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発達障害者と営業の仕事

一般企業の事務仕事を十数年勤め、そこから先、つい最近まで対人の仕事で十数回ほど転職を重ね、転々として来た。

それだけでもうお察しかとは思うが、私に対人の仕事は向いていない。

そんな単純なことを立証するのに、どれだけの労力と時間を費やしたのか。せめてこの経験談が、同じような境遇の誰かの役に立てばと願う。

まずはこの営業職が地獄の始まりではあるのだが、全体を通して見ると、対人職の中ではかなりマシだったのかも知れないと思う。ただ、一口に営業と言ってもその中身は様々なので、ある程度の条件が揃っていることが前提にはなる。私が思う条件は大きく3つ。

まず第一に、商材が自分の好きなものか、せめて興味のあるもの、必要だと思えるもの、納得出来るものであること。

本来、優秀とされる営業マンは、会社が売りたいものを売る。しかし、自分に興味がないもの、おすすめ出来ないものを売るというのは、想像以上に難易度が高い。根が真面目で嘘がつけないASDには無理がある。

そして第二に、客層。これは狙って選べるものではないのだが、割と商品の価格に比例しやすい。ブランドによってある程度の傾向などはある。

世の中には様々な人がいる。『お客様は神様』というが、それはあくまで売る側の心構えであり、売る側と買う側が対等であるから成立する。それなのに、何故か無条件に買う側が上だと勘違いしている人が多いのが日本だ。客層がそういう人ばかりだと、理不尽な扱いを受けやすい。

更に最後は、飛び込みの営業ではなく、ルート営業であること。

圧倒的大多数に邪険にされることをわかっていながら、数打ちゃ当たるの訪問をする飛び込みの営業は、想像するだけで具合が悪くなる。既に実績のある顧客を回るルート営業の方がハードルはまだ低い。

私が知り合いから紹介された会社は、恐らく誰もが社名を知っているであろう大企業で、本当にそんな会社に正社員で入れるのかと、半信半疑なぐらいだった。面接でもそのまま聞いてしまったのを覚えている。

でも、現実はそんなに甘くなかった。正社員入社は出来たものの、営業部門の給料体系は特殊で、営業成績が悪ければ基本給が下がる。実際に下がった同僚も居た。

その代わり中途採用でも濃密な研修がみっちりとあり、初年度はもれなく上司が同行してくれる。安心感があった。

営業というのは、大抵の場合は蓄積されたノウハウとマニュアルがあり、言われた事を素直に実行出来れば、最初はある程度成績が取れるようになっている。そのおかげで私は基本給が下がることもなかったのだと思う。

ただし、本格的に上に行こうと思ったら話は別だ。基本を踏まえた上で、より売る為の方法を模索していかねばならない。

そうなった段階で、他人の気持ちがわからない特性が邪魔をする。

例えば、四季折々にハガキを送る。営業手法の定番ではあるのだが、私は正直、ハガキなんて送られて来ても嬉しくもなんともない。ほぼ印象にも残らない。何でこんなもので人の気持ちが動くのか、全くわからないのだ。

一次が万事そんな調子。

そして、時間が守れない上に、極度の方向音痴であるということも足を引っ張った。初見で時間通りに辿り着けた事は一度もなく、毎度冷や汗をかきながら平謝りする日々。

結局、この営業の仕事は身体的な業務上の怪我で終焉を迎える。

大企業の正社員だったのに?と思う方も居るかも知れないが、詳細を話せば大抵が「それは辞めて正解」と返って来る。ただ、今回のテーマからは離れてしまうので、一言だけ。超絶ブラックだったのだ。

この次は、大企業から一転、フランチャイズのカルチャースクールでPC講師をすることになる。私の人生に脈絡はない。








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