「死霊」埴谷雄高
「死霊」埴谷雄高著
人間の自己同一性の不可能性を書いた観念的小説。
簡単に言えば、過去と現在の自分とは異なる。また、明日の自分は今日の自分と異なる云々。
私は「私自身」と永遠に自己同一には至らぬ、という事を延々と観念的思考で書いている。
これは或る著名な人物が「人間の細胞は7年ごとに全て入れ替わる。故に7年前と今の自分は違う人物である」と、言っていた。
このような考察には「自我」が完全に抜け落ちている。
唯物論的世界観のみに依拠した思考であればこのように考えても何ら不思議ではない。
「思考」を実体無き抽象概念として捉え、各個人の所有物であるかのように捉えているからである。
要するに、脳が思考や感情等々を生じさせていると言った著名な人物の発言と同じである。
これでは永遠に「世界認識、自己認識」をすることは不可能である。
余程暇を持て余している人物が読めばいい著作と思われる。
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