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女性の賃金が上がらない理由

それはある日の夕方のこと。わたしは電車の中でふとスマホの記事に目をとめました。するとそこに、手取りわずか14万円という、都内メーカーに12年勤務する役職のあるアラフォー女性が「日本はおわってる」と呟いたと記されていたのです。見も知らぬ匿名の女性のつぶやき、それなのにその言葉がわたしに刺さったのです

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「知足」な国で生きる

この国では「足るを知る」、そんな生き方が好まれます。確かにそんな生き方は穏やかで安全で優しく美しいのですが、一方でそれは残酷で恐ろしいことでもあります

その美しい言葉は、時にわたしたちに忍び寄り、わたしたちに住みつき、わたしたちの口を塞ぎ、わたしたちを黙らせ、わたしたちを追い込んでいきます。だから、わたしは時に美しい言葉を警戒するのです

そして、その人に、人は気ままにこう言います

なぜ、そんなところに居つづけるの?
クラウドワークスだってあるでしょ?

けれど、ほんとうは誰もが知っているはずです。この国でアラフォー女性が転職することがどれほど難しいかということを。その人には辞める自由がないから呟かずにいられなかったはずです

女性の賃金は男性の3分の2程度※。その差は決して些末な差ではありません。正社員女性の賃金が上がらないことは幸せなことではないのです

参考 ※労働政策研究・研修機構(JILPT)

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ギリギリの賃金

それでも、女性の初任給※は、年々上がっています。たとえば…

1985年、四大卒女子の初任給は13.3万、高専短卒が11.7万、高卒が10.6万円
2019年、四大卒女子の初任給は20.7万、高専短卒は18.3万、高卒は16.4万円

なるほど、目で見る女性の初任給は確実に上昇しています

参考 ※労働政策研究・研修機構(JILPT)


けれど、物価だって上がっていくわけです

消費者指数※によれば、1985年~2019年までの総合指数は16.4。それはつまり、34年で消費者物価の水準が1.6倍になったということ。そして女性の初任給も1.6倍上昇していました。そう、女性の初任給は別に上がってなどいないのです。

さらに、2019年の女性の初任給を時給換算してみると(1日の所定労働時間7時間、年間245日勤務と想定して、月142時間)

四大卒女子の時給1,457円、高専短卒女子の時給1,288円、高卒女子の時給1,154円となります。ちなみに東京の2019年(10月1日 時点)の最低賃金は1,013円です

つまり、高卒女子の時給は最低賃金をかろうじてこえているということ。もちろん、初任給は最低賃金よりも高くなくてはいけないのですが、高卒女子の時給は、制定賃金とにらめっこ状態なのです

参考 ※総務省統計局ホームページ

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変わらない常識

「足るを知る」の社会はなかなか変わりません。たとえば給与の上がる形※は、もう何十年もかわっていません

もちろん、右肩上がりの時代はそろそろ終わりを告げようとしています。けれど、正社員で働く男性は、新卒からピークの50~54歳に向けて給与が上向きになるのです

けれど、女性の賃金の上昇のピークは1985年で30歳前半。2007年には30代後半です。さらに、女性の賃金は上向きになるどころか上昇カーブは目視できないほど。しかも一般職女性の賃金は早い段階で頭打ちとなり、そこから上がりません

そう、女性の賃金のピークは30歳代で、そこからまたゆるやかに下がっていくのです

参考 ※労働政策研究・研修機構(JILPT)

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社会保険料

それから、賃金が上がらない理由は他にもあります

たとえば、社会保障制度

日本の社会制度は、年金保険・医療保険・介護保険・雇用保険・労働者災害補償保険の5つからなりますが、その社会保険料の負担率※は変化します。たとえば、1988年に約7%だった保険料は、2017年には約12%まで増えています

グロスは増えたけど、手取りが減り続けてる

そんなことを感じたことはありませんか?

そう、グロスが少々増えても手取りは減り、今では給与から一割強の社会保険料が天引きされています。そして、この先きっとその比率は上がっていくはずです

参考:大和総研「平成の30年間、家計の税・社会保険料はどうかわってきたか」2018年5月21日

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まとめ

いかがでしょう?

わずか手取り14万円だと呟くその人は決して特別ではありません。この国では、サラリーマンにカウントされている女性はほんのわずかな総合職のみ。そして、これがマジョリティである補助職女性の現実です。しかも、たとえ役職がついていたとしても賃金の上がる枠には入れて貰えていないケースがあります

1985年から34年間に消費者物価の水準は1.6倍になり、1988年に約7%だった保険料は、2017年には約12%まで増えています。上がらない女性の賃金の周りでいろいろなものが上がっていきます。手取りが上がらないどころか、どんどん目減りしていっているのです

総合職ではない女性はもうずっとそんな働き方を強いられています。そんな人たちが女性のマジョリティです。そのことをきちんと考えなければ、一人で生きていく女性や家族を養う女性の暮らしは苦しくなる一方だと思っています

*写真はみんなのフォトギャラリー、こげちゃ丸さんからおかりしました。

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