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「殉教 」

「殉教 」

生も死も変容にすぎぬ。これを言い切る者は

この世では死者となる。

 
意識自体は不可知なる実体であり、一切は意識である。
 
変容する意識の意識化、これが我々の生である。
 
一切の現象は比喩にすぎぬ。
全てを相対化して惰眠を貪り眠る者よ。
電光に打たれよ。雷鳴に怯えよ。
さては無の恐怖を味わえ、底無しの絶望を、孤独を、絶する悲哀を・・・・・・。

愛を知らぬ者共よ、自虐を存分に楽しめ。
地獄などは序の口だ、無明などとは笑止!
狂気とは眠りの夢、夢の眠り、自己喪失の恐怖、

麻薬にすぎぬ。言葉に囚われし者、汝は言葉によって呪われる。

死ぬことすら出来ぬ。煉獄と無明と地獄空間をさまよい漂う。

眠りを欲しても無駄である。死はお前を拒絶する。

生を生きぬ生に死は振り向かぬ。全てに見放され、見捨てられやがて魔手に捕らえられて少しは生の意味を見いだすであろう。深遠と化したお前に誰も同情はせぬ。

むしろその闇と共に虚無を愛せ。

闇に蠢きのたうつ魂がお前を苦しめ、お前がお前でなくなるまで。その名状し難い苦悶を楽しめ。

世に見捨てられ、無視されることは何でもない。

自己が自己を見捨てるよりは。
此の世の生とはつかの間の浅い眠りにすぎぬ。

夢を夢見て目覚る者は希有である。
絶望や孤独とは泡にすぎぬ。

不可能の生を生きぬ者は自らを冒とくする行為である。
 
聖者は愚者となり、愚者が聖者となるとは些末で姑息な比喩にすぎない。

幼子になってもこの生を生きることは無く、真理に至ることも無い。言葉の戯れにすぎぬ。

そうだ、愛とは未だ夢にすぎぬ。幻想にすぎぬ。
 
あらゆる魂がそこかしこで無音で捩れ身悶えするのを君は見ないか、見ようとしないのか?
 
よろしい、ならば一瞬の終わり無き欲望を存分に味わい楽しめ、お前の魂に蛇共が群がり住処と化すまで。

神々は我らに此の世を託した。我らがいなければ神々も無力なのだ。

嘆くのは我々だけではない。
 
神々の嘆きはもっと深い・・・・・・。

 
聴くがいい!死者の私が語るのだ。

だが、生者の耳に届くまい。
 
生存に矛盾は無い、断じて無い。
・・・・語るべき言葉、現すべき言葉も、全ては空転する。

それでも語らねば、語り続けるのが私の生だからだ。
私は死の死者であろう。地獄の死者であろう。

死神であろう。此の世では・・・・。

 
我々は真実を語るものを磔にした。

これからもするだろう。これが我々の事実なのだ。
 
ああ、誰も彼もが尤もだ。
地獄も天国も涅槃も浄土も夢の又夢である。


だが、いつかは夢から醒めよう・・・・・・。
この見果てぬ微かなる夢に生きるこの私は常に死者でありたいと、それが私の無限の欲望なのである。
神も悪魔も恐れない無謀なこの生き方が・・・・・・。

私は永遠に呪われた者になろう。


愚者であるわれわれ

神を磔にした同胞と共に永遠に呪われた存在であることを・・・・・・。


二〇〇〇年一月九日


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