎や通信制の登校日

  98. ため息の背中見ぬふり春日傘

  99. 検査着の白き鎖骨や四月尽く

  100. ポンペイの骸やゴールデンウイーク

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うみのちえ
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。もしも気に入っていただけたなら、お気軽に「スキ」してくださると嬉しいです。ものすごく元気が出ます。