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季節

8月の末、遠方からの帰り道。車の中。

私は空を見入っていた。
夏の雲と秋の雲、どっちもあるね〜と父と母に言って、スマホで写真に収める。
夏と秋、両方を抱えている空は、迫力満点だった。

そして今日。空気が少し澄んでいる気がした。
気温だけは夏なのだが、空気は引き締まり、秋に少し染まりつつあるようだ。

空の青も変わった。夏の重苦しい熱気から少し解放されたようにスキッとしている。


この夏から秋への移行期間が私は好きだ。
“移ろい”という言葉も。


季節はグラデーションのはずだったのに、最近は地球温暖化のせいか、カクンカクンと変わる気がしていた。

でもまだあった。私の大好きな移ろいゆく期間。

この夏は、どうだったかな。少し苦しかったかな。
秋が来たら、どんな自分に移ろうのか…
なんてわからない。

季節が変わって、私の心も生まれ変われたらいいのに。
この苦しさを丸っと今年の夏に置いていけたらなあ…


夏と秋の間に立ち、振り向いてみたり、前を向いてみたり。


そして、私の足元は。

ずっと足踏みをしている。
季節は移ろいゆくのに、私はひたすらその場で足踏みをし続ける。

歯痒い気持ち、悔しい気持ち、焦燥、怒り…

感情がぐるぐると私の身体を巡り、心を重たくしていった。


そんな今年の夏。そんな風にしか振り返ることができないのはなんだか悲しいな。


ふと、
空を見る。空気を吸う。季節が動いているのを感じた。

夏の風鈴の音に混じる秋の風。


私の心は確かに確かに癒された。


私には移ろいを愛せる心がまだあるらしい。


この夏は苦しかった。
でも、その苦しさのすぐそばには、寄り添ってくれる人たちの温かさで満ちていたではないか。
今、文章を綴りながらハッとする。

ないものばかり見ていた。
確かにある。ここにある。


ほんの少し、季節が動くみたいに、ほんの小さなきっかけで、心や思考もほんの少しだけクルッと動く瞬間がある。それは、ふと空を見上げるような些細なこと。

クルッと動くと見ている世界が少し変わる。
(心に隙間ができて、風が通るような感覚と共に)

少し変われば、気分も少し晴れる。その積み重ねを大切にしていきたいな。そうすれば、その一つ一つを大切にできれば、足踏みも前進していくかもしれない。

夏の終わり、秋の手前、そんなことをくるくると考える。


季節があってよかった。



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