どんな道に進んでも大丈夫
講師の仕事に就いてから、よく思い出す言葉がある。
時は高校の卒業式までさかのぼる。
国公立の前期試験を終えて、結果を待っている状態の生徒がほとんどであった。つまり大半の生徒が進路が決まっていない中、卒業する。
私もそのひとりだった。
式を終えて教室に戻り、最後に担任からの話。
「これから合格発表でみんなどうなるか分からないけど、たとえもし落ちたとしても、君たちなら大丈夫だ」
高校では常に競争だった。中間期末の定期テスト、国英数の一斉テスト、長期休暇明けの課題テスト、それに模試。すべてに順位がつく。
1,2年のころはどうにかやっていけたけど、3年生になってさらにテストが増えたらもうついていけなかった。
でもそれもすべては大学現役合格のため。
京大卒という担任は、言動は穏やかだけど、そんなカリキュラムを当然ととらえているように私には映っていた。
だから意外な言葉にうるっときつつも、心の中で静かに悪態をついた。
落ちても大丈夫なんて。そんなわけないでしょ。
だけど今、子どもたちと関わっていると、あのときの担任の言葉がことあるごとに思い出される。
そして同じことを思う。
疑問をまっすぐ投げかけてきたり、間違いを恐れずに自分の考えを述べたり、「また忘れてしまった」と言って悔しそうに覚え直したり、家で練習してきたなという跡が見られたり、「できた!」と嬉しそうにしたり。
そんな姿を見るたび私も確信する。
みんな、いろんな可能性を秘めている。
みんななら、どんな道に進んでも大丈夫。