読了: ただしい人類滅亡計画 反出生主義をめぐる物語 / 品田遊
読みました。
人類滅亡という自らの使命に納得行かない魔王が、滅亡の当事者である人間たちを10人呼び集め、人類は滅亡すべきか否かについて議論をさせる、という物語です。
その中で人間たちは”反出生主義”について深く話し合うのですが、登場人物たちが目の前で議論を繰り広げているかのようなテンポの良さがあり、11人目として議論に参加しているかのようでした。
そして、もともと反出生主義について関心があり、この本以外にも題材として取り扱った本を何冊か読んではいたのですが、登場人物たちの様々な考えに触れ、それぞれの角度から反出生主義について考えを深めるというのはとても面白く、この本を読む前とはまた違った考えも生まれた(ような気がします)。
たぶん、「人間を生み出すべきではない」という考え方は、ぱっと見で嫌悪感を抱いたり拒絶されたりすることもあるんだろうな、と思います。しかし、この本は、自らを反出生主義者だと思っている人、将来子どもを産みたいと考えている人、なんとなく反出生主義を聞いたことがあり関心がある人、などなど。できるだけたくさんの目に触れて欲しい一冊だと感じました。
ここからは自分語りです。
私が”反出生主義”に出会ったのは、この本の著者である品田遊(ダ・ヴィンチ・恐山)さんのツイートがきっかけでした。”反出生主義”を特集した月の「現代思想」を読んだ、だったか、なんだったか、そんな感じのツイートだったと思います。(該当ツイートを探してURLを貼ろうかと思ったけれど、恐山さんが動かしている複数のアカウントのうちどれで呟いていたか失念してしまったので諦めました。)
当時私が暮らしていた地元は、「女にとっての親孝行は、子どもを産んで自分の母親を”ばあば”にすること」という世界でした。
しかし、私は「きっとこの世で一番大事な存在になりうるであろう自分の子どもを、こんな物騒で不安定な世の中に生み出すことはしたくないなあ。産まないことが子供に対しての一番の思いやりだったりするんじゃのかなあ」という気持ちを漠然と抱えていました。そしてなんとなく誰とも分かり合えないような気持ちになり、同世代のママがベビーカーを押す姿を見かけるたび「いいなあ」と思って見ていました。このいいなあ、は、もう、万感の「いいなあ」です。
そんなときにTwitterのタイムラインで出会った反出生主義は、ある種の救いでした。私は「子どもを産むことを10割で善しとは思えない…周りはみんなそんなこと考えてないのに…」なんて思っていたけれど、遡れば出会いようもないほどの昔の人も、そんなようなことを言っていたのです。
なあんだ、と思いました。なにか背負おうとは思っていなかったし、相変わらず私がいる地元は少子化とは無縁だけれど、なんだか体なり気持ちなりが軽くなったような気がしました。
何かの主義を救い、と豪語してしまうのは「言葉の意味的にあっているんだろうか?」という気がしますが、たぶん、私と同じようなどこかの誰かにとっても、この考え方だったり本だったりは、救いになりうるのではないかと思います。
繰り返しにはなりますが、私がもともと品田遊(ダ・ヴィンチ・恐山)さんの作品や記事を好きなことを差し引いても、たくさん読まれて欲しい一冊です。
おしまい。
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