小難しいけど、美術が好き。
美術が好きです。
というと、なんか難しいことがわかるんだね、すごいね、的な印象を受けますが
正直自分も難しい感じはさっぱり分かりません。
おしゃれな方々がアートについてカタカナ使って語っていると
もうその絵面だけで思考停止してしまい
「何がおもろいねん」とガヤを入れたくなってしまいます。
でも、なぜ自分がそれでも美術に惹かれる部分があるというと
理由はものすごくシンプルで、
美術は「人間そのもの」
だからだと思います。
「その人そのもの」と言った方が近いかな。
どういうことかというと、
自分も絵を描いていた時期があるので少しは分かるのですが、
絵や作品というのは恐ろしいほどにその人が出ます。
例えば絵を描く以前の、キャンバスの布を張って釘を打つ時点で
きちんとした人は上手にピンと布を張って
釘を置く場所は等間隔に、そして曲がらないように静かに打つのです。
私のようにおおざっぱでとりあえず描ければいいんやと
無計画に釘をごんごん打ちまくる人間のキャンバスは
端っこに少しヨレが出て、
あとからなんとか調整しようと
釘の打つ位置もどこかに偏ったりしています。
(もちろん長年張っていると慣れて上手くはなってきますが)
静かなのか、雑なのか、手慣れている感じなのか。
その時点で、そのキャンバスのたたずまいというか
オーラは、その人のものになるのです。
また、絵や字にもその人となりが大きく現れます。これは、美術というものが、手作業で、しかもかなり自由度が高く、明確なルールすらないという性格があるからです。
例えば、アンリ・ルソーの絵。
ルソーは生涯にわたって絵を習ったことがなかったので、世界観がとても独特です。まず人物が巨大になりがち。描きたい風景などを先に描いてそのあと人物・動物などを描くので、全体のバランスもなんか変。遠近感もあまり考えられていません。
足を描くのが苦手だったようで、草とかで隠しがちでした。
(そんなアホな・・・でも確かに足って難しい)
「素朴派」と言われていますが、なんか本当に、素朴な人だったんじゃないかな、と思ったりします。
足にしろバランスにしろ、もし私なら、もうちょっと上手くなってからとか、もうちょっと上手く描けた絵を、みたいな風に見栄を張って考えるだろうと思うのですが、ルソーの絵には打算がなくてただ描きたいから、好きだから、という気持ちが伝わってきます。
世界観は独特でシュールなんですが、少し心がほっこりするような気持ちにもなります。
ちょっと変わり者で孤立しがちだけど、しゃべったらどこかかわいいおじさん、みたいな感じだったのかなとか想像します。
「絵はその人そのもの」と思うのはこういうところからです。
あと、こちらは書になりますが、
はじめて書で「その人」を感じたのが
福岡市美術館で見た
弘法大師の「金剛般若経開題残巻」です。メモしてなかったので、たぶん(たぶんかい)
載せられないのですが、印象に近いものが「文化遺産オンライン」さんにありました。↓
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/534639
最初に見たとき、人生で初めて「うわあ、字がうますぎる!誰!?」と思ったんです。
作者を見て、「弘法大師」とあり、びっくり。
「弘法大師って空海か。空海の時代の書って残ってるんだ(←そこ)」とも思いましたし、
「そうか・・・弘法にも筆の誤りってあるもんな・・・ことわざになるくらいってことはそりゃうまいよな・・・」となったのです。
そのときに実物を目にして思ったのは、
「なんて均整の取れた、落ち着いた字なんだ」
「流して書いてないのが分かる」
「書いている時、姿勢が良さそうだ。一人で描いたのかな。集中力が感じられる」
「字の一本一本に神経が通っているのが分かる」
「墨汁が最後まできれいで均等に流れている」
「字のバランスに偏りが全然ない。機械が書いているようだけどなんとなく人間味もある」
「最後のはらいまでずっと集中して丁寧に書いている」・・・
等々です。
不思議なことに、今ネットで弘法大師の他の書を見てもあまりそこまで思いません。
でも、実物を前にしたとき、それくらい感動しました。実物ってすごい。
なぜだかよくわからないけど、ものすごいパワーを感じるときがあります。
そういう時、いつも思います。
何百年も前に、この書(絵)の前に、確かに「作者」がいたんだ。
この絵の前に立っていた。私と同じ距離で、これを見つめていたかもしれない。
私が立っている場所は作者が立っていた場所かもしれない。
何百年も経ってはいるけど、場所も違うけど、同じものを私と作者は見ている。
本当にすごい。
今、同じ場所に立って、同じものを見つめている・・・
と思うと、ふとすぐ隣に作者が立っているような感覚になり、
静かに感動します。
使い古された言い方をすると、「近くに感じる」となるのでしょうか。
絵を見ると、たまにそういう感覚になる瞬間があります。
歴史上の偉人なんかではない、私と同じように一生懸命自分の時代を生きていた、ただ一人の人間を感じることができる瞬間があります。
この字を見るに、きっとめちゃくちゃ丁寧な人に違いない。バカ真面目だったかもしれない。話してみたらつまらんタイプか。けどきっと尊敬できるような人だっただろう。
そんな風に、「その人そのもの」を感じることができます。
だから自分は、小難しく思えるけど、美術が好きです。
最後に、特に好きなアーティストたちを、、、
また細々と美術についてつぶやいていきたいので、
良かったらまたのぞいてください。それでは~!