【虎に翼】グロテスクな「家族裁判」
虎に翼で、家族会議ならぬ家族裁判が行われた。見ていてとてもじゃないが気持ちいいものではなかった。箇条書きになるが、不快な点をあげてみたいと思う。
・寅子は、将来、優未が嫁ぎ先で同じような裁判にかけられても平気なのか?
・花江をこのような家族裁判にかけることが可能というならば、寅子は、他の家族をあの席に同じように座らせて裁くこともできるのか?特に、優未に同じことができるのか?
・花江を被告人席の位置に座らせている。
・花江をだまし討ちにして行った裁判であるため、花江は弁護人がいない状態で臨むことになった。
・家族とは最小単位の社会である。このだまし討ちによる家族裁判が許されるなら、あらゆる社会で裁判ごっこが許されてしまうのではないか。ある日会社に出社したら突然「あなたの裁判を始めます、ここに座ってください」と言われる社会を受け入れることになる。
・直明と恋人は小学校教員である。あのような家族裁判に疑問を持たず参加するようでは、自分の学級でも学級裁判をやりかねないのではないか。
・このような裁判ごっこにおいてさえも、寅子はやはり自分で判断を下すことから逃げている。(このドラマで寅子がまともに判決を下すシーンはほぼない。)
・判事の品格から考えて、このような裁判ごっこは許されることなのだろうか。被告人役をやらされている花江は嫌がっていたのに、無理やり参加させたことは許されることなのだろうか。
・優未を、傍聴人の位置に置くか、それとも裁判からまったく切り離した傍観者にするべきではなかったか。判事補の位置に座った優未にどのような無言の教育がなされたであろうか。母親が判事というだけで、その子である自分にも判事の資格があるような錯覚を覚えなかっただろうか。
このドラマでは、まだ、穂高先生がご健在の時期に家父長制について話し合うシーンがあった。その時に、穂高先生や寅子は、法律で人間を家に縛ることに反対した。代わりに、人間が自分の意志で互いを支え合う家庭を作ることを提案した。だから、このドラマにおいて、家庭=社会だというスタンスだと思っていた。それが、その家庭という社会の中で、最も発言権が強く社会的地位もある寅子が用意周到に姉嫁を騙し、このような裁判を始めたことに心底腹が立った。