さよならとありがとう
同じアパートに住んでいる娘と同級生で同じクラスの女の子(Mちゃん)が引っ越して行った。
Mちゃん家族は、娘が小学校に入学する直前に引っ越してきた。娘の幼稚園から同じ小学校に通う女の子がいなくて不安に思っていた我が家からすると救世主のような家族だった。
Mちゃん一家が引っ越すと聞いたときは、家を建てたのかと思った。でもそうではなく、元いた街に戻ることにしたとのだった。
引っ越しが近づくにつれ寂しくなってきた。挨拶を交わし合う程度の僕でさえこんなに寂しいのだから妻と娘は相当悲しかったはずだ。妻は、引っ越し前日に挨拶に来てくれたときに号泣してしまったと言っていた。
娘は、1年生の1学期くらいまではMちゃんと一緒に登校していたが、2学期頃からは一緒に行かなくなった。妻に聞いたところによるとMちゃんは明るくて友達も多く、みんなから声をかけられるが、娘は引っ込み思案で声をかけてくれるような友達もいないため、それがつらくて一緒に行くのをやめたんじゃないか、とのことだった。そんなことがあってもたまに放課後一緒に遊んでくれた。
引っ越しの日、お別れとお見送りをしようと会いに行くと、Mちゃんの友達(Sちゃん)もお別れに来ていた。お見送りをした後、Sちゃんとうちで遊ぶことになった。Mちゃんを交えて一緒に遊んだことは何回かあるみたいだが、2人で遊ぶのは初めてだった。
とりあえずどうしていいのかわからなかったので、戸棚の奥に隠してある僕の秘蔵のお菓子を出してみた。喜んでくれたのでホッとした。
その後、何をするのか見守っていると娘が「お絵描きしよう。パパの顔を描こう」と言い出したため、Sちゃんはよく知らんおっさんの顔を描くはめになった。
娘はサササッと書いて見せにきたが、Sちゃんは時間をかけて丁寧に書いてくれた。見せてもらうと実物よりだいぶ目がパッチリとしていた。なんだか、気を遣わせてしまって申し訳ないね。
その後、トランプをすることになり、「2人だとつまらないからパパも入って」と言われて3人でやった。ババ抜きをして、それから七並べをした。娘もSちゃんも七並べなのに自分の持ってるカードをベラベラ喋ってしまうので、さりげなく娘にアシストしていたらSちゃんが2連勝した。その次は大人気なさを存分に発揮し、止めるところはガッツリ止めて僕が勝利した。
そこでもう帰る時間になったため妻と娘がSちゃんを送って行った。そこでSちゃん発案で親同士がLINE交換をしたらしい。
Sちゃんとの縁まで繋いでもらって、Mちゃんには本当に最初から最後までお世話になりっぱなしだった。
娘が90回やろうと言うので、Sちゃん2回 パパ1回 ○○(娘)0回 のこり87回と書かれた紙がテーブルに置かれている。
また遊びにきた時のために秘蔵のお菓子をストックしておかなくちゃ。