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〈調査書〉さまざまな噂の真相と、受験先が最も重視している項目

前回は内申点を上げる方法について書いた。

上の記事でも触れたが、いままでに生徒や保護者から「どうすれば内申点を上げられますか?」という質問をされたとき、よく話を聞いてみると、内申点と調査書を混同していることが何度もあった。

そのため今回は内申点ではなく、その先にある調査書について書いていきたい。



まず、調査書とは何なのだろうか。

調査書は受験をするにあたって必ず受験先(大学)へ提出するものである。

第一の理由はその生徒が高校に在籍し、単位を取得したことの証明になるものが調査書であるからだ。

(専門学校もその対象だが、わかりやすくするためにも、今回は大学を対象として書いていく)

そして第二の理由として、その生徒の高校生活における取り組みを調査書で確認することになる。

ただ、一般選抜(一般入試)は当日の入試の点数で合否が決まるため、調査書の内容は合否に影響を及ぼさない。

そのため、試験が得意で、高校入学時から一般選抜のみ狙っている生徒であれば、学校生活に気の緩みが出て調査書の内容が芳しくなかったとしても、さほど気にしなくていいだろう。

一方、学校推薦型選抜(指定校推薦や公募制推薦)や総合型選抜(AO入試)を考えている生徒は、調査書の内容が重要となる。

そしてもうだいぶ前から、大学受験といえばこのどちらかの方法を選択する生徒が多いことは、時代の流れに沿った事実である。



次に、調査書には何が記載されているのだろうか。

わたしなりに内容をおおまかに分類すると、以下の3つから成り立っている。

*2021年度から調査書の内容は細分化されたが、2025年度の受験から再び簡素化されることになっている。この文章は現在の調査書について書いているが、いずれにしてもおおまかな分類に大差はない。



1.「基本情報」と「総合的な探求の時間の内容と評価」

前者は氏名や住所や入学年度や卒業(見込み)年度など基本情報に関する記載。

後者は毎週設けられている総合的な探求の時間に関する記載。なお、これは各学校により一律の文言を貼り付けるだけである。

どちらも各生徒の取り組み次第でどうにかできるものではないため、生徒たちは内容をあまり気に留めることがない。



2.「学習の記録と状況と概評」と「出欠の記録」

前者は成績そのものの数字、成績の平均(全科目の平均や各科目ごとの平均)、成績の段階の区分(全科目の平均をA〜E段階にそれぞれ区分したもの)など、全般的に成績に関する記載。

いわゆる内申点と呼ばれるものである。

(もし、大学によって資格や検定の取得が加点対象となる場合は、実質、それらも内申点に含まれることになる)

後者は出席と欠席の日数の記載。

どちらも各生徒の取り組みが反映されるものだが、成績も出欠状況も通知表を見ればわかるので、生徒自身も内容を把握できている。



3. 「特別活動と諸事項」と「備考」(所見)

