運動部でキラキラと活躍する生徒が持つ〈裏の顔〉とは?
汗を流して日々の練習に励み、顧問に対して「はい!」「ありがとうございました!」とさわやかに大きな声で返事をする運動部の生徒たち。
努力と団結力と青春を寄せ集めたようなその姿は、キラキラと輝いて見えるかもしれない。
でもそのキラキラはハリボテで、実は裏の顔がありそうだと思う人もいるだろう。
わたしも教員になる前はそう思っていた。
自分自身が運動部に所属してこなかったため、運動部でキラキラと活躍する子たちの実態をあまり知らなかった。
そのため彼らは裏表が激しくて、目上の者に対して表面上はペコペコしながらも腹の中で舐めているのではないかと思っていた。
しかしそれから時を経て高校の教員になり、運動部の子たちと密に接する機会を得て、実態を知ることができた。
「実態は予想と異なっていた」
と書けたらおもしろいかもしれないが、現実はそうもいかなかった。
彼らはたしかに裏表がある。
たとえば顧問を見かけて「おはようございます!」と元気よく頭を下げたかと思えば、次の瞬間には「あぶねー」「なんであいつ急にいるんだよ」と囁き合う。
時には顧問を呼び捨てにしたり、もしくは変なあだ名をつけたり、物真似をしたり、陰口を叩いたりもする。
顧問の前ではあんなにペコペコしているのに、やっぱり腹の中では舐めているのか。
裏表を器用に使い分けている。
なんて腹黒いんだ。
と思うかもしれないが、すこし考えてみれば、ごく当たり前のことだと気づくだろう。
そもそも教師なんてそんなものじゃないか。
別に運動部の顧問に限らず、高校生ならば教師に対して、ある程度はペコペコしつつ、影で呼び捨てにしたりあだ名をつけたり物真似をしたり陰口を叩いたりするだろう。
多くの人たちが経験済みだと思う。
もちろんわたしも高校生のころはおなじことをしていたし、だからこそ、自身の教員像に理想を抱かず、そんなものだとよく心得ている。
運動部の部員だと使い分けの差は激しいかもしれないが、やっていること自体は多くの高校生と変わらない。
ただ、それだけのことである。
さらにもうひとつ付け加えておく。
実は、裏表があって器用で生意気な生徒ほど、運動部で優秀な成績を収めがちなのである。
仮に顧問に対して表面的にも内面的にもペコペコしている素直な性格の持ち主だったら、運動部のエースにはなれないかもしれない。
こんなエピソードもある。
知り合いの体育科の教員は姉妹を育てているのだが、まだ幼児期の段階から「次女は生意気で親に対してすぐに口ごたえをするから、スポーツをするならいちばん見込みがある」と思っていたらしい。
案の定、その子は中学校のバスケットボール部で部長となり、華々しい活躍を遂げていた。
また、わたしは偏差値の幅が広い高校に勤めたこともあるのだが、特進コースの生徒ほど、運動部で優秀な成績を収める割合が多かった。
特にサッカー部のレギュラーを務める生徒は、ほぼ全員勉強が得意で、尚且つとても生意気だった。
つまり運動部で活躍するためには、知能も、裏表を使い分ける器用さも、そして生意気で勝ち気な性格も、それぞれ必要だということだ。
スポーツは頭を使うものなので、これもごく当たり前のことだといえよう。
そのため、わたしはキラキラしている運動部の生徒が持つ裏の顔を見たときに、落ち込むのではなく、やっぱりそうだよね、だからこそ活躍しているんだよね、と納得するようになったのである。
野球部の実態についてはこちらに書いた。
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