読書|サキの忘れ物
サキの忘れ物/津村記久子
『サキの忘れ物』には、「サキの忘れ物」含め9編が入っている。
突然だが、私の本を読む時の癖で、読んでいる途中で巻末をめくるというのがある。文庫本であれば、あとがきや、解説より後ろのページで、本によっては作品名や著者名がずらずらっと並んでたりする。
そこら辺を何度もボーっと眺める癖がある。
「サキの忘れ物」には、タイトルにもなっているサキの本が出てくる。
自分には何にも夢中になれるものがない——。高校をやめて病院併設の喫茶店でアルバイト中の千春は、常連の女性が置き忘れた本を手にする。「サキ」という外国人の男性が書いた短篇集。これまでに一度も本を読み通したことがない千春だったが、その日からゆっくりと人生が動き始める。
「サキの忘れ物」を読んでいる間、私はサキに関して物語の一部としてただ認識していた。
そしていつもの癖が出ている時に、突然あることに気がついた。このサキとサキの短篇集が実在していることに。
巻末の「新潮文庫最新刊」に中村能三 訳の『サキ短編集』を見つけ時の私のテンションの上がり方は文字じゃ表せないほどで、この出来事でまず『サキの忘れ物』は私にとって思い出深い作品になった。
そして、どの物語もすごく好みだった。
深い部分では、どの話も楽観視できない何かがあるように思う。
だけど、読んでいて良い意味で暗くならない。爽やかな話ではないはずなのに、読後感がとても良い。不思議だ。
どの話もお気に入りだけど、私の一押しは「ペチュニアフォールを知る二十の名所」。
タイトルの通りペチュニアフォールの名所を旅行代理店の店員さんがただただ紹介してくれる話です。でも読み始めたら続きが気になって仕方なくなる。
とにかく読んでもらいたい。
そしてこの先何度も読み返しちゃうんだろうなって思える一冊。
またね