前者は係、委員会、生徒会、学校行事、部活、資格、検定、表彰、留学、ボランティア活動などに関する記載。

後者は担任によるコメントなどの記載。

どちらも各生徒の取り組みが反映されるものでありながら、生徒にとって何が記載されるのかいまいち把握しづらいものである。



この“把握しづらい”という点から、生徒は内容が気になり、想像力を掻き立てられる。

そのため調査書にまつわるさまざまな噂が飛び交うことになるのは、この「特別活動と諸事項」と「備考」(所見)に関するものだと考えられる。

たとえば次のような噂を聞いたことはあるだろうか。

・部活を途中で辞めたらマイナス
・部活を3年間やり通したらプラス

・部活の部長はプラス
・全国大会出場など実績のある部活はプラス

・学級委員長はプラス
・係<委員会<生徒会の順でプラス
・生徒会長はプラス

・試験で赤点をとったらマイナス

・担任に好かれていたらプラス
・担任に嫌われていたらマイナス


などなど……
これらはほんの一例だ。
ほかにもさまざまな噂があるだろう。

そしてこれらの噂を聞いたことがあるだけでなく、現在進行形で信じ続けているというひとも、きっと多いのではないだろうか。



しかし、はっきりと書いてしまおう。

これらの噂はあてにならない。
受験先にとってほぼどうでもいい情報ばかりである。


それはいったいなぜなのか。



「特別活動と諸事項」から説明しよう。

たしかに、部活を3年間やり通したり、部長や学級委員長や生徒会長など責任のある役職についたりすることは、本人の人生にとって大きなプラスになるかもしれない。

しかし受験先からすると、全国にはおなじ立場の高校生が溢れているため、インパクトがあるわけではないのである。

仮に全国大会へ出場したとしても、はたまたボランティア活動や留学の経験などがあったとしても、47都道府県のそれぞれに、全国大会へ出場した高校生も、ボランティア活動や留学の経験がある高校生も、わんさかと溢れている。

そのため受験先にとって、その事実のみをひろっていちいちプラスにするほどのことではない。

また、おなじく部活を途中で辞めていたとしても本人なりのやむを得ない事情があるかもしれないし、やはり全国にはおなじ立場の高校生が溢れているため、いちいちマイナスにするほどのことではもちろんない。

なお、赤点やそのほかの細々とした注意などは学校内で処理する話であり、そもそも調査書に記載すらされてない。

したがって「特別活動と諸事項」に関する噂はどれもあてにならず、受験先にとってほぼどうでもいい情報ばかりなのである。



*部活の経歴で進路が決まる場合は大学側から直接そういった話を持ちかけてくるため、特別枠となる。全国大会などに出場していなくても、能力の高い生徒だと判断されれば、わりとよく特別枠の話は持ちかけられる。



じゃあ「備考」(所見)はどうなのか。

調査書は担任が作成するものであり、担任がコメントを書くとなると、担任に好かれているかどうかによってその内容が大きく変わってくるのではないかと思うかもしれない。

しかし、前提として調査書のコメントは必ず良いことのみ記載すると決まっている。

わたしはコメントを書くことが好きなので、それぞれの生徒に合ったコメントを書いているが、すべての担任がそうだというわけではない。

学校には調査書や要録のコメントに特化した虎の巻のようなものがあり、あらゆる生徒を想定したコメントが、何パターンも用意されている。

そのためコメントを書くことが苦手な担任は、虎の巻を参考にしながら書くのである。

わたしは調査書のコメントの添削をしたこともあるが、言葉巧みに書いている担任もいれば、虎の巻を引用して似たり寄ったりになっている担任もいるし、それ以前に誤字脱字が目立ったり文量が足りていなかったりする担任もいる。

調査書のコメントにしても、それから推薦文にしても、担任の文章力によって生徒の評価が変わることなどあるはずがない。

したがって「備考」(所見)に関する噂もあてにならず、受験先にとってほぼどうでもいい情報ばかりなのである。



さて、そうなると、受験先はいったい調査書のどこを重視しているのだろうか。

ここまでの流れから考えてみればなんとなくわかるかもしれない。

真っ先に浮かぶものは「学習の記録と状況と概評」すなわち内申点(成績)だろう。

内申点(成績)は当然重視されるものであり、特に受験資格の基準が設けられている場合(評定平均3.5以上など)は言わずもがなである。

ただ、内申点(成績)は各学校や各コースの偏差値などによって質が大きく異なるという性質がある。

たとえば偏差値70の集団でとるオール4と、偏差値35の集団でとるオール4は、おなじオール4でもおなじ質を伴っているとはいえないだろう。

そのため受験先が最も重視しているものは、実のところ「出欠の記録」だといわれている。

これはわりと有名な話である。
大学の入試担当者や教授と話をした際も、やはり出欠状況に注目すると言っていた。

大学へ入学しても来なければ意味がない。
すべての活動は本人が存在しなければ成り立たない。

だからこそ、学校生活における土台であり、尚且つ客観的情報でもある「出欠の記録」が重視されるというわけだ。



内申点(成績)を上げるためにも、調査書の内容を良くするためにも、欠席をしないことは本当に大切である。



一般選抜(一般入試)ではなく、学校推薦型選抜(指定校推薦や公募制推薦)や総合型選抜(AO入試)を考えている生徒は、調査書が重要だ。

・内申点(成績)を上げる
・欠席をしない


調査書にまつわる諸々の噂に振り回されることなく、単純明快なこの2点を、しっかり心がけるといいだろう。

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