鬼滅の刃に見る4つの大切な要素


#マンガ感想文

娘へ夜の読み聞かせに鬼滅の刃を音読しておりました。                        声優声真似、慢心の効果音、美しき大正時代の言葉遣いは音読に適しており、高揚感と共に大きな感動を持って読み終わったわけですが、面白かった、感動した、だけで終わらせたくないような、、、なぜこの物語はすごいのか、もっと自分の中で消化したいような気持が残りました。

なので、ここでは鬼滅の刃がなぜこんなにすごいのかを説明する、私がこれだ、と思った4つの要素をまとめたいと思います。

鬼滅の刃が含んでいる大切な4つの要素

1.組織論                  

2.NVC(共感的コミュニケーション)     

3.人間世界に存在する負の側面         

4.”呼吸”

では、一つ目の要素から見ていきたいと思います。

1.組織論

物語が後半に差し掛かるにつれて、見えてくる鬼と鬼滅隊の組織構造。その対照的でありながらそれぞれに回っている組織の目的や役割や構造になかなか感心してしまいます。

<鬼の組織>

鬼の組織は鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)が代表の個人成果主義の組織です。組織の目的は、鬼舞辻無惨が最強となり、生き続けること。

この組織は無惨の絶対的リーダーシップのもと恐怖による統制と、強い鬼として認められたいというモチベーションによってそれぞれの鬼がパフォーマンスを上げています。

鬼は基本的に鬼同士つるまず、個人主義ではありますが、無惨に血を分け与えられいます。それゆえにそれぞれの中に流れている血を通じ、個人の鬼が体験して学んだことの情報共有が徹底されており、そこから瞬時に学んで次までに能力を適応させておくことを繰り返しています。個人主義でありながら徹底した情報共有と改善の仕組みが、なかなか面白い組織だな、と思いました。

ちなみに強い鬼とは、会社組織でいうボードメンバーのような上弦の鬼(6体)と、専務レベルの役員で構成されているような下弦の鬼(6体)がおり、いつかは上弦入り!というのが鬼のモチベーションです。

あっ、もう一つありました。モチベーション。鬼は何らかの理由で人間に恨みを持っています。自分を踏み台にした人間、助けてくれなかった人間、愚かな人間を苦しめることに、一種の喜びを感じており、大きな原動力にもなってます。

<鬼滅隊の組織>

鬼滅隊は産屋敷尚哉が代表の進化型組織です。

組織の目的は、鬼舞辻無惨を倒し世の中から鬼を滅すること!

組織員の階層や昇格の基準も明確になっており、個人個人が鍛錬して昇格していく必要はありますが、必要に応じたチーム制や、教育制度などがしっかりしています。

父親的なリーダーシップで、個々人の人間的、精神的、技術的な成長を支えることで組織として成長することを根底においたマネジメントです。

情報共有の仕組みは鬼の組織ほど瞬時で徹底されているわけではなく、それぞれの隊員に割り振られているカラスが、必要な情報を伝えます。この仕組みは鬼組織に比べて、スピードの面でも徹底の面でも少し弱いですね。ただ最後の戦いではカラス同士の情報共有が格段にパワーアップして、鬼に立ちむかいます。情報の伝達と情報の処理能力は、いつの時代でも重要な要素ですね。

ここにもボードメンバー的な存在がおり、それが柱です。柱は技術的にも人間的にも気力的にも大きな人々がついてます(一見、最初は性格異常者の集まりに見えましたが、みんな強くて、人格者)

鬼と同様に鬼滅隊員にも大きなモチベーションがあります。鬼に大切な人を殺された怒りと、自分と同じ思いをする人をもうこれ以上作らないこと。

個人の目標と組織の目標が同じ方向を向いている!これは組織にとってとても強い状態ですよね!

鬼滅の刃の組織論がすごい!って思った時、私が気づいた大発見!とか思っちゃいましたが、みんな思うことは同じなようで、コンサルタントとか医学教授とかいろいろ偉い人が、鬼滅の刃の組織論についていろんな記事を書いていました、、、

まー、そういう層の人も惹きつけている、ということなんですねー。                     子どものストーリーであるはずが、練られた組織論がそこにあることが、多くの層を惹きつける要素の1つかな、と思います。


2.NVC(共感的コミュニケーション)

鬼滅の刃を通じて心地よくも感心するもの。それは主人公、炭治郎のNVC力の高さではないでしょうか。

NVC=Non Violent Communication                              非暴力的コミュニケーション、                                  共感的コミュニケーションのことです。

通常人は、気が付かないうちに暴力的なコミュニケーションをしています。それが意思疎通の難しさや大切な人と分かり合えないもどかしさ、喧嘩や離婚や、あー嫌い、ってネガティブな感情に結び付いている。

例えば、子どもにたいして「あなたはいっつも物は出しっぱなし、服は脱ぎっぱなし、ママがいくら片付いても片付かない。本当だらしないんだから。嫌になっちゃう」これは暴力的です。

