リアルコンビニ人間、ミラクリーナを読んで感激

丸の内魔法少女ミラクリーナというタイトルの短編集を読んでいる。同タイトルの作品を含め4編収録されているこの書の3本目「無性教室」を読み終えたところでこれを書いています。もうね、良すぎました。

その教室にいる間は性別が禁止される、という校則が定められた高校に通う子供たちの話。全員同じ短く切り揃えられた髪型、胸をつぶすため着用したトランスシャツ、同じ制服を身にまとい性別を隠して集団行動する彼ら。第二次性徴の佳境を迎えているのでちらほら本当の性別が見え隠れしている子もいる中で、ひときわ中性的でミステリアスな美しさをもつ「セナ」という人物と、それに惹かれて目が離せない、語り手の「ユート(女性)」を軸に物語は進んでいく。そんなユートとセナとそれをとりまく人間関係がひたすらに蠱惑的で脳がとろけた。性別を取っ払った抽象的な恋模様(性差をそっちのけたことでかえって濃縮された恋愛の原液を直飲みさせられてる感じかもしれない)に性的志向をかき混ぜられて、性癖がおかしくなっちゃった……
とくに後半のユートとセナのコミュニケーションは、脳内で(あーっ!脳が!脳が焼ける~!)のようなモノローグが展開され、柄にもなく腐女子みたいな顔をしながら読んでしまっていたかもしれない。

作品全体を通してミステリアスかつ儚げな、それでいて好きな人のシャツを剥いで滅茶苦茶にしたい的なエグい性欲や嫉妬。そのような醜さも同居しており、単刀直入にエロス漂う雰囲気で読んでいて目の奥がチカチカした。一方で、フェミニズム的な観念も漂っていた。でもそういった話特有のかしこまった感というか、角ばった、あの格式高い、当事者でない者からするとややとっつきにくい雰囲気を一切感じさせない読み応え。
非常に良い読書体験だったと胸を張って言える。

初めて読んだ小説が同作者の「コンビニ人間」で、むらたさやかの名がふと目に入り縁を感じて今作を手に取ったのだが、それをしてよかった。またコンビニ人間を読み返したり他作品やエッセイを読み漁ったりしたい。

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