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今日も私は本を読む
今日、今年百冊目の本を読んだ。
冊数がすべてではないけれど、百というのは自分の中でわかりやすく一つの目安である。
最近でこそ意識的に読書を心がけているけれど、しばらくほとんど本を読まない期間があった。小学生の頃が自分の中で読書家としてのピークだったような気がする。中学生の頃はまだ読んでいたけど、高校あたりから勉強に追われてだいぶ怪しくなった。大学も、時折がっと読む期間があったけれど、小学生の頃に比べれば足下にも及ばない。長続きもしなかった。一年に十冊いけばいいくらいなのがずっと続いていた。
もうひとつ大きな問題があって、小学校高学年の頃から物語を書くようになった私は、創作行為に没頭した。それはそれで悪いことではないのだけれど、本を読む際、文章そのものを吸収するというか、自分の創作という視界で本を読む傾向が強かった。物語や本の内容自体に入り込めなくなっていた。それは、少し寂しいことだった。だからこそ、本の純粋な楽しみから離れてしまったようにも思う。
それでも本屋はいつだって好きだし、前を通りがかったらとりあえず入った。漫画ばかり読んでいた。漫画が悪いというわけでは決してないし、たくさんの漫画に囲まれ救われ私に楽しさを教えてくれた。一方で、いわゆる活字のみの本を読みたいという思いはあるものの、なにか踏み切れなかった。
社会人になってから読書量が増えた。もともと文章に抵抗はないのだ。読みたい、から、読もう、に切り替わったのは、単純に自由に使えるお金が増えたからでもある。大学は忙しく息苦しい研究室だったこともあり、時間的にも精神的にも社会人になってからの方がずっと自由になった。
私の中で大きな目標があった。坂の上の雲を読むことだった。八巻に渡る大長編。日本史は高校までで勉強したけれど、時代小説はほとんど読まない。司馬遼太郎に対して漠然と憧れがあったけれど、なんだか恐れ多いというか、背筋を伸ばして気合いを入れて読まなければならないような感覚があり、たじろぐばかりだった。
それに、自分の読書筋は随分と衰えていて、長編をがっつりと読み切る自信はなかった。時間をかけて読んだとて、そのうちのどれだけを理解できるか、とにかく自信がなかった。気にしすぎ、と笑われるかもしれないけれど。
だから、まずたくさん読もうと思った。気になるものを読みきる。それを繰り返して、多くの面白いものに触れた。そのうちに、本の内容そのものに吸い込まれる読み方に自然となっていた。本というのは、面白い。崇高なものでなく、私の身近に常に存在する、小さな神様みたいなものだ。娯楽のひとつに過ぎない。でも、豊かな娯楽。たくさんのものを与えてくれるし、本を読んだら、現実の難しい問題を一度棚に上げて、没頭できる。
昨年、年百冊を目標にして、十一月頭にそれを達成した。今年は七月の終わり。ペースは去年とは段違いで、そして読んでいる本もバラエティに富んでいる。世界は少しずつ広がるもので、これからもどんどん広がっていくのだと思う。
そして、長く憧れでありつづけた坂の上の雲を今年読んだ。だれそうになったりもしたけれど、踏ん張って読み続けていたら、スイッチが入って一気に読み進めて、頭が熱に浮かされた。物語に迸る熱、面白さを確かに感じ取っていたように思う。そして私が本を読まない間にはまった艦これというゲームに出てくる艦がたくさん出てきて、私の坂の上の雲へのハードルを随分下げてくれた。なにもかも繋がるのだな、となんだか実感した読書だった。ゲームに関しては若干失礼な部分もありそうだけれど。
読破したときの達成感は、あらゆる意味で素晴らしいものだった。
私は自分が本の虫とも読書家ともいえない。そう胸を張って言えるほどに多くの本を知らない。
けれどただひとつ言えるのは、読書が好きだということで、それを自信をもって言えるようになったのはとても嬉しい。あまりに生活に馴染んできて、ずっと文を書いて絵を描いて本ばかり読んで生活できたらいいのにと、そういったことを考えている。自由になったはずなのに、少し息苦しい日々だ。どう生きたいのか、本を読みながら考えている。
去年の百冊目は「フィッシュストーリー」を再読した。
今年の百冊目は「生きるとは、自分の物語をつくること」。
そしてまた、次の一冊へ。
人生という図書館に自分だけの蔵書をいれていく旅は続く。
八月に入ろうとしている。良い出会いを期待しながら、今日も私は本を読む。
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