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日本の非正規とは。

今日は、日本の非正規について考えてみたいのです。

以前、日本の最低賃金について、非正規で働く女性のインタビュー記事を書きました。その際、色々なご意見を頂きました。


その中で、LinkedInで繋がっているイギリス在住の女性から、

「その方にLinkedInで仕事を探すように伝えてみては」

という温かいコメントを頂きました。

けれど、非正規で働く日本の女性は、ビジネス専門のLinkedInで転職しようという気分になかなかなれない人が多いはずです。

そこで、ここから日本の非正規について考えてみたいと思うのです。

前回も書きましたが、フリーを望む一部の人を除き、日本では、非正規で働く人に「劣等感」を覚える人が多いはずです。これは、他の国では見られない現象です。

ほとんどの日本企業で、正社員は非正規よりも「格上」とみなされています。これは、非正規で働く人がレベルが低いというわけではなく、機会の問題です。

日本企業では、一度退社した人が、正規で再び採用されることは難しいはずです。現在は人手不足で、その形が崩れつつありますが、今でもこの格差は市場に残っています。

これには訳があります。

採用に障壁が作り出されているのです。

この障壁を作ると、企業にとっていいことがあるためです。つまり、

■非正規の仕事は、正規が替わりにできる
■正規の仕事は、非正規では務まらない

ということです。

ですから、こうした障壁が、非正規は、正規より劣っているという考え方を社会につくりだします。


以前、フルタイムで何十年も同じ大企業で働き続けている非正規の女性が、同性の正規社員に挨拶をしてもらえないという話しを書きましたが、これは特別なことではありません。派遣で働く人も「派遣さん」と呼ばれ、名前で呼んでもらえないことがしばしばあります。

労働市場で、正社員枠に参入する障壁を設けるだけで、正社員の価値が高まるのです。

この障壁を作ることで、企業には、効率性や競争などで得られる以上の、目に見えない利益が生み出されます。

同じ仕事をしていても、非正規労働者は、劣る人とみなされ、相対賃金を正規社員よりも低く設定しても、文句が出にくいのです。


こうした、正規社員を非正規社員へ置き換える企業は、わたしの実感ではプラザ合意のあった1980年代頃から急増しています。もちろん、これは、日本の正規雇用者の「雇用保障が強い」ため、企業の戦略としてとられています。

1980年代、経済成長が頭打ちになった企業が着手したのは、女性の非正規化でした。

当時、25歳過ぎた女性社員は会社に居づらくなりました。わたしもその一人でした。年齢で肩たたきがあったためです。ところが、25歳過ぎた女性には転職の機会が殆どなく、そこで誕生した「派遣」が、行き場を失った女性たちの受け皿になりました。

実際に、自社の女性社員の採用を控え、女性社員の大半を派遣社員へ入れ替えた大企業に、わたしも派遣社員として派遣されたことがありました。

そこからバブルが崩壊し、氷河期に入ると、高等教育を受けた女性でさえ、新卒で採用されることが難しくなりました。

こうして、大量の女性の非正規労働者が生まれますが、転職は、正社員は正社員へ、非正規は非正規へという循環が続きます。

ですから、働く機会のない多くの女性がキャリアが積めないまま年齢を重ねます。

実際、日本の労働市場では、

■2005年以降、女性の労働人口の「半数」が非正規
■男性の非正規は2005年には2割弱、2018年でも2割強

これほど多くの女性が、非正規で働くようになっています。

これでは、非正規の人たちは働けど働けど豊かになれず、働く喜びさえ知らないまま貧しくなっています。

ですので、わたしは一部のハイキャリアの女性の活躍を推し進めても、経済のジェンダーギャップは埋まらないと思っています。

スポーツでもそうですが、すそ野が育たなければ、エリートも湧き上がってはきません。なにしろ、ハイキャリアでない女性が、この国のマジョリティなのですから。


正規とほぼ同じ仕事をしていても、非正規のまま何十年も働き続ける人が多い社会です。

そうした女性に、その人のスキルに見合う転職の機会が増えることを願っています。


※最後までお読みいただきありがとうございました。


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