読書|月と六ペンス
月と六ペンス/サマセット・モーム(金原瑞人 訳)
この物語については本の裏表紙にある「ある天才画家の情熱の生涯を描き、正気と狂気が混在する人間の本質に迫る、歴史的大ベストセラーの新訳。」がとてもわかりやすいし、私もそれに惹かれて読み始めた。
ちなみにタイトルも好きで、新潮文庫の美しいブルーの表紙も決めてだった。
天才画家に情熱や狂気はセット品のようによく語られるが、そうわかっていても惹かれてしまうし、芸術(表現の分野)が結構好きな身としては、彼らはどんな景色が見えていたのだろうか?と、それが例え物語だったとしても、少しでも断片を拾い集めたくなる。つまり私の大好きなテーマの物語ということ!
そんな訳で私は結構ワクワクしながら読み始めた。
のだけど、私は読んでいる間この天才画家にずっっっと悩まされた。
彼は実在していたのか?
本の裏表紙にある紹介文や、開いてすぐにある著者の簡単な紹介を読んで、私はフィクションだと思って読み始めた。しかし、だんだんこの天才画家は私が知らないだけで実在していたのだろうか?史実を元にした小説だったのだろうか?と思い始め。
もっと言うと物語は語り手「わたし」によって展開されるので、実はノンフィクションなのか?とさえ思うようになった。
そう思った次には、いややっぱりフィクションだよな。と、私はこのループから最後まで抜け出せなかった。
ネットで調べる誘惑にもかられたが、読み終わってからにしようと耐えた。
その答えは結局ネットを開く前に、訳者あとがきで知れたのだけど。
フィクションなのかノンフィクションなのかもよくわからなくなるぐらい、リアルで狂気的だった。
ただただ「わたし」が出会った天才画家についての話が書かれているとも言える物語だが、登場人物がなんだか皆んな怖い。同時に魅力的とも言える。
読み終わった時、1本の映画を観たような気分になる。
エンドロールが流れる頃には何だかちょっと疲れてるし、ため息の様な深呼吸がしたくなるかも。具体的にどこが良かったとはすぐに言えないけど、すごくぞくぞくする面白さを噛み締めて、一息つくために入ったカフェで静かに座りながら「よかったな」って言葉がもれる。
そんな物語。
次に読む時は雨が長引く時がいい。
強い雨じゃなく、小雨が長々と続くような時が合う。
余談だが、私はこの本を母が眼を手術する時の付き添いの間に読んだ。
他の病院はどうかわからないけど、母が手術した病院では手術映像がみれた。
あまり得意じゃないながらにそっと見たら、想像以上に眼をグリっグリしてて、衝撃的だった。
普段、目を使うことばかりしているから、なかなか難しいかもしれないけど、極力目を大事にしようと思う👀
またね