「玄関に学校のカバンがおいてあるよ、服も朝脱いだまま床に落ちている。ママは朝からずっとお掃除をしているのだけどこういうことが続くといつまでも家の中がすっきりしないの。ママは家をすっきりさせたいのにこれだとすっきりしなくてとても辛い。あなたが物をあるべき場所に戻してくれたら、私の辛さは和らぐから、やってくれない?」

これは非暴力的です。

相手が行ったことを事実として伝え、自分の状況も事実として伝え、相手への非難ではなく自分が辛いという気持ちと原因を伝え、その辛さは相手がこうしてくれることで和らぐからやってほしい。という伝え方をすることで分かり合える、というセオリーです。

一時期これ一生懸命実践してみて、逆に頭がおかしくなりそうでしたけど。笑

それはさておき、炭治郎はNVCの達人。お兄さんを鬼にさらわれた幼い兄弟に対し、まずは状況を認識してあげる。

ー二人だけでよくここまで来てすごいね。

そしてその心情を察してねぎらう。

ー怖かっただろうに。よく頑張った

自分が何をしなきゃいけないか伝える

ー自分はお兄さんを探すため鬼の家に入るよ

そのために相手に何をしてほしいか伝える

ー怖いと思うけど、ここで二人で待っていて

炭治郎は最初から最後までこの調子です。それが回りの人にも影響し、相手を癒し、結果相手からもこれが引き出せるような、そんな形で物語が進みます。心がすさんでいる人も炭治郎に心を開きます。もしくはそこから真の能力が引き出されたりします。

現代人は相手の発する言葉にある微妙な非難のニュアンス、羨望のニュアンス、怒りのニュアンス、嫌味のニュアンスなんかを嗅ぎ取って嫌な思いをしており、さらには自分が何をしたいのかもわからずに、相手へ要望を伝え、自分でもわからないことが相手にも伝わるはずなく、自分の要望は結局伝わらないまま。わかってもらえない、やってもらえない、といらだったり孤独になっている人が多いと思うのです。

なので、鬼滅の刃の炭治郎のこのようなコミュニケーションを見ているうちに、それがそれが自分に向けられているような感覚になり、多分癒されるのだと思います。

これが鬼滅の刃が人の心をつかむ2つ目の要素ではないでしょうか。


3.人間世界に存在する負の側面

鬼という実在しない存在と戦う鬼滅の刃は本当は何と戦っているのか?これだけ練り上げている作者だから、きっと何かのメタファーがあるんじゃないだろうか、と思うわけです。

鬼とは、人間世界に存在する負の側面を体現している存在なのではないかなーと思うのです。

何体かの鬼については、鬼に落ちた背景が語られています。                        治らない病気の末だったり、世間に認められず踏みつけられ過去だったり、身を滅ぼすほどの妬みの感情だったり、貧しさだったり、大切な人を無情にも殺された過去だったり、人間への根本的な蔑みや、絶望感だったり。

そんな負の側面、と言うか生きていく上で人間に起こりうる辛いこと、そして人間にしか出せない残酷さが鬼を作った。

鬼滅隊はそんな残酷な鬼による被害をこれ以上広げないために戦っているのです。でも負の側面がなければ明るい面もないわけで、負の側面を物理的に潰すのではなく、対峙し対処する方法を見出すのが本当の戦いなのかもしれません。

世の中に蔓延する不安や、恐怖、そして実際に今辛い側面にいる人も世の中たくさんいるわけで、仲間と協力し、自分を鍛錬し、鬼組織に立ち向かう様に、希望を見出せる。それが3つ目の要素でしょう!


4. “呼吸”

鬼との戦いで一番重要なこと。それが呼吸。水の呼吸、日の呼吸、火の呼吸、雷の呼吸など様々な呼吸の型が存在して、鬼との戦いで使われています。

皆さん、呼吸してますか?

緊張すると呼吸がうまくできなくなります。ストレスの多い状態では呼吸が浅く、そう言う状態が続くと睡眠にも影響します。ヨガや瞑想やマインドフルネスが現代人に人気な理由の一つに呼吸を意識させてくれるってありそうじゃないですか?

息しなきゃ死ぬんだから呼吸してるに決まってんじゃん!って思うかもしれないけど、意外にみんなちゃんとは息をしていないと思います。

鬼と言う不安の塊に対峙する時には、まずは呼吸を意識します。呼吸がきちんと出来れば自分の力が発揮されるから。そんなメッセージを最初から最後まで送っているのが鬼滅の刃。

鬼滅の刃を読んでるとキャラクターと一緒に息を吸い込んでる自分がいます。呼吸に限らず、匂い(炭治郎の能力)や音(善逸の能力)や肌の感覚(伊之助の能力)を研ぎ澄まし、透明の世界を見ようとする。そう言う感覚を現代人は今まで以上に研ぎ澄ましたいと潜在的に思っているのだと思います。少なくても私は最近ずっとそう思っている。

だから、五感的なものをもっと大事にしよう。呼吸をちゃんとしよう!と言うメッセージが、いろんな人に刺さったんじゃないかなー。

いかがでしたでしょうか?

鬼滅の刃がすごい理由、人気の理由を私なりに整理してみました。

はい、私はとてもスッキリしましたー!笑

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