てのひらを零るるやうに年去りぬ
2021年の夏にnoteをはじめ、秋より俳句幼稚園にお世話になって、早や二年。
思えば、あっという間の日々だった。
今年一年も、私はやっぱり相変わらず、同じようなところをぐるぐる回って、同じようなことをうだうだと繰り返し書いてきた。
そうして泣いたり笑ったりしながら、それでもちょっとずつ、前を向いて歩くことができたように思う。
来年は辰年。
ガウガウと火を吹いて咆哮し、空高く舞い上がっていく(いろいろ間違っているよね?たぶん💦)夢を見ようと思う🔥
今年一年、お世話になった皆様に、心から感謝いたします。
相変わらずの私ですが、どうぞこれからも、仲良くしてやってください。
一年の締めくくりとして、今年1月から12月までの俳句を並べてみました。
よろしければ、ご笑覧ください。
(皆様の推敲案を取り入れて、初出より変わっている句もあります。中には推敲案をそのまま、いただいた句もあります。ありがとうございました)
湯に揺るる裸身の清し去年今年
争いのなき世ください初旭
寒卵割りて全き世界地図
冬天やもう一度だけ出す手紙
冬凪や住宅ローン完済日
咳ひとつシャッター街を軋めけり
小春日や片道だけの乗車券
戦争は終はるだらうか冬の空
山茶花やタイムカプセル埋める午後
水仙やスタッカートの街を過ぐ
牛丼のテイクアウトや一茶の忌
銅像の指したる道や冬茜
椿赤し遺品整理の二トン来る
春待つや如来模したる降魔印
キャラメルのポップコーンや春隣
差し入れのエッグタルトや日脚伸ぶ
均されし生家の跡や冬尽きぬ
宙を蹴るやうに駆けをり春立ちぬ
春浅し言ひ切つてなお言ひ足らず
水汲みの片道二キロ浅き春
ちえちやんと呼ぶ人ありき朧月
また二分時計の狂ふ余寒かな
一陣の風懐かしき彼岸かな
好物と大好物の春休
話しつつ話さぬ朧月夜かな
哀しみの気化する午後や山笑ふ
鳥雲に入りて焼場の音にわか
カピバラは湯に揺れる鳥雲に入る
花冷えや古新聞のがさりがさり
良い人のまま終はる人花の冷
春雨や鍵盤重き課題曲
春塵をゆっくり曲がるパッカー車
慰霊碑は褪せたりゴールデンウイーク
春の海慰霊碑の文字掠れたり
風光るメコン川行く象の群
ラオスより仔象の来たる春日和
出直しのGoogleマップ飛花落花
清明や青信号の続く朝
古戦場とは知らぬまま春遊
野遊や愁いの一つ二つ棄つ
行く春や書架に褪せたるトルストイ
街角にビタミンカラー夏隣
芍薬のゆらゆらゆらと開きけり
芍薬の声のゆらゆら裏通り
吊り橋の果ては異界か栗の花
前髪を眉に揃えて夏に入る
ヒロシマに首脳居ならぶ浅き夏
ヒロシマの献花ま白き五月かな
片恋の形見は不意に梅雨の月
サイダーや喉に刃のやうな恋
眼裏の少年少女初蛍
解体の隣は普請夏の雲
双蝶の梁より高く上棟式
炊き出しの行列最後尾に蝶
蜘蛛の巣を髪に少年探検隊
短夜やマネキン抱えすれ違ふ
とりあへず麦酒供ふる忌日かな
泣いてない泣いてないてばサングラス
新装のサリンジャー買う夏休
匕首の頁に付箋夏季講座
蝉しぐれ給水車待つ列の黙
雷やコンクリートの撓む音
日雷最後に入れる眉の反り
晩成の運命線や遠き雷
河童忌や古本市の赤値札
河童忌の待合室に軋む椅子
一椀の水噛むやうに原爆忌
原爆忌背筋のばして聴く「誓い」
立秋や異国の地図を巡る指
ヒジャブ解く瞳麗し今朝の秋
軍装の遺影八月十五日
雨風を衝いてサイレン終戦日
玻璃鉢を重ねて仕舞ふ八月尽
「異邦人」閉じて八月尽の風
掠れ字の「橋まで五キロ」秋日和
天高しブルーグレーのシャツで待つ
ボルドーのルージュ重ねて秋の宵
コスモスと複式学級転入す
自転車で送るトモダチ月の道
コンビニの跡へ月光ほしいまま
浄土まで遠し五重の塔に月
発つ人と動かぬ人と月今宵
ジンジャーの香や「智恵子抄」音読す
蜩や補助輪外す最後の日
ありふれた志望動機と長き夜
新酒酌む昭和歌謡を鼻歌に
これがあの三四郎池新酒酌む
二百戸のタワマン嵌まる秋の空
シーソーは傾いたまま白秋忌
水澄むや楷書で記す受験票
水澄むや遺言証書の朱き印
扮装のままお見送り十三夜
後の月新装コインランドリー
小春日や同窓会の報せ来る
女生徒のマフラー揺れる通過駅
冬ぬくし鬼だけ増ゆる鬼ごっこ
畔道の轍まっすぐ霜日和
直葬の棺見送り手袋す
十二月八日エントリーシートの空白
鈍色のトラック十二月八日