「自分探し」を探してみる(12)私の成り立ち・子供時代1
私の成り立ち・子供時代1 「本当の自分」がわかる心理学より(その1)
〇「内なる子供」とは?
子供時代がその後の性格形成に影響を及ぼす、という意見には誰もが賛成しそうだが、どのような形で影響するかに関しての決定的な説が未だ無いのも実情だだろう。とはいえ長い間、最も注目されてきて、今でも無視できないのがフロイトを中心とする精神分析の考え方だろう。
子供時代がどんな形で性格形成につながるのか? 子供時代のネガティブな影響をどう克服するか? こうした興味深いテーマをS・シュタールは主に精神分析の立場から「本当の自分がわかる心理学(大和書房)」の中で述べているので、それを紹介しながら考えてみる。
フロイトは心の仕組みを自我やエスなどの概念で示したが、筆者はそれを「大人の自分」「内なる子供」と名付け、次のような説明する。
私たちは、自分自身を理性的な「大人の自分(自我)」として振る舞っていると思いがちだが、それは間違いだ。子供時代にすり込まれた事柄は「内なる子供(エス)」として無意識の中に保存され、その後の性格や価値観に影響に及ぼす。つまり私たちの認識や感情、思考、行動は「内なる子供」に翻弄されがちだ、と。
ただしそれを修正することは可能である。その方法は先ず、自分の「内なる子供」と向き合い、自分の願望や心の傷を理解する。その上で、その傷を癒し修復することである。こうすることでより望ましい人間関係や快適な人生が期待できる、と主張をする。
〇「内なる子供」の見つけ方
その1 母による不快な体験
子供時代が性格形成に影響するという考えには賛成する人でも、次のような批判や疑問を持つだろう。その一つは、「内なる子供」の存在を、どうやったら確認できるのか、という疑問である。なにしろフロイト自身も無意識(エス、つまり「内なる子供」)を「意識化するのは非常に困難、または不可能」と述べているからだ。
もう一つは、仮にそれが確認できたとしても、今度はどうやったら「内なる子供」の傷を修復できるのかという問題が残る。
筆者がこの二つ疑問に答えていると思われる部分を概説してみよう。確認には「内なる子供」のネガティブな信念を探すことから始める方法がある。信念とは「男性とは○のようなものだ」「喧嘩すると△になる」といった断定的な表現になる見方や考え方だ。それはたとえば、母親(や家族)に対して不快感情を抱いた出来事や、自分が家族の中でどんな役割をしたかを思い出すと見つかりやすい、と述べている。
そこで、これに相当しそうな私自身の体験を探してみた。母は「近所の人がどんな目で見るか」という世間体をとても気にする人だった。このため私は近所の人に「みっともない」と言われそうな行為をしないように、よく注意され、それは私の子供心にしっかりと刺さった。
そのせいなのか、私自身、人の噂話の種になりそうな行為を避けてしまう傾向が今も強い。つまり「目立つことはすべきではない」という信念が私にはある、ということになるのだろう。
その2 感情に気づく、身体で感じる
ネガティブな信念は感情を引き起こす。この感情を早く意識できれば、感情をコントーロルすることもできる。感情は動悸や胸の重苦しさなどの身体感覚を伴うので、身体感覚に気づくと感情も意識できる、と述べている。
私なりに解説を加えよう。私の場合、たとえば派手な服を買おうとか、髪形を変えようと思ったとき、私の「目立つことはすべきではない」という信念が、私に警告を与えるのか、ある種の感情が湧き気持がとても揺れる。その感情を言葉で表現するのは簡単ではないが、恥ずかしいといった感情、あるいは誰かに馬鹿にされたときの感情に近い。
またこうしたときには普段とは違う身体感覚も確認できる。そのときの身体感覚を言葉で表現するのは難しいが、喉や胸の違和感や首から肩にかけての緊張感である。
筆者はこうした感情や身体感覚が生じたとき、ネガティブな信念が自分をコントロールしようとしていると気づくことができる、と述べている。自分の体験から、私はこの指摘に賛成したい。
長くなったので、この続き(対策や癒し方)は以下で述べる。
「自分探し」を探してみる(13)私の成り立ち・子供時代2
「本当の自分」がわかる心理学より(その